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2010年3月30日火曜日

RMメモ

・ガイドラインは個々の臨床家の裁量権を規制するものではないが、水準以下の技術による違反・逸脱は医療過誤とみなされる
・結果回避義務(予見できた損害を回避する行為義務)を怠らない
・医療過誤調査を行う際には「素直な心で」十分な聴聞をする
・裁判所に期待しない
・民主導、ボトムアップ方式でソフトローを作成すべき現場の声を聴くこと

人を助ける行為はその行為に至るまでの考えがどうあれ、その行為自体が価値をもつ

2010年3月29日月曜日

Wuthering HeightsのSalt

風邪がようやく峠を越えてきたような気がする。気合いを入れて朝4時半に起きたものの、担当だった朝一の予定手術は延期になってしまった・・・。
***
2010年発表。デンマーク。
guitar, bass, keyboards, mandolinを演奏する(と書いてあるが、メインはギター)Erik Ravn率いるバンドの5作目。気がつけばこの4日間、このアルバムばかり聴いている。
漆黒の海に全壊寸前の帆船が沈みがちに横たわる美麗なアートワークの中に包まれている楽曲群は、情熱的な北欧民族音楽(アイリッシュ&ケルティックと表現するのが正しいのか?)が疾走するメロディにのせ、Nils Patrik Johanssonが変幻自在に熱唱するというWuthering Heightsにはお馴染みの世界。彼がvocalをつとめるようになった3,4作目から基本的な路線は変更されておらず、本作でもメタルでしか描き得ない大仰な世界が広がっている。今作の特徴として感じたのは”陽気なバイキング色”が強まっているところ。KolpiklaaniやFinntrollといったバンドの音楽性にも若干通ずるものがあるような印象である。
典型的なWuthering Heights節のスピードメタル曲#1~#2に始まり、アコーディオンがツボをついて乱舞し大海原に向かって船出せんかの勢いがある気持ちいい名曲#3、穏やかな前半から後半にギターソロが疾走しまくるコーラス部が印象的なこれまた名曲な#4。比較的スローな#5, 6を挟んで、スローと思いきや2:50~あたりから徐々に疾走しまくる#7と牧歌的な佳曲#8を挟んで、バンド史上一番長い16分38秒の長尺#9は一大叙事詩のような作品に仕上がっている。バンドのプログレッシブメタルサイドを前面に押し出してみたのかもしれないが、16分長と言う時間を感じさせない曲調になっている。そんな中でも長い暗闇から抜けるかのように9:07~10:09で一気にメロディアスになるところはこの曲の、いやアルバム全体を通してのハイライト。ということで全9曲それぞれに利き所満載。非常に暑苦しくも繊細にも歌い上げる稀代のvocalistがいればこその名盤。
日本版ボーナストラックはUriah Heepの10作目"Firefly"から"Sympathey"という叙情的な旋律を持った曲。原曲を聴きたくなる魅力に溢れたアレンジ。

最近は欲しいと思ったアルバムがあってもしばらく買わずに粘ることが多い。中には数年来買おうか未だに迷っているものさえある。そんな中にあってこのWuthering Heightsというバンドの作り出す音楽は、新譜が出たら聴かずにいられないほどの特別な魅力を放ち続けている。

2010年3月28日日曜日

膠質液に関するあれこれ

「白金台」という私用ではまず降りることがない駅に降り立ったのが8時。地下鉄のホームから地上に出て周りを見て早くも後悔。まわりに喫茶店が一件もないのである。どこまで見渡してもない。ない、ない。10分ほど目当てのホテルを中心にうろついてみたが、ない。私はどこかに講習会に行く際には30-60分早めに着いて、のんびりと時間を使うのを習慣にしているのだが、風邪がまだ完治していなかったからなのか計画が非常に甘かった。仕方ないので早めに会場のホテルに行く。そこでまた後悔。closedの会だからなのか学会などでよく見かける重鎮先生が大勢いるのだ。私のような小童同然の者が参加していい会なのか・・・。

まぁそんな心配、緊張、後悔の念は講演が始まると忘れ去ることができ、そしてHESに関していかにこの島国が世界から取り残されているかを実感するに余りある会であった。

偶然以前に抄読会で担当して読んだ
Anesthesiology 2009;111:187-202 Hydroxyethyl starches: Different Products - Different Effects
の著者Westphal先生の講演に始まり、内外の著名な先生方の講演を聞くことができ、とても実りある一日だった。

<後で思い出すための以下メモ書き>
HESの性質を規定する4つの因子。特に置換度が重要。
例) 6% HES130/0.4/9 という製剤があったとすると
1.6%・・・溶液の濃度(concentration)
2.130・・・分子量(MW:molecular weight, 単位はkDa)
大きい程、毛細血管から漏出しにくく、循環血液量を長時間維持できる。
3.0.4・・・置換度(MS:molar substitution)
ヒドロキシエチル基に置換しているグルコピラノース環の割合。
高いほど分解が遅い。
4.9・・・C2/C6比
グルコピラノース環の6つの炭素のうち、2位にヒドロキシエチル基がついているものと6位についているものの割合。高いほどα-アミラーゼによる分解が遅く、粘度が高い。高い程血管内にとどまりやすい

・ Let’s stop talking about “wet” and ”dry”. ― 患者個々人にあった輸液のゴールを設定すべき。
・VISEP study(Brunkhorst FM, et al. : Intensive insulin therapy and pentastarch resuscitation in severe sepsis. New Eng J Med 2008; 358:125–39)は10%HES 200/0.5 VS 晶質液 。HES群で死亡率上昇しているという結果だったが、その患者の38%が20ml/kg/dayを超えたHESを投与されていたという問題点があった。というように論文で”どのようなHESをどのように使用しているか”をきちんと理解したうえで臨床に還元したほうがよい。この論文を根拠として、現在日本で使われている6% HES 70/0.55/4を重症敗血症には使えない/使わないという理由にはならない(高分子HESをダイヤル式電話に、中分子低置換度HESを携帯電話に例えていたスライドが印象的であった。)
・Hespanderが第8因子、vWF, vWFAgに与える影響は少ない
・1mOsm/kgH2O = 19.3mmHg
・晶質浸透圧 5600mmHg:細胞膜、脳血管関門
・膠質浸透圧 25mmHg :内皮細胞間隙
・毛細血管灌流は膠質液で上昇
・膠質浸透圧は膠質液で上昇
・ 複数の演者が取り上げていたのが、以前抄読会でO先生が発表していたAnesthesilogy 2009; 110:496-504の「動物実験に生食とHESを輸液した場合に大腸の酸素化がHES群でよくなった」という論文だった。
・輸液の指標としてはstatic parameters(静的指標:HR. MAP, CVP, PCWP)よりdynamic parameters(動的指標:心拍出量など)を利用したほうがよいのでは。別の言い方でpressure orientedではなくflow orientedで。またはモニターの血圧からフローを類推するような管理を。
・コロイドでpreloadしておくとCOが上昇
・アルブミン
・頭部外傷患者には生食治療群よりアルブミン治療群で予後増悪(NEJM)  
注:アルブミンも5%と20%以上のものとがあるから、目の前の患者への実践には論文を読んで判断したほうがよかろう。
・半減期は20-24日程度
・手術後は血管外に出て行くのが正常の反応。そして低アルブミン血症が起こる。そこに外からアルブミン製剤を入れると浮腫を起こしやすくなる。
・20%以上の高張アルブミンを過剰に入れると腎障害が発生
・論文はread between the line. よく読むこと。
・メタアナリシスは注意深く見る。特に結果に大きな影響を与えるている論文がどのようなdesignでやっているか。患者は、輸液は、その量は???

・用量の問題
・日本は恐らく米国で多く使われている大分子製剤へのFDA勧告が20ml/kgだったから、それに習って今の量に設定されているようだが、置換度0.5の第2世代HESならば世界的には2000ml程度の利用が普通。
・ラクテック注の添付文書にも(用量に関しては)同じようなこと書いてある。ならばなぜHESだけ1000mlきっかりしか入れない?
・厚労省は2005年に20ml/kgを超えた量も投与も状況によっては考慮、と変更している。
・麻酔科学会でも2000-3000mlの投与を許容
(確かに麻酔科学会の「指針・ガイドライン」→「輸液・電解質液」のHESの項目を見るとそのように記載してある)

その他
・加温した輸液ボトルを患者の手などに当てたままにして低温熱傷をつくらないように注意。米国では訴訟の対象になっている。
・出血時には大量HESも許容される?大出血時の大量HES療法は術後AKI(Acute Kidney Injury)のリスク因子にはならない。術前腎機能障害だけがリスク?

全体を通しては、Volume therapyに関する7つの神話として講演したBoldt先生のセクションで「Do not treat myths, treat patients using new data.」と言っていたのが印象的であった。

出血時にはHESを入れてもどうせでていくのだから、代謝が早い6% HES 70/0.55/4なら組織蓄積もそれほど気にすることなく輸液できる感じはある。私は常識と慣習と周りの目に縛られたまま、真に患者のためにならない実践を繰り返しているのかもしれない。現在第三世代HES(Voluven; 6% HES 130/0.4/9)が治験中だとのこと。ヨーロッパのように術中に50ml/kg使用できるようになれば、術中のアルブミン使用量や輸血使用量は確実に減少するだろう。それに伴って医療費も減少するだろう。だが実践に当たっては、HESによる凝固異常や腎機能障害を必要以上に危惧する外科医や術後管理に携わる集中治療医のHESの理解が不可欠であろう。

***
・CVPは輸液反応性の指標にはならない (Does central venous pressure predict fluid responsiveness? : A systematic review of the literature and the table of seven mares. Chest 2008; 134: 172-8)

2010年3月27日土曜日

精神科医が書いた2冊

①大人のための文章法―和田秀樹
・自分の中の知識をすべてはき出すように文章にしても、そんなものはだれも読んでくれない。知識というのは情報とイコールではない。情報の価値は見せ方によって決まる。(58頁)
・誰かが読む文章を書くという前提で考えると、相手との関係をこの共感をベースにいかに成熟したものにできるかというのは重要な問題になる。(72頁)
・考える力も確かに大切だが、それだけで勝負できるほど世間は甘くない。独創的な発想など人に勝るものがなければ何かで補わなければならない。それには知識を豊富に身につけることが一番。第一、十分な知識がなければ独創的な発想など浮かんでくるものではない。(181頁)
・インターネットから得られるのは知識ではなく単なる情報にすぎない。そのものに対して考察をおこない、理解して頭の中に入れることができたときにはじめて、それを自在に使いこなすことのできる知識にすることができる。(187頁)

要するによく考えろ、ということか。
***
②文章は写経のように書くのがいい―香山リカ
・書く目的はまず自分にわからせよう、ということ。

もう読むことはないだろう。
そんなことを読了後にまず考えた。といっても駄本と言う意味でいっているのではない。著者が本書内で「論文は型にはめて書くから“それっぽい論文”を書くのは全くむずかしくはない」と言っているその“論文”を書くのに四苦八苦しているわたしがそんなおこがましいことを言う気は毛頭ない。語り口がとても軽快で、非常に読みやすく、すっと心に入ってくる。書くこと自体にそんなに抵抗を示す必要はないんですよ、何でも書けばいいんですよ、と本書は教えてくれるのだ。まず書くことから。私は書くことに抵抗はなく、こんな駄文をだらだらと日々書き連ねており、私を知っている人が見れば「そんなことやってないで、あれとこれはどうなってるんだ」と叱り飛ばしたくなるだろう。だが、著者が本書内で述べているように、書くこと自体が“セラピー”の効果を持っていると思うから私も書く。ストレス発散の方法として1日くたくたに働いて、帰宅しての「まずビール一杯」や「まずテレビでもつけるか」に近い。本書では「日常のエピソードをくだらない川柳にして何10冊もノートを綴った患者さんのエピソード」が紹介されていたが、書いてある内容は二の次で書くことの第一義は“自分セラピー”である、という著者の考えには同感だ。

2010年3月26日金曜日

金曜の朝のひとこま

十数分間、興味を持続させて聴かせる発表をするというのはとても難しい行為だと思う。ましてや朝の眠い時間なら尚更だ。
基本に則って、無駄がなく、しかもよく準備されている様は見ていて、聴いていてとても気持ちよいものであった。

症例報告での一般的な"型"は大体以下のようである。
①緒言・Introduction
・過去の文献データのうち、一般的な内容を書く
・報告のポイントを簡単に述べ、なぜ報告するのか
②症例・Case  
・ありのままに書く。婉曲的表現を使用しない。
③考察・Discussion 
・一般的内容、もしくは文献としては比較的よく知られている程度の内容
・報告する症例から得られたデータを分析
・過去に蓄積された文献データを持ち出し
・適切な推察や論理展開を用いて、なぜこの症例は報告に値するかという論点を納得させる
・この症例報告がエビデンスとして今後どのように役立つ可能性があるか

この"型"に忠実に則って演者が発表しているのを聴いていると聴衆として安心感があるし、まして自分より若い演者であれば自分のやる気も鼓舞されるというもの。聴衆に"スライドを頑張って見させない"優しさをもった発表に感謝したい。

2010年3月24日水曜日

自由をつくる 自在に生きる ― 森博嗣

週末の3連休毎日ランニングに興じた罰があたったのだろうか。一昨日、昨日に引き継いで咽頭痛が増悪している。おまけに鼻汁と咳が本格的に追加されてきた。そんな状態でも簡単に休めるほどは当科も人がいないので、マスクを二重にして麻酔管理を行う。麻酔中にも出るわ出るわ鼻水が。時々オペ室外に出て、本来は手拭用である硬い紙で鼻をかむこと数十回。すっかりトナカイのような赤っ鼻になってしまった。
 こんな集中力のない日に限って泌尿器科の長時間手術やら急性硬膜下血腫の緊急手術やらの麻酔を担当する。普段でも気を遣うのにこんなときは更に消耗する。が、逆にうまく管理できたときの感動もひとしお。と言うこと自体ちょっと病的な気もする。まぁ体が病気なのだから仕方ない。いつの間にかウィルスに侵攻されていたこの肉体。免疫が低下しているのか、生活が不摂生なのか、よくわからないが、今日も無事故で安全に麻酔を行えたことには素直に感謝したい。
***
新書は次から次に販売されているので、ちょっと前に店頭に並んだものだと、小さめな規模の本屋の店頭では手に入りにくい。最近の新書は雑誌のような感覚で売り出されているのだろうか。
友人に紹介されて手に取った本書「 自由をつくる自在に生きる」は「スカイクロラ」の森博嗣氏の著作。本書を読了した後にこのような“代表的な著作を挙げてその作家のことを分ったような、分らせたような気になる”こと自体が本書で述べられている「支配された考え方」のような気がする。
本書ではああしろ、こうしろ、あれはどうか、これはどうか、という割には独り言のような、強制力がないような、それ自体に自由さがある文章のように感じられた。押し付けがましくない自由さが心地よい。

・空気を読むことで、流れに逆らわないことも必要だが、空気を読むことで、余計な流れに巻き込まれることだってある。(84頁)
・自分の周囲に、自分がどう考えているか、という情報を伝えることもまた、この「素直」な行動の一つだといえる。無理をしないでバランスをとりながら、できるかぎり素直に発信すること。それをするには「素直に考えること」がまず必要だ。(125頁)
・どんな場合であっても、人間は自分が思ってもいない方向へはけっして進めない。・・・その人が見た夢よりも素晴らしい現実は絶対に訪れないのである。・・・実現したかったら、少なくとも・・・成功する状態を予測することが必要である。知らないうちに自由になることなんてありえないのだ(140頁)
・頭を自由に働かせることが、どれほど大切で、どれほど人を豊かにするか、考えてほしい。そして、その結果、いかに社会に貢献できるか、それも想像してほしい。(159頁)

著者は本書が自己啓発本であることを是としていないが、読む人によっては啓発される内容が多いと思う。
本書のあとがきに著者の思いがすべて集約されているように感じた。

・自由を目指して生きる理由は、それがとんでもなく楽しいからである。(189頁)

2010年3月22日月曜日

Revised Cardiac Risk Index(RCRI)に関して

Circulation 1999; 100:1043-1049 による
risk of major cardiac event(MI、肺水腫、VF、心停止、完全房室ブロック) 
以下の項目を点数化して評価
0点-0.4%
1点-0.9%
2点-6.6%
3点以上-11%
 1.手術手技(開腹術、開胸術、腸骨動脈以上中枢の血管手術)
 2.虚血性心疾患の既往
  ・MIの既往
  ・運動負荷試験で陽性
  ・MIによる胸痛が現在ある
  ・硝酸薬で治療している
  ・心電図上、病的なQ波を認める
 3.うっ血性心不全の既往がある
  ・CHFの既往
  ・肺水腫
  ・夜間起坐呼吸がある
  ・両側ラ音、またはS3 gallop
  ・X線上肺血管影増強
 4.脳血管病変の既往
  ・TIAや脳梗塞・出血の既往
 5.術前のインスリン使用
 6.術前 血清Cr値>2.0 mg/dL

Journal of Cardiothoracic and Vascular Anesthesia, Vol24, No1(February), 2010: pp 84-90
では血管内腹部大動脈瘤ステント留置手術(endovascular abdominal aortic aneurysm repair; EAAAR)の長期予後因子としてのRCRIの有用性を論じている。

方法:retrospective study。単一施設での225人。1996年から2006年にエントリー。
結果:周術期心血管イベントは6.2%。長期の全死亡率は23%。冠動脈疾患(尤度比8.7, p=0.023)やうっ血性心不全(尤度比4, p=0.042)、RCRIが3点以上(尤度比8.6, p=0.004)の患者では有意に主要心血管イベントが多かった。
OMI、エコー上MIがある、1ブロックしか運動耐容能がない、RCRI3点以上、周術期主要心イベント、の各項目は長期全死亡率と有意に関連があった。
結論:血管内治療でも長期死亡率は依然として高い。the Lee index(上記Circulationの論文の筆者。RCRIのこと)は本術式を受ける患者でも短期・長期予後を予測する尺度として有用かもしれない。
・本論文中のKaplan-Meier曲線から読むにEAAAR患者の5生率は60%(event free群で70%, MACE群で20%程度)。

本試験の該当期間に、著者らの施設は他のステントグラフトの臨床試験にエントリーされた患者がいた。そのために本研究の症例数が少なくなってしまった。また、retrospective studyである・・・という問題点はあるが、それにしてもやはりhigh risk patientはhigh risk patientなのであるということだろう。日頃AAAの麻酔は開腹術だったら当然用心して準備するが、EAAARでも用心深く行わなくてはならない。

EAAARでは苦い思い出がある。術中にモニターを見ている目の前で血圧が一気に20だか30だかまでに低下したのだ。開腹術なら大動脈瘤が破裂してすぐ分かるが、血管内手術では破裂してもすぐ見えないので、注意していないと対応が遅くなる。幸いその患者さんは後遺症なく退院されたようだが、こんなときの対応もきっと短期死亡率に関係してくるのだろう。

Training outside(其の十七)

まだ若干肌寒いがいい陽気だったのでマラソン大会を意識して外で走ってみた。
ランニング:27分 約5.0km(11:03-11:30、2つ隣の駅まで往復) 計104.0km

いろんな人から言われていたとおり、ベルトの上を走るのとアスファルトの上を走るのでは全く違った。幸いなことに今日は普段とあまり変わらない速さで走りきれた。だが、自分がどの程度の速度で走っているか分からないし、何Km走ったのかも詳細に分からない。アップダウンもある。ペース配分を誤るとあっという間に消耗しきってしまいそうだ。次回外で走る際には、妻が発見した「人や車があまり来ない川べりのランニングコース(1周約3.4km)」を走ってみようと思う。

最近自転車通勤をおサボりしていたが、改めて「Mapionキョリ測(β)」で距離を調べると居宅から職場まで13.8kmある。これを往復ランニングできればハーフマラソンは余裕なのだろうが・・・。まぁ地道にやっていこう。
***
心臓血管麻酔学会の年会費が7000円から1万円に値上がりしていたことに今頃になって気づいた。

2010年3月21日日曜日

Training in Rena(其の十六)

今日未明、窓ガラスが割れるのではないかと思う位の容赦ない暴風が吹き荒れ、滅多なことでは起きない私も生命の危険を本能で悟ったのか深夜に覚醒した。
気象庁の記録をみると練馬の最大瞬間風速は20.6m/sとなっており、38.1m/sを記録した千葉ではさぞかし破壊的な状態だったのだろう。
***
ランニング:27分5.0km(9.5k/hでスタートし、11k/hで3.0kmまで傾斜あり。3.0km地点から12.0k/h,傾斜0にて) 計99.0km
筋トレ:腹筋、背筋、胸筋

この速さでは10km、20kmは走れない。

2010年3月20日土曜日

雑多な知識

最近得た知識
・重症筋無力症: As a general rule, patients should keep taking their anticholinesterase medication and be informed about their possibility of postoperative ventilator support. (Miller 6th, p1180)

・くも膜下モルヒネの合併症(Anaethesia誌の論文より)
 ・Low doseとhigh doseで比較(<0.3mg と≧0.3mgで。主な対象手術はTHA, TKA, 帝王切開)
 ・Nausea, vomiting(モルヒネであわせて25%くらい), かゆみ(モルヒネで37%くらい)はplaceboより多い。
 ・Meta analysisではvomitingはlow dose(<0.3mg)群でより多かった。理由は不明
 ・かゆみはdose dependentであった。
 ・排尿障害は量に依存しない。 Placeboと有意差なし
 ・呼吸抑制はhigh doseで多いという予想通りの結果(9%対 low dose 1%)
 ・嘔気予防にはオンダンセトロン8mg、デキサメタゾン8mg、ドロレプタン1mgが有効
 ・propofol 10mgはかゆみ予防によい??不明

・SSCG(Surviving sepsis campaign guideline)2004と2008が出てから集中治療が必要な患者の死亡率が下がってきているようだとのメタ解析論文。だが、まだまだ検討が必要。
・SSCGに関しては薄い小冊子「敗血症診療ガイドライン―ライフ・サイエンス社」がコンパクトで詳しい内容なのだが、Amazonでは新品がもう手に入らないのだろうか?

Training in Rena(其の十五)

いろいろしているうちに前回から9日間空いたが10kmを無事に走ることができた。

ランニング:62分10.4km(9.0k/hから徐々に11.5k/hまでup) 計94.0km
筋トレ:腹筋、背筋、胸筋、内転筋
***
雑多な知識
・日本にある米軍の基地面積の3/4は沖縄にある
・キャンプシュワブのシュワブはアメリカ兵英雄の名前
・米軍基地をなくすことを要求するのは、自国の自衛を自国の軍隊で100%やることを意味しかねない。それだけの覚悟が日本にあるのか?

2010年3月19日金曜日

mutter to myself

今日の失敗を踏んづけて明日も頑張る。前進あるのみである。慎重かつ確かな一歩ずつの前進が明日の強い私を作る筈だ。そう信じて頑張ろう。
***
この人生のなんと素晴らしいことか。愛するものと魂がひとつになり、溶け合いながら交わることの奇跡よ
***
人生とは与えられた運命を精一杯の力で全うすることであろうか。意味を求めるのではなく生きようともがく事自体が意味のあることなのだろうか
***
瞑想しよう
自分と会話をして幸せを深めよう。古典を読み考えの幅を広げよう。
***
最近ようやく三割バッターでもいいかなと思えるようになってきた。といってもこれまで十割打ってたわけでも全くないのだが、自分の周りに十人いたら十人に好かれようと思うのをやめた方がいい気がすると思えるようになってきたということだ。人生は有限だし、自分の能力には、未だ限界は見えないがきっと限りがあると思う。そんな中で自分の生の欲求を満たしつつ、なおかつ社会に貢献して行くには結局「社会のニーズにある程度迎合しつつも自分がやりたい事をやるのが1番」ではないか。まだまだ人生半ばであり悟ったなんていうつもりは全くないが、素晴らしい麻酔科の同士たちと語り合ったあとの29歳の自分が思ったこと。
***
資源があってもその資源を完全には有効利用できていない自分も愛そう
***
相田みつを氏の言葉
アノネ がんばんなくてもいいからさ 具体的に動くことだね

2010年3月12日金曜日

本を読むこと

ニーチェは
 書かれたもののなかで、わたしが愛するのは、血で書かれたものだけだ。血をもって書け。そうすればあなたは、血が精神だということを経験するだろう。他人の血を理解するのは容易にはできない。読書する暇つぶし屋を、わたしは憎む。(ツァラトゥストラはこう言った)

ショウペンアウエルは
 読書にいそしむかぎり、実は我々の頭は他人の思想の運動場に過ぎない。(中略)ほとんどまる一日を多読に費やす勤勉な人間は、次第に自分でものを考える力を失っていく。(中略)多読すればするほど、読まれたものは精神の中に、真の跡をとどめないのである。(読書について)

考えることを生業とするような哲学者であればこう言えるのであろうが。これらは読書の到達点のひとつなのであろう。

「何をしてるのさ?」
「仕事さ・・・・・・」
「何の仕事よ?」
「考え事だよ」
の世界にあったラスコーリニコフは斧で老婆を2人殺害したが。

2010年3月11日木曜日

septic shock, Training in Rena(其の十四)

当直でsevere septic shockに遭遇したので文献を引いていたら、タイムリーに以下の論文に出会った。
Comparison of Dopamine and Norepinephrine in the Treatment of Shock, NEJM Volume 362:779-789 March 4, 2010 Number 9

方法と患者群
・Belgium,Austria,Spainの8施設でのRCT.shock患者1679人をdopamine(DOA 20γ)群とnorepinephrine(NE 0.19γ)にわけ28日死亡率をprimary end pointとして評価。この量でも血圧保てなければopen-label NA, epinephrine, dobutamine,vasopressinを追加する。
・ICU入室理由は内科(約66%)、予定手術(約20%)、緊急手術(約14%)
結果
・死亡率は両群で有意差なし(52.5%と48.5%)。
・不整脈がdopamine群で有意に多い(24.1%と12.4%)
・subgroup解析でcardiogenic shockでnorepinephrineよりdopamineで死亡率が高かった。septic shockとhypovolemic shockでは有意差なし
考察
・subgroup解析での結果はDOAによる頻脈が虚血イベントに寄与したのかもしれない
・ACC/AHAのガイドライン(AMI後の低血圧にはDOAが第一選択)に影響を与える可能性がある

この結果を手術麻酔に直接利用することは当然できないが大変興味深い内容である。不整脈が多いという結果からは心臓が悪い患者にあまり高容量のDOAをつないで術後ICUに帰さないほうがいいのかもしれない。まぁDOAだけ20γで術後ICUに帰すことなんて思い出せる限りではこれまでない。というよりもNEをfirst lineとすることにそれほど抵抗感を示さなくてもよいと読むべきなのだろうか。論文内を細かく見るとrenal replacement therapyの割合は両群とも7.4%程度で、特に腎機能にも影響ないようである。

私が経験した麻酔ではそれどころではないカテコラミン(DOA 15γ、NE 0.6γ、EP 0.4γ)を一時的に使用しなくては循環が保てなかった。手術麻酔中のカテコラミンの適正使用量がどれくらいなのかを判断するのは難しい。幸いにしてPVCが時折出るくらいで、致命的にならず帰室させることができた。きっと患者さんの心臓が元気で尿がずっと出続けていたからであろう。

最近急患によくあたるのは、遅い時間に炭水化物を摂ることが引き金になっているからに違いない。次回は予定手術が終わったらすぐ寝ようと思う。

***

ランニング:60分10.0km(10k/h) 計83.6km
筋トレ:なし

2010年3月10日水曜日

ブックストッパーとTUR-P

日曜夜の当直で久しぶりに大当たり(septic shockとStanford A。ともにASA-PS 4E症例)してからというもの、体調が思わしくない。
***
本の内容を見ながらパソコンに打ち込もうとすると本が閉じてしまいイライラする。
「Reading Hacks!」という本の中で紹介されていたのだが、このイライラを解消するために「トモエそろばん」というお店からブックストッパーを購入した。
http://www.soroban.com/japanese/shopping/?ca2=5
これを2つ買い、本を両側から挟むと非常に快適である。
いろんな本で試してみたが、「心臓手術の周術期管理―MEDSi」の厚さは使用可能。「小児麻酔マニュアル―克誠堂出版」は不可能であった。「Miller麻酔科学」は挟む必要がないと思い試していない。ブックストッパーは私に欠かせなくなり、殆ど常に鞄の奥底に入れて持ち歩いてしまっている。
***
久しぶりにTUR-Pの麻酔を担当した。
脊麻が効いていれば特にすることはない麻酔といえばそうなのだが、こんな症例報告を見るとやはり恐ろしい。
http://kansai.anesth.or.jp/kako/rinma18/hypnos.m.ehime-u.ac.jp/rinma18/absJSCA/abstruct/0607.html

ウロマチックS(3% D-ソルビトール、浸透圧170mOsm/kgH2O)は血管内に吸収されるとソルビトールによる浸透圧維持のため、実際の血漿浸透圧は血漿Na値などにより求めた計算上の浸透圧より高い(Osmolal gapというらしい。正常は5~10mOsm/L以下だが、TUR後には30-60mOsm/L以上に開大することも)。よってTUR術中には急速に起こる低Na血症にも関わらず、水分の細胞内(特にCNS)への移行は見かけより少なく、症状発現も制限される。(「周術期輸液の最前線」―真興交易 より)
・Na濃度と浸透圧は平行しないので、血漿浸透圧を実測したほうがよい
・低血圧や精神症状では低Na血症より出血多量を疑う

そうは言っても脊麻でTh4まで上がってしまっては膀胱穿孔時の腹膜刺激症状も分からないし、低血圧も脊麻のせいにしてしまいそうだし、患者さんが精神症状を発現すれば鎮静を強く希望していた術前の性格のせいにしてしまいそうな気がする。
幸いTUR症候群を発症することなく、無事に手術を終えて患者さんは病棟に帰っていったのだが、いろんなことを考えているうちに、起こっている現象に対し、波ひとつない穏やかな心で対応する重要さを学んだ症例であった。

2010年3月9日火曜日

東京で今年数回目の雪

ショーペンハウアーが「幸福について」の冒頭でシャンフォール(1741-1794, フランスの著述家)の言葉を引用している。

幸福は容易に得られるものではない。幸福を我々のうちに見出すのは至難であり、他の場所に見出すのは不可能である。

だからと言って他人と関わることが幸福ではないと言ってるわけではないだろうが、外に幸せを見出すのではなく、外との関係において自分の心の在り方を充実したものにできるとよいのかもしれない。
 
今日学んだこと
・腰神経叢ブロックにおいて局所麻酔薬の量や濃度は鎮痛スコアに影響がない。(THA術後痛に対する0.1%ロピバカイン12ml/hと0.4%ロピバカイン3ml/hでの術翌日の等尺性大腿四頭筋力と鎮痛スコア等を調査)Anesthesiology. 112(2):347-354, February 2010.
・胸骨切開によるAVRと血管内AVRでは術前BNPと左室拡張能は同様でも術後のBNPは有意に血管内AVR群で低下、左室拡張能は早期に優位に改善する。(A case-matched, nonrandomized study.) J Cardiothorac Vasc Anesth. 2010 Feb;24(1):25-9.

2010年3月7日日曜日

Orphaned LandのNever Ending Way of Orwarrior

大傑作だった前作"Mabool"から気がついたら既に6年経過。
キャッチーで疾走感溢れる"#1 Sapari"で開演するバンド4作目のアルバムである。メジャー感が増したのはプロダクションのみで、コビ・ファーヒのヴォーカルが聞こえてくればそれはもうOrphaned Landの世界以外の何物でもない。ギター、サズやカンバス、シャントゥール、アラビアンフルート、ブーズキー、ヴァイオリン、その他使われている楽器全てに彼ららしさが刻み込まれており、全く変わらない唯一無二の個性で安心させてくれる。
いやしかし、本当に凄い作品である。詩の描く世界は全く違うが、映画「パッション」でイエスが十字を担いでゴルゴダの丘をのぼらされているシーンの、あの埃くささがアルバムの音像から伝わってくるようなのは彼らがイスラエルのバンドだからというのと無縁ではないのかもしれない。中東のプログレッシブメタルバンドと評されているようだが、メタルという範疇には収まらない叙情性と「音だけで景色が浮かんでくるような」世界観を作り出す力にはただただ驚嘆するだけである。メタルというだけで聞かれないのだとしたらこんなにもったいない作品はない。
アルバムのハイライトは"#7 Warrior"の後半で聞かれるような官能的なギターや、Blackmore's Nightのようなイントロからコーラス部で大仰に歌い上げるバラード"#10 New Jerusalem"やOpeth的ダーク&ゴシックな色合いが印象的な"#12 MI?"のようなスローサイドの楽曲群であろう。
不満を言えばランニングのときのBGMには向かなそうなところだろうか。runner's highでエンドルフィンがたくさん出ているような状態で聴けばとても気持ちよさそうである。青空の下でのドライブのBGMに向かないであろう事は言うまでもない。

Training in Rena(其の十三)

ランニング:60分9.1km(8.5k/h 3min, 10.0k/h 57min 傾斜0.0) 計73.6km
筋トレ:背筋(30kg)、背筋(30kg)、腹筋(30kg)、大胸筋(30kg), それぞれ15×2セット

初めてのマラソン大会出場まで1ヶ月を切ったので、とにかく体力を落とさぬように走り続けていこうと思う。といいつつ、走っているせいか最近麻酔中に大変疲れやすくなっているような気がする。本業の麻酔管理を「体力がないことで適当な管理にしないように」と始めたランニングが「ランニングそのものが楽しいから走るために走っている」状態に変わりつつある。これはよくない兆候かもしれない。
そして私が出場するマラソン大会は「なまずの里マラソン」である。
埼玉県吉川市というところで行われる大会の5kmの部である。平坦なコースで初心者向けという情報から初出場には適当ではと考えた。
なぜ「なまずの里」かというと、埼玉県吉川市は中川や江戸川に囲まれており、川魚料理が大変おいしいからだそうだ。まぁそれはさておき、ベルトコンベアから屋外に出てのトレーニングもそろそろ始めてみよう。

2010年3月6日土曜日

Training in Rena(其の十一、十二)

3月3日分
ランニング 50分4.4km、8.5k/h
筋トレ 背筋、腹筋、大胸筋15*2回

3月6日分
ランニング:30分5.0km(8.5k/h 3min, 10.0k/h 25min, 12k/h 2min) 計64.5km
筋トレ:背筋(30kg)、腹筋(30kg)、大胸筋(30kg), それぞれ15×2セット

いつもはVigileoモニターを見ながら管理している前立腺全摘術の麻酔を普通の動脈圧ラインで管理してみた。人間SVVモニターと化して輸液したつもりだったが少し多かったかもしれない。前立腺手術は血液と尿が途中で混ざるから出血量の予測が難しい。

2010年3月1日月曜日

Training in Rena(其の十)

今日は食道手術が早く終わったので、ルネに行った。
どこかで聴いた曲が流れていると思って必死で思い出したのだが、中々思い出せない。初めはEuropeの曲かとも思ったが、違う。散々考えた挙句に出てきた答えはScorpionsの"Wind of Change"だった。随分渋い選曲だ。自分の持っているCD以外に外で聞くことなんてあまりない曲である。

ランニング:50分7.1km(8.5k/h 50min, 10分毎に傾斜0.5ずつup) 計55.1km

筋トレ:背筋(30kg)、腹筋(30kg)それぞれ15×2セット

傾斜を少しずつつけて目をつぶって走ると山登りをしている気分になる。相当量カテコラミンが出たと思うが、明日の麻酔ではこんなに患者さんに出させないように気をつけたい。

差がつく読書-樋口裕一

・本はどれもがそれぞれの価値を持っている。それを求めている人の手に求めているときに渡れば、それは良書になる。(20頁)
・批判的に読む。3what(それは何か、何が起こっているか、何がその結果起こるか)3w(why, when, where)1h(how)を検証する。(86頁)
・読書の後、200字程度の読後感をまとめる。読書のきっかけ、内容の要約、何を得たのか、全体のまとめ(98頁)
・本を読むということは、それに感動する自分を発見すること。(128頁)

読書はそれのみでは他人の考えを知る行為にしか過ぎないという面がある。読書それ自体が目的にならないようにしたい。