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2010年5月30日日曜日

Training in Rena(其の三十五)、追悼

短時間しか走れない今日のような場合、傾斜ランニングで負荷をかけるのがよい。

ランニング:37分 4.8km(傾斜3.0~6.0にて8.0-10.0k/h) 計228.7km
筋トレ:広背筋、腸腰筋、腹直筋
(2月 48km, 3月 56km, 4月 63.1km, 5月 61.6km)

4月5km:なまずの里マラソン  23分07秒
6月8km:多摩川提マラソン(あと14日)
7月10km:東和ロードレース(あと35日)
9月20km:田沢湖マラソン(あと112日)

***
ほうれん草
・ほうれん草の根元の赤い部分にはマンガンが豊富に含まれており、甘みもある。
・栄養成分:カロテン、ビタミンB群・C、葉酸、鉄、カルシウム
・12-1月がおいしい時期
・鮮度が命。どんどん水分が蒸発するので新鮮なうちに調理する

***
デニス・ホッパーが5月29日に満74歳で亡くなったそうだ。前立腺癌のためだとか。カンヌ国際映画祭で新人監督賞を獲得した有名な「イージーライダー」は彼の代名詞とも言える作品だが、私は未だ未体験。私の記憶の中には「地獄の黙示録」の報道写真家が、「ウォーターワールド」のディーコンが、近年ではジョージ・A・ロメロが監督したゾンビ映画「ランド・オブ・ザ・デッド」のカウフマンが、色濃く残っている。1番強い記憶は「スピード」のハワード・ペインだ。私の中でアクション映画の金字塔の1つである「スピード」がロードショーされたのは1994年。まだ中学生で映画を本格的に見始めたばかりの頃だったが、あの映画でかっこよかったのはキアヌ・リーブスでもサンドラ・ブロックでもない。デニス・ホッパーだった。
「怪演」ということばで表現されることが多かった俳優が天に召された今、幾許か寂しい気分である。友人や家族であれば相互に影響を及ぼしあう関係であるが、有名な役者・俳優と私との関係では、感情の流れは私からのほぼ一方通行である。いずれ忘れてしまうこの感情ではあろうが、人の死に触れると空虚な心になるものだ。

2010年5月29日土曜日

Training in Rena(其の三十四), シゴト考

ランニング:74分 10.2km(傾斜3.0~6.0にて8.0-10.0k/h) 計223.9km
筋トレ:広背筋、腹斜筋
(2月 48km, 3月 56km, 4月 63.1km, 5月 56.8km)

4月5km 23分07秒
6月8km:多摩川提マラソン(あと15日)
7月10km:東和ロードレース(あと36日)
9月20km:田沢湖マラソン(あと113日)
***
先日、久しぶりに乗り過ごすほど電車の中で眠りこけてしまった。降りた駅のホームで自宅に向かう電車を待っているときに、昔見た光景を思い出し、それからつらつらと考えた。

駅のホームの椅子に座り、下を向いて吐いている女性。介助する駅員。私は酔っぱらいだろうと思い、そのときは大して気に留めなかった。なぜなら私も酔っぱらいだったから。
思い返すと中枢疾患、前庭疾患、薬剤、妊娠、内分泌疾患・・・際限なく鑑別診断は挙がる筈。駅で嘔吐→酔っぱらいの思考回路は多くの場合正解かもしれないが、本当にそうだろうか。
状況に対する思い込み回路(例えば血圧低下→循環血液量低下、執刀直後の血圧上昇→鎮痛不十分)が徐々に出来上がってくると、正診率は上がるだろうが、少ない誤診の中で大きな間違いをする可能性がでてくるのではないか。学習が徐々に進んでくることで自信がつき、反対に学ぶ姿勢が徐々に損なわれ経験でものを言うようになる。素直な心と謙虚な学習姿勢が失われるのだ。そうならないように、経験を経験で終わらせないように、ちょっと時間が経ってから客観的に見直してみる。時には信頼できる第三者に見て評価してもらう。そういう過程で深化した経験が「どこで麻酔をしたとしても許容され得る方法です」と胸を張って言えるレベルに達しているものなのか。常にそれを考えたい。一見慣れ親しんだ方法が間違っているかもしれないし、またはもっといい方法があるかもしれない。自分の実践の軌道修正を自分でしていく気構えが必要だと感じた一週間だった。

脊髄くも膜下麻酔の禁忌、レーザーと気道火災

教科書によって微妙に異なることを知った。
困難症例での適用には、患者への説明と外科医と認識を共通にする努力が必要であろう。

「ミラー麻酔科学 p1288」
絶対禁忌
・患者が拒否する場合
・穿刺時に安静が保てない場合
・理論的に脳幹ヘルニアを起こす危険があるほど頭蓋内圧が亢進している
相対禁忌
・ワルファリンやヘパリンの投与で起こる内因性および特発性凝固傷害
・針を刺す予定部位の皮膚・軟部組織の感染
・循環血液量の高度減少
・麻酔科医の経験不足
・術前からある神経障害

「脊椎麻酔―正しい知識と確実な手技」
絶対的禁忌
・心不全(高血圧、冠動脈疾患、弁膜症による)
・感染(敗血症、穿刺部位)
・長期にわたる腸閉塞
比較的禁忌
・中枢神経疾患(脳腫瘍、髄膜炎、出血)、脊髄疾患(多発性硬化症、他脱髄性疾患)
・脱水、ショック、重症貧血、低血圧
・A-Vブロック
・重度の呼吸器疾患(T8以上の無痛域では肺活量が直線的に低下、C8では対象の58.1%になる)
・脊椎の先天的・後天的変形
・腹腔内圧上昇(腹水、巨大子宮筋腫、その他腹腔内腫瘤)
・拡大上腹部手術
・精神状態(恐怖心が強い、精神発達遅滞等)
・出血傾向、抗凝固療法中
・幼小児、脊椎麻酔を希望しない患者

「麻酔科シークレット」
絶対的禁忌
・穿刺部感染
・菌血症
・大幅な循環血液量減少
・凝固傷害
・重症の弁膜症
・局所感染
・頭蓋内圧亢進
相対的禁忌
・進行性変形性(脱髄性)神経疾患(多発性硬化症)
・背部痛
・敗血症

***

レーザー手術の麻酔関係メモ
・気道手術時には緊急に気管切開を行える外科医の立会いのもとで行うべき
・緊急の輪状甲状膜切開セットをいつでも使用できるように準備しておく

・CO2レーザーのエネルギーに非常に感受性が高い:ポリ塩化ビニル
・CO2レーザー気道手技:4416例中6例に気道火災(0.14%)
・気道に過度の酸化体がある状態は危険。
気道ガスはFiO2 0.30以下にすべき (48A77)
・亜酸化窒素には助燃性があり、混入させることは高濃度酸素投与と同様に危険
・臨床使用程度の揮発性麻酔薬には燃焼性および爆発性はない。
・引火性がある組織を湿ったスポンジで覆い、気道の引火性を低くする

気道火災時
・手術室内にバケツと水を用意しておく
・麻酔回路を外して気管チューブへの酸素投与を絶つ
・気管チューブを除去、術野に大量の生食を投与して火を消す
・100%酸素でマスク換気を行う
・喉頭鏡と気管支鏡で気道評価。ジェット換気を併用。
燃焼片を除去。余裕があれば写真をとる
・気管支遠位まで観察。気道熱傷があれば丁寧な気管支洗浄を行う
・気道損傷が明らかならば再挿管する
・口、咽頭、顔面の評価を行う
・胸部Xp撮影
・患者を24時間モニター
・短期間の大量ステロイドは有効だろう
・必要に応じて抗生剤

追悼 ― RONNIE JAMES DIO

稀代のメタルヴォーカリストであるロニー・ジェイムス・ディオが、2010年5月16日に胃癌によって67年の生涯を閉じたそうだ。今日、遅まきながらその事実を知り、彼がヴォーカルをとっていたRainbowやBlack Sabbathのアルバムを引っ張り出して聴いている。
私はロニーの熱心なファンではないし、RainbowやBlack Sabbathの熱心なファンでもない(Rainbowで1番好きな曲が「I surrender」だと言ったらファンは怒りそうだ)。しかし「Catch the Rainbow」は好きだし、「Die Young」は私と同じだけの年数を生きている名曲だ。今までこれらの曲を聴くときは、遠い過去からの贈り物のように感じていたが、これからはどうしたって天からの贈り物と感じてしまうだろう。1人の偉大なるシンガーがあらん限りの情念を込めて歌った楽曲の数々に、今はただ身を委ねるばかりである。

願わくはその魂が安らかでありますよう。

2010年5月26日水曜日

上機嫌の作法―齊藤孝

本書は「自称不機嫌な人間」である著者が、上機嫌を技化するための知恵について著した本である。
書かれている内容は2009年10月30日に臨麻学会でお聞きした内容
・上虚下実(上半身をやわらか~くして臍下に力を入れる)
・上機嫌 意味もなく。年を取ればとるほど。
・男は40歳過ぎたら普通にしても不機嫌に見える
にプラスアルファの内容。あの楽しかった講演を思い出せる内容で、非常に興味深く読むことができた。

・不機嫌が許されるのは赤ん坊か天才だけ(16)
・人間は本来、須らく自分の気持ちをコントロールできる状態にあるべき(17)
・上機嫌の根本は
 1.断言力(置かれた状況に対してきちっとした客観的意識をもつ「・・・にも関わらず上機嫌」)
 2.想像力(ものの捉え方を変え、能動的に機嫌をよくする)
 3.自分を笑い飛ばす力(「自分だからみっともない」と考えない。このみっともなさは誰であろうと同じ)
・気分に巻き込まれた状態から自分を引き離してみる力が必要(140)
・一番機嫌をよくしていられない瞬間だからこそ、明るく振舞うことがトレーニングになる。・・・細かなことで自己客観視をしていく練習をする(147)
・ハード且つ上機嫌。挑戦する内容は厳しく、なお且つ上機嫌で、それに取り組むことが、社会を活性化する(174)
***
1日は全ての人に等しく24時間しかないはずなのに、のべ28時間の麻酔時間だった先日の当直。「こんな状況にも関わらず上機嫌!」とできれば確かに凄い。
誰か余っている時間、私に売ってください。

2010年5月23日日曜日

Training in Rena(其の三十三)

今日は20℃に達しない雨日。前日夏日だったからか非常に蒸していた。

ランニング:38分 5.0km(傾斜6.0) 計213.7km

筋トレ:大胸筋、上腕二頭筋
(2月 48km, 3月 56km, 4月 63.1km, 5月 46.6km)

4月5km 23分07秒
6月8km(あと21日)
7月10km(あと42日)
9月20km(あと1119日)

2010年5月22日土曜日

ASA/SCAによる周術期TEEガイドライン2010

1996年のガイドライン
http://journals.lww.com/anesthesiology/Fulltext/1996/04000/Practice_Guidelines_for_Perioperative.29.aspx
このたび改訂された2010年度版
http://journals.lww.com/anesthesiology/Citation/2010/05000/Practice_Guidelines_for_Perioperative.13.aspx

エビデンスレベル
カテゴリーB:中等度の強さの根拠がある              
レベル1:ランダム化を伴わないがコントロールを伴うコホート研究
レベル2:コントロールを伴わない比較試験
レベル3:ケースレポートも含む(後ろ向き研究)

前書きとして以下が記載されている。
・臨床家や患者の手助けのために作成されているが、個々の施設の方針を変更するためのものではない
・ガイドラインはスタンダードや絶対条件となることを意図しておらず、特定の予後を保証するものではない。

心臓血管手術でのTEE
推奨
・禁忌がなければTEEは成人の開心術(特に弁疾患),胸部大動脈手術全例に使用するべきで,CABGにも使用を考慮するべきである。
(1)術前診断の見直しや確定
(2)術前に見つかっていなかった病変の検索
(3)麻酔と手術計画の練り直し
(4)手術の結果の評価
・乳幼児に対するTEEの適応は患者特有の問題(気管閉鎖症など)があり,case by caseで判断すべきである。

カテーテルによる心臓治療でのTEE
文献
・カテーテルを適切な位置に誘導するモニターとして、特に全身麻酔で手術を受ける患者では、TEEは有用であろう。また、心内シャント閉鎖術や、弁手術、電気的焼灼術等でも有用だろう(B2)
・術前に予測していなかった病変の検索にもTEEは有用だろう(大動脈基部膿瘍、心房内血栓、心房中隔瘤、心内シャント、弁の石灰化・逆流、壁運動異常、タンポナーデ) (B2)
・心嚢液貯留の検索にも有用だろう(B3)
意見
・ASAメンバーや専門家の意見では、不整脈治療に対するTEE使用の有無ははっきりしていない。

非心臓手術のTEE
文献
(1)脳外科手術での静脈内空気塞栓と卵円孔開存(B2)
(2)肝移植手術時の心嚢液貯留や心腔圧迫の検出(B3)
(3)整形外科手術での心内血栓やPFO(B2)。またMR、LVH、LVOTO(左室流出路閉塞)の評価(B3)
(4)血管外科手術での左室壁運動異常、大動脈病変、心房内腫瘤(B3)
(5)ASD、心虚血、脱水、心タンポナーデ、血栓・塞栓イベント(B2)。他の手術での、心嚢液や肺内塞栓子の検出(B3)

ASAメンバーや専門家の意見
・心臓・肺・神経合併症を引き起こす恐れのある心血管病変が分っている患者にはTEEを使用すべきである。
 ①説明のつかない高度低血圧―strongly agree
 ②生命を脅かす循環の破綻時―strongly agree
 ③説明のつかない低酸素血症―agree
・肺移植、胸腹部の外傷―agree
・腹部大動脈瘤や肝移植―専門家はagree、ASAメンバーequivocal
・大動脈の血管内治療、座位脳神経手術、経皮的心血管治療(大腿動脈ステント留置など)―ともにequivocal
・整形外科手術 ― ともにdisagree

推薦
・術式や術前の患者特有の合併症により「手術中に高度の心・肺・神経合併症を起こす可能性」がある場合に使用されるべきであろう。
・もしTEEとそれを扱う専門家としての知識があれば、生命を脅かすほどの治療抵抗性の循環破綻が起きた際にはTEEを使用すべきである。

集中治療領域
文献
・予想と異なる術後経過を辿るときTEEで見えるもの:弁逆流、大動脈・僧帽弁疣贅、大動脈解離、心臓内腫瘤、タンポナーデ、左右の心室不全、脱水(B2)
・術後の異常の発見:大動脈基部膿瘍、心膜血腫、胸部大動脈のdebris、LVH、左室壁運動異常(B3)
意見
・経胸壁心エコーや他のモニターで診断がつかないような患者の診断をするとき―strongly agree
・説明のつかない低血圧が持続するときーstrongly agree
・説明のつかない低酸素血症が持続するときーagree

TEEの禁忌
文献
・観察研究では、TEEの使用によって、稀だが以下のような合併症があるとされる。
  食道穿孔、食道損傷、血腫、喉頭麻痺、嚥下困難、歯牙損傷、死亡(B2)
・しかし禁忌かどうかを評価するのに足る研究が不足している(D)
意見
・食道切除後、食道胃切除後以外に絶対禁忌があるかについては意見が分かれている
・「他に絶対禁忌がある」とする人々が主張する絶対禁忌の病態
 (1)食道狭窄 (2)気管食道瘻 (3)食道手術後 (4)食道外傷後
・以下の病態は絶対禁忌ではない
 (1)バレット食道 (2)食道裂孔ヘルニア (3)巨大下行大動脈瘤 (4)片側声帯麻痺
・食道静脈瘤、放射線照射後、肥満症手術後が絶対禁忌かは意見が分かれている
・ツェンカー憩室、結腸による再建術後―専門家はagree、ASAメンバーはequivocal
・嚥下困難―専門家はequivocal、ASAメンバーはdisagree
推薦
・口腔、食道、胃に病変がある患者では利益がリスクを上回るときに「適切な予防措置を講じた上で」使用されるべきかもしれない。
・予防措置とは…
 ・他のモニターを使用する(epicardial echoなど)
 ・消化器科医へのコンサルト
 ・より小さいプローブの使用
 ・TEE検査範囲を制限すること
 ・不必要なプローブ操作を行わないこと
 ・熟練した者がプローべを操作すること

***
http://fragilemetalheart.blogspot.com/2009/10/advanced-tee.html
で聴いた内容を思い出した。
臨床家である以上ガイドラインは知っていたほうがよい。
術前評価のときにそれを根拠として、TEEが絶対必要なのか、あったほうがいいのか、または合併症を避けるために不必要なのか、をある程度の自信をもって他科の医師に助言できるからである。そうでないと「目の前の患者にTEEは使ってよいか?重度のMRがあるが、食道裂孔ヘルニアを合併している。自分の経験と感覚からすればTEEを使ってもよいような気がするけど、ほんとにいいんだろうか?一応文献をあたったほうがいいんだろうか?」という問いに患者ごとに毎回多大な時間をかけて答えなければならない。残念ながらそんな時間はないことが多い。特に心臓の緊急手術時は殆どの場合、上のガイドラインを鵜呑みにすれば「TEEの絶対適応」になるだろうから、その患者の合併症評価を瞬時に済ませなくてはならない。TEEのリスクとベネフィットを天秤にかけるのが麻酔科医の仕事。

TEEで病態の評価や診断をしなくちゃと躍起になる前に考えることがある。
そのプローべを食道に入れていいのか、悪いのか。

働く理由, 続・働く理由 ― 戸田智弘


<働く理由>より
・自分自身で真似するものを選びとることから主体性が確立して、創造性が発展していく。真似を嫌い、創造を気取るだけでは創造性は育たない。(118)
・仕事の95%は繰り返しのルーティンワーク。でも、残りの5%をどう膨らませるかで仕事を面白くできるかどうかが決まる。どこかに面白い仕事がないかと探すんじゃなく、目の前の仕事を面白くする方法を探すことのほうが重要。楽しいことをするんじゃなくて、することを楽しんでみる。(120)
・偉大で崇高な仕事をなしとげることを、私は心から望んでいる。けれども、わたしのいちばんの努めは、ささいな仕事を、あたかも偉大で崇高であるかのごとくなしとげることだ。(ヘレン・ケラー)(123)
・人生において「本当にがんばった」と思える時期がどこにもなかったら、「やるだけやった」という自分の限界点らしきものを見極めなかったら、その人はある種のすがすがしさを持って自分の人生を振り返ることができないだろう。(140)
・「給料をもらって働いている人は辞めてください、働いて給料をもらっている人は残ってください」(201)
・借り物でも、毎日着ていれば身につくもの。自分が善人と思っていれば、やがて善人に変わっている。習慣は、その人格、品格まで変えてしまう。(シェークスピア)(228)

<続・働く理由>より
・努力しても一流になれるとは限らない。けれども、謙虚に努力すれば二流にはなれる。一流の意味がわかる人のことを、二流っていうんだよ。一流も二流もわからない人を三流っていうんだから、二流と三流の間はもう無限大の距離だ。(田村隆一)(45)
・いつもつぎのことを考えなさい/いま自分は何をしているのか/自分のしていることは自分にとって大事なことなのか/人にとって大事なことなのか/そして大勢の人にとって大事なことなのか/世界の人にとって大事なことなのか/この自然にとって/あらゆる生きものにとって/大事なことなのかよく考えなさい/そしてもしそうでないと思ったらやめるがよい/なぜならこの世のものは/みんなひとつにつながっているからだよ(手塚治虫、ブッダ)(57)
・幸福は求めるものではない、「今」「ここ」「このこと」を大切にしながら生きている心の状態―それが幸福(89)
・君たちの時間は限られている。だから自分以外の他の誰かの人生を生きて、無駄にする暇なんかない。その他大勢の意見の雑音に、自分の内なる声、心、直感を掻き消されないことだ。自分の内なる声、心、直感というのは、どうしたわけか君が本当になりたいことは何なのかを、もうとっくの昔に知っているんだ。だからそれ以外のことはすべて二の次でいい。(スティーブ・ジョブズ)(113)
・「自分には能力が足りない、だから始めない」は間違っている。「自分には能力が足りない、だからこそ、それを始めてみる」というのが正しい考え方(124)
・無駄と遠回りほど価値あることはない(阿久悠)(141)
・常にどこかに向かっている「途上にある存在」が人間(151)
・自己実現をするには、ケアをする他者が必要。(207)
・「人生に意味を問うてはいけない、人生があなたに意味を問うているのだ」(208)
・「何があなたの力を必要としているか」「誰があなたの力を必要としているか」を考えてみる。そして何らかの行動を起こす。その行為を起こそうとする動機が、あなたの人生の意味である(209)

医師になりたての頃は「時給換算したら400円くらいの現実」を嘆き、やる気を維持するのが難しい状態がよくあった。自分の仕事を「賃金という見返りからの労働」という点でしか見られなかったのだ。今思うと思い上がりも甚だしいが。
社会の景気や雇用主の業績にさほど左右されずに一定の給料が得られる私の現在の勤務形態は「安定している」という点においては優れている。余程酷いミスを犯さなければ首をきられることもない。逆に「どれだけ働いても給料はほとんどおんなじ」である。その意味において、お金だけでは働く理由とはなりにくい。毎日の仕事の繰り返しの中に面白さを見出して、日々少しでもレベルアップしている実感があれば、仕事は面白くなる。私の場合、分らないことを本や文献で調べる、新しい手技を学ぶ、新人さんたちが分らないポイントを発見して教える、逆に教えられる、といったことが現在の仕事力の源泉となっている。
仕事が自分に向いているか向いていないかを決めてからその仕事をするのではない。仕事を真剣にすることで段々とその仕事が自分に向いてくるのだろう。

最も印象に残ったことば。

「僕が他の人に対して優れた点はない。映画を見続け、映画を語り続けて、映画に関わり続けた。そして、そのことに飽くことはなかった。これだけが僕のいわば『才能』であって・・・」(押井守)(45)

2010年5月21日金曜日

Training in Rena(其の三十二)


ランニングの間に筋トレを挟むとあまり走れない。


ランニング:15+35分 2km+6km 計208.7km
筋トレ:広背筋、腸腰筋、腹斜筋、腹直筋
(2月 48km, 3月 56km, 4月 63.1km, 5月 41.6km)

4月5km 23分07秒
6月8km(あと22日)
7月10km(あと43日)
9月20km(あと120日)

2010年5月20日木曜日

(麻) PreSepCV oximetry catheterメモ

19日水曜日。
改めて術中の輸液療法は静的指標より動的指標を参考に行ったほうがよいとの刷り込みを受けた。

健常者:ScvO2 < SvO2 (2-3%)
麻酔時、ショック(出血、sepsis,cardiogenic shock)時、心不全時:ScvO2 > SvO2(5-7%)
 
ScvO2(中心静脈血酸素飽和度)に影響を与える因子
・VO2(酸素消費量)
・SaO2(動脈血酸素飽和度)
・CO(心拍出量)
・Hb(ヘモグロビン)

・麻酔中はVO2とSaO2は比較的一定のため、ScvO2が低下したときはCOかHbに変化を生じた可能性が高いと考えて対処。
・ScvO2が70%を下回ると合併症の危険が高くなることが報告されている。
・septic shock症例ではlactateの上昇よりScvO2の低下の方が早く起こることがあるようであり、そのような状況では注意を要する。(早く介入しないと不可逆的な変化が起こり、救命できなくなるかも?)
・septic shock症例で異常にScvO2高値の際には既に酸素利用障害が起きている?不可逆的な病態か?

取り扱いの注意
・ダブルルーメンのPreSepカテでは体内キャリブレーションを茶色(distal lumen)の採血で行う。
・カテーテルを深めに挿入するとIVCからの血流による乱流から(?)、浅めに挿入するほうがScvO2の精度がよいようだ。(13cm程度の固定でよいと思われる)
***
輸液の指標には血圧、心拍数、APCOやSVV,ScvO2があればよく、それらの術中のトレンド(数10分、時間ごとの大まかな推移)を指標として必要量を投与していけばよいようだ。最終的にどんな症例でも可能な限り(体重×0.1)ml以下のプラスバランス内には収めるべきであろうが、手術室での大量出血症例での循環最適化のためにはプリセップカテーテルで得られるScvO2値は大いに役立ちそうである。今後経験症例数を増やしていきたいところ。

2010年5月19日水曜日

酸素療法講習会

18日火曜日。
本来であれば自分が教わりたい内容であったが、事の成り行きで他部署の看護師さんたちを相手に講師をすることになった。
お題は「Tピース、ジャクソンリース、アンビューバッグの使い方」

となると適当なことは話せない訳で、それなりに勉強する。パワーポイントを作成する。ネタ探しに教科書に載っていないかといろんな本を見る。やっと書いてある教科書のワンセクションを見つける。執筆者の名前を見ると何故か当科の先輩麻酔科医が執筆していたりして改めて尊敬の念に駆られる。一通りスライドを自分が話しやすいようにアレンジした後に、予行練習的に1人で講演の予行練習をする。持ち時間が40分あるのに15分で終わってしまう。まずい。池上彰氏の「わかりやすく<伝える>技術―講談社現代新書」を読んだりして、どう話したら分りやすいか考える。そんなことをしたりしなかったりののべ1ヶ月であったが、講義は何とかなったのではないかとほっとしている次第である。話し慣れているベテランMEさんの講義が素晴らしかったので、非常に参考になった。自分で勉強して知識を身につけるのと、人に教えること、特に不特定多数の前で話すのは明らかに違うスキルが必要だと実感した火曜日であった。このような機会を与えてくださった皆様に感謝したい。

2010年5月17日月曜日

ハイ・コンセプト 「新しいこと」を考え出す人の時代 ― ダニエル・ピンク

世界的経営コンサルタントの大前研一氏が翻訳を行っている。
本書冒頭の「訳者解説」に大前氏はこう書いている。

21世紀にまともな給料をもらって、良い生活をしようと思った時に何が必要か、何をしなければならないか―本書は、この「100万ドルの価値がある質問」に初めて真正面から答えを示した、アメリカのベストセラーである。
3つのことを考えないといけない。
1.「よその国、特に発展途上国にできること」は避ける
2.「コンピュータやロボットにできること」は避ける
3.「反復性のあること」も避ける。

著者のピンク氏は前書きにこう書いている。
・未来をリードするのは、何かを創造できる人や他人と共感できる人、パターン認識に優れた人、そして物事に意義を見出せる人である。

本書はそのための6つの重要な資質(デザイン、物語、調和、共感、遊び、生きがい)について考察し、様々な例を挙げて書いている。書いている内容はどれも面白く、ものによっては日々の仕事に取り入れられるものもあるかもしれない。
上記の「3つの避けること」に麻酔科医としての自分の仕事が当てはまらないか、また、そこから脱却するにはどうすればよいのかを考えるきっかけになった。
ASA PS1-2の患者の麻酔管理をマシーンのようにするだけの「麻酔屋さん」はそのうちにくいっぱぐれることは必至。いや、ぎりぎり私が現役のうちは何とか大丈夫かもしれない。だからと言って具合の悪い患者の麻酔が上手にできればいいかっていうのとも違う気がする。そもそも手術麻酔だけできればいいのか?臨床医として患者と1対1で向き合う麻酔科医であればそれだけで十分かもしれないのだが、それを目標にするだけでは不十分ではないか。100点満点の試験で60点を目指した対策できっかり60点を取るのは容易ではないのだ。

本文中に引用されていた文が印象的であった。
「遊びの逆は仕事ではない。抑鬱だ。遊びとは、自分の見通しが確実であると信じているかのように行動で表現し、意思を強く持ち、それに打ち込むことである。」(275頁)

回答は日々の仕事で模索し続けることになろうが、自分の麻酔科医としての目標の設定をどこにおけばよいかを再考するトリガーとなった書には違いない。

2010年5月16日日曜日

Training outside(其の三十一)。リーダーにも驚きだが・・・。

太陽や草木の匂いを感じながら走るのは非常に気持ちよい。
躑躅(つつじ)がきれいだった。

ランニング:47分41秒 9km(外) 計200.7km
筋トレ:なし
(2月 48km, 3月 56km, 4月 63.1km, 5月 33.6km)

4月5km 23分07秒
6月8km(あと28日)
7月10km(あと49日)
9月20km(あと126日)
***
5月初旬には新聞上で「政権はダメージコントロールに入っている」という1文を目にしたが、手術室でのダメージコントロールサージャリは以下のように定義されている。(Crit Care Clin 20 (2004) 101– 118)
Damage control surgery is defined as rapid termination of an operation after control of life-threatening bleeding and contamination followed by correction of physiologic abnormalities and definitive management.
命に関わるところだけを最小限の侵襲で手術し、後は状態がよくなってから再手術。本来「物理的な攻撃・衝撃を受けた際に、そのダメージや被害を必要最小限に留める事後の処置を指す」という軍事を中心に使われていた言葉だが、政治の世界にも使われるのかと僅かながら驚きをもって興味深く読ませてもらった。

時事通信社が実施した5月の世論調査で、首相支持率はついに20%を切った。それ自体は全く驚くことではない。驚いたのは普天間問題が5月内に決着しなかった場合の首相の進退についての世論が以下のようだったということ。
 49.2%が「責任を取って辞任すべきだ」
 42.0%が「辞任する必要はない」
なんと42%が首相は辞任する必要がないと考えているのだ。マスコミで連日報道されているほどには普天間問題に関心がない人間が大勢いるのかもしれないし、「解決できずに辞任することこそ無責任」と考えている非常に寛容な人が意外なほど多いからかも知れない。
不勉強かつ感情論から「沖縄の負担を軽減せよ」とか「沖縄の海を汚すことは自然に対する冒涜」と言い続けた挙句、結局は自ら掲げた「5月内の解決」を自ら破るような(それも1度した約束ならまだ分るが、何度も何度もした約束をだ)人間に国のリーダーを継続してもらいたい人が42%もいる。徳之島を訪れた官房長官は「徳之島空港の近くにある干潟を埋めて空港を拡張したい」と述べているようだが、干潟を埋めても自然に対する冒涜ではないようだ。閣内で意思疎通がはかられているわけではないから、リーダーと官房長官の意見は違っていてもおかしくない。リーダーには「これは私の公約であって党の公約ではない」という既に1度使った逃げ道があるし。「自然に対する冒涜」発現もリーダーの白昼夢におけるユートピア的発想から来るものか。白昼夢から覚めないリーダーでもいいという国民が半数弱もいる現状にこそ失望してしまう。

政権におけるダメージとはまさにリーダーが自分で自分の首を絞めて起こった致死的外傷である。その外傷に対して他の閣僚が擁護・弁解して治療にあたる光景はなんとも滑稽だ。

あれはどうなったのかな、東アジア共同体構想。
未だに核にかける予算が上昇を続け、軍事予算が国家の全予算の10%超を占め、わが国の領海領土に圧力をかけてくる海の向こうの大国と友愛の精神で、国家レベルで仲良くできると思っているのだろうか。

2010年5月15日土曜日

甲状腺機能亢進症の麻酔

未だクリーゼに遭遇したことはないが。以下メモ書き。

・治療が不十分な状態にある患者が手術を受けた場合には、稀だが甲状腺クリーゼが起こる可能性あり
・術前診察では症状と、甲状腺ホルモン値を必ず測定
・予定手術では原則的に値が正常化してから行う。余裕がなければ専門医にコンサルトし無機ヨード、βブロッカー投与下に手術も検討。ただしリスクを患者と家族に十分説明。

@症状
・甲状腺腫大、眼球突出、発汗過多、体温上昇、やせ、体重減少、動悸、Af、振戦、いらいら、易疲労感、下痢
・クリーゼの症状は・・・頻脈、高体温、うっ血性心不全、脱水、ショック、高血糖
※悪性高熱症(MH)の症状に非常に似ている
※クリーゼ発症で死亡率20-30%

@甲状腺クリーゼの治療
・まず疑うことから。特に未治療の甲状腺機能亢進症の既往や緊急手術時には注意。
・管理目標:心拍出量増加と末梢血管抵抗の減少→高心拍出量性心不全で心血管系予備能が小さい→交感神経を賦活しないようにする(アトロピンは頻脈を起こすので投与しない、エフェドリンやドパミンも。使うならフェニレフリン)
・ルゴール液(ヨードとして5-50mgを胃管から)=甲状腺ホルモンの放出抑制
・コルチゾール(300mgを静注)=T4からT3への変換を抑制、ステロイドカバーとしても機能(クリーゼのときは副腎機能が相対的に低下するようだ)
・プロプラノロール:1mgの静注を繰り返す。血圧に影響与えたくなければランジオロール持続でも。
(甲状腺ホルモンの心血管系への影響を遮断。心筋のβ受容体感受性が亢進しているので。)
・ジギタリス:心不全を改善し徐脈に
・輸液:体温上昇と脱水に対処 
・術中よりも術後6-18時間に起こりやすい。術後鎮痛十分に。
・NSAIDsは甲状腺ホルモン結合蛋白(TBP)から甲状腺ホルモンを遊離させ、FT3とFT4を増加させる
・麻酔は効きにくくなる。
・吸入麻酔はMAC上昇、propfolも必要量増加。BIS貼って対応。

Training in Rena(其の三十)、StatVeinを使ってみた

CABG+左室形成術の麻酔を担当した後、うとうとしていたら朝になってしまい、気がついたら病院で夜を越していた。当直でもないし、病院がすきと言うわけでもない。
***
ランニング:20分、3.0km(傾斜3.0で8.5k/h)
  筋トレを挟んで40分6.0km(傾斜3.0で9.0-10.0k/h) 計191.7km
(2月 48km, 3月 56km, 4月 63.1km, 5月 24.6km)
筋トレ:腹筋、腹斜筋、腸腰筋、広背筋
水泳:なし

4月5km 23分07秒
6月8km(あと29日)
7月10km(あと50日)
9月20km(あと127日)
***
1週間限定のデモでお借りしていたStatVein(テクノメディカ)を使ってみた。
穿刺前にのべ10人以上の上腕の静脈路をサーチしてみた印象では、か細い静脈をはっきり可視化してくれるが、太い静脈は却って見難いし、radial arteryは見えない、静脈の深さは分からない。静脈でない構造も静脈のように浮き上がって見える。と装置のインパクトと裏腹に長短多い製品の印象。これで90万円というのは、例えフリー麻酔科医になって麻酔導入前の始めの静脈路1本が取れなくて冷や汗をかき、看護師と外科医の冷たい視線を浴びることになったとしても、ポケットマネーではちょっと買えないなというのが正直なところであった。
などなどつらつらと思いながらも製品の長所を生かせたのが昨日の患者さん。普段なら目視でも触診でも細くて18G針で穿刺するのが躊躇われる細い血管に光(赤外線+可視光)を当ててみるときれいに浮き上がって見える。この血管に刺して駄目なら肺動脈カテーテルのシースを輸血ラインにしようか・・・と思っていたところ、一発でうまく入ってくれたので、非常に気持ちよく麻酔管理ができた。うーん、ニッチ産業というか新製品を作り出した労力に果てしなく敬虔な気持ちを抱いた1日であった。イノベイションで富を生み出すのは非常に難しい。上手くいくと是非病院に買ってもらえないかと思ってしまう現金な私がいた。
***
・枯れ木も山賑わい:つまらないものでも、ないよりはましであることのたとえ。
心身ともアップアップになってきたときに思い出す言葉として役に立つだろうか。

・心をよみがえらせる泉は自分の胸中から湧いてこねば、心身をよみがえらせることはできない。(ゲーテ「ファウスト」第1部568-9行)

気分が乗らないからといって歯を磨かない人はあまりいない。今日は走ったり筋トレしたりするには気が進まなかったが、「歯磨きトレーニング」をキーワードにしてトレーニングしている最近の私。結果的に走らなくても取り敢えず行くだけは行ってみようと思い、トレッドミルに乗ってみる。周りが走っているのをみると、取り敢えず走ってみたくなる。そうこうしているうちに気分がよくなるものである。やはりやる気は関係なく、やる気がなくても動いていることが大事なのか。

冠動脈狭窄に悩んだ秋田県人の叫びの1例

火曜日11日。
月1回お世話になる外勤の病院。居宅から片道100分以上かかる。最寄駅からタクシーを使えばもうちょい時間短縮できようが、小さい頃から「タクシーはお金持ちが乗るもの!」と洗脳されて育った私にはタクシーは容易には使うこと能わざる乗り物なのである。

その1:Duration of Dual Antiplatelet Therapy after Implantation of Drug-Eluting Stents NEJM 2010, Volume 362:1374-1382
これはクロピドグレル(日本で商品名はプラビックス)+バイアスピリン群とアスピリン単剤群で比べたときにDES患者の死亡率はどうなるのかを2701例で19ヶ月followした研究である。結果は2剤併用群でMI,脳卒中、全死因死亡の複合リスクが有意ではないがアスピリン単剤群より上昇した。というものであった。心筋梗塞や全死因死亡等の各々のリスクは両群間で有意差はない。

その2:血管外科患者対象のCARP trial(J Vasc Surg 2006, 43: 1175-82)やDECREASE-V Pilot Study(J Am Coll Cardiol. 2007;49(17):1763-9)では術前の予防的血行再建を行っても短期死亡リスクや心筋梗塞のリスクは変わらないとしているし、最近のスタディでは術前PCIが術後30日以内の死亡率をむしろ上昇させるというものもある。

何でこれらの論文を思い出したかというと外勤先での任務はかねてから予告されていた通り、泌尿器科の手術の中でも1、2を争う長さの大手術の麻酔管理である。しかも高血圧、糖尿病、冠動脈3枝病変、肺気腫の合併症あり。3枝病変に対しては何故か2ヶ月程前にステント治療がなされており、しかもご丁寧に上記2剤の抗血小板薬はストップされている。もちろんヘパリン化はされていない。1年は継続しなきゃまずいんじゃなかったっけ?あ、でも最近NEJMに出た韓国のスタディでは逆の結果だったような……。という流れでのことである。上記の論文は「プラビックスとバイアスピリン」か「アスピリン」だけか、で比較しているのであり、抗血小板薬をやめていいとは一言もいってくれていない。とにかく目の前の患者さんの薬は中止されているのである。

術中にステント再狭窄だけは勘弁願いたい。施設により求められる麻酔のゴールが異なるのはよく実感することだが、この手術における最悪のゴールは 出血→頻脈、PVC散発→VT、VF→死 である。私の前だけでは心臓よ止まってくれるな!と赤血球をポンピングしているときに流れていた曲
Pain of Salvation「Ending Theme」

この曲のコーラス部ばかりが頭に流れ「え~んでぃんしぃ~、え~んでぃんしぃ~」と、映画のスタッフロールを迎えるかのごとき満ち足りた気分になれる手術の終結を心待ちにしていた。10時間の麻酔を終えた後には爽やかな開放感があった。

エビデンスを臨床に還元するのは難しい・・・と開放感に満たされて帰りのバス停で久しぶりに聞いた曲
友川かずき-生きてるって言ってみろ

2010年5月10日月曜日

ライン確保や採血に関連した末梢神経傷害

・肘で採血するときは上腕動脈の内側で行うべきではない(正中神経が通過するため):肘正中皮静脈や橈側正中皮静脈が適する
・手関節から12cm以内もライン確保、採血時に要注意(橈骨神経の皮枝が絡まりあっているため)
・神経傷害の頻度:採血において6-7千人に1人、重篤な神経傷害は150万人に1人
・治療:1.アミトリプチン他100mg眠前から増量、2.ガバペンチン200mg眠前から増量、3.神経ブロック

神経傷害回避を意識した場合、ライン確保の第1選択は手背もしくは12cm以上離れた前腕橈側皮静脈ということになろうか。   
***
手術室の総監督(当科ではインチャージと呼んでいる。総監督というより麻酔科管理手術症例の入退室コーディネーターといった意味合いが強い?)をやらせてもらうのは非常に面白い。毎日だとぐったりする程疲れるが、時々やることで身が引き締まる。全症例を自分が担当する症例だと考えると勉強になることが多い。色んな麻酔科医の管理方法のよい所を見学できるのがよいところ。PHSが鳴りまくるのが悪いところ。普段は11時前には空腹を感じてくるが、インチャージの日は10時前にはお腹が空いてしょうがないこともしばしば。それ位緊張しているせいなのだろうか?
20人程の患者さんの手術リスクを判断し、それぞれの管理に大きな間違いが生じないように全体を俯瞰する力(或いは自分でそう思っているだけかもしれないが)というのは、1つの手術室に1日中こもって、1人の患者さんに向き合って麻酔を行うのと同じ位大事なことのように感じた1日だった。

仕事を頼まれるのは嬉しいことであり感謝すること。…の筈だが「どこまでが責任をもって自分にできることなのか」の境界を引くのも相手に迷惑をかけないために大事なこと。その仕事が自分にとってレベルアップの機会と思えることならば、人生の原則や目標にある程度沿っているには違いないから喜んでやるほうがよさそうだ。
愚痴っぽくなってくると周囲の人々への感謝の気持ちを忘れがちになる。「我以外皆我師」だ。明日も謙虚に麻酔を行いたい。もやもやと色々なことを考えるときは思考のための思考に陥らず、目の前のやるべきことに集中しよう。

2010年5月8日土曜日

麻酔と誤嚥 aspiration

敵を知り己を知りて尚、百戦怖ろし。
しかし敵を知らずには戦うことさえ儘ならず。

定義:咽頭から気管へ何らかの物質が流入すること
適切な絶飲食時間: 軽食やスナック類(6時間)、固形物(8時間) - 1999ASAガイドライン
発生頻度:1万回の麻酔につき1-7例。平均在院日数は21日、多くがICUに入室。平均死亡率は5%
リスク:高齢、緊急手術、手術の種類(食道、上腹部、緊急開腹術)、食事摂取後、食道疾患(強皮症、アカラシア、憩室、Zenker憩室)、基礎疾患(糖尿病、通過障害、食道裂孔ヘルニア、麻薬や抗コリン薬)、外傷、妊娠、痛み・ストレス、意識レベル低下、病的肥満、difficult airway、神経筋疾患
注意点:
どんな患者がリスクが高いかを認識することが最も重要
・H2ブロッカが麻酔導入時に効果得られるようにするためには導入2-3時間前に投与。
・difficult airwayの患者は自発呼吸を保ったまま意識下挿管。局麻を併用する場合には噴霧を声門より上の気道に限る
臨床像:
・pH2.5以下の液体:0.4ml/kg以上で直ちに肺胞毛細管が破綻。間質浮腫、肺胞内出血、無気肺が起こり誤嚥して数分以内に低酸素になる。数時間後にさらに悪化することも(白血球による炎症性反応。chemical pneumonia)。
・非酸性の液体:肺サーファクタントを破壊。肺胞虚脱、無気肺で低酸素。酸ほど重篤でない。
・固形物:物理的閉塞と異物への炎症。
症状:90%以上の例で発熱。70%に頻呼吸やラ音。40%に咳、チアノーゼ、喘鳴
・2時間後に症状なく酸素投与量が増えていなければ完全に回復するだろう
治療:全ての患者にXpと数時間の観察。対症療法(気管内吸引、人工換気)、グラム陰性菌や嫌気性菌を誤嚥した場合以外は抗生剤は必要ない。

<その他の知識>
・圧:大気圧を0とするとUESは100mmHg、食道は-5mmHg、LESは20mmHg、胃内圧10mmHg
・麻酔薬:
UESはケタミン以外の麻酔薬で低下
LES低下:吸麻、PRF、チオペンタール、麻薬、アトロピン
上昇:スキサメトニウム、パンクロニウム、制酸薬
・意識レベルと気道反射は必ずしも平行しない
・輪状軟骨圧迫は第5頚椎と甲状軟骨間で食道入口部の圧迫閉塞をもたらす。100mmHgの逆流圧に耐えうる。
・挿管完了したら必ず気管内吸引して誤嚥がないことを確認。
・胃や小腸以外の手術では抜管時にも要注意。充満胃と考える。しっかり覚ます

<参考文献>
麻酔科シークレット第2版、MEDSi
麻酔科学スタンダード2-臨床各論

Training in Rena(其の二十九)、インボディ測定

ランニング:23分、3.2km(傾斜5.0で 10.0k/h 10分 → 5.0k/h 5分 → 10.k/h 8分) 計182.7km

(2月 48km, 3月 56km, 4月 63.1km, 5月 15.6km)
筋トレ:腹筋、腹斜筋、腸腰筋、広背筋
水泳:なし

トレーニング開始から3ヶ月経過したので、諸々測定してもらった。当初立てた目標では3ヶ月で脂肪量3kg減、筋肉量1.0kg増だった。
今日の結果を見ると…脂肪量は1.9kg減、筋肉量0.5kg増。隠れ肥満を示してた体脂肪率も低下しており、標準の範囲内に入った。というように目標には到達しなかったが、少なくとも悪化はしていなかった。トレーニング通りに下肢の筋肉量は増えていたが、体幹の筋肉量は3ヶ月前とほぼ同量。今後はランニングを継続しつつしっかりと筋力トレーニングを続ける必要がある。筋肉を太くするより持久力をつけるためには30回程度繰り返せる負荷で2,3セット。週2回程度トレーニングをするのがよいということだ。
トレーニングはやった行為が結果として素直に出てくるのが面白い。また3ヵ月後に測定してもらうことにした。
 

2010年5月5日水曜日

Training in Rena(其の二十八), フォーム考

ランニング:29分、4.1km(傾斜6.0で 8.5k/h 15分 → 9.0k/h 10分 → 10.5k/h 3分) 計179.5km
 (2月 48km, 3月 56km, 4月 63.1km, 5月 12.4km)
筋トレ: なし 
水泳:なし

フォームはいいに越したことはないだろうから、いつでも思い出せるようにメモ書き。
走る時間がまとめて取れなくても、麻酔中の体の姿勢ですら練習につながる?かもしれない。
・前に進む以外の無駄な動きをしない
・重心は丹田(へその下の部分)にあるので、この重心部分を上手く前に運ぶフォームを心がける。左右にぶれたり、重心の上下動が激しいのはよくない。
・腰が引けていたり、背中が丸いのはよくない。そうならないように、常に身体の真下に着地することを心がける。
・上半身は力みすぎず、リラックス。
・体幹の筋肉を意識して鍛える。日常生活ではお尻と腹筋を意識する。また、猫背にならないように背筋を伸ばし、軽く胸を開く。
・これらを日頃の軽いジョギングで常に意識し、繰り返し実践する。
参考文献:3時間台で完走するマラソン―金哲彦、光文社新書

残念な人の思考法 ― 山崎将志


本書による「残念な人」の定義は「ちゃんと学校を出て、入社試験もクリア、役に立つ資格も持っている。そしてやる気も十分あり、夜遅くまで懸命に働いている。しかし、結果が出ない人」のことのようである。「結果が出ない ≒ 患者に対して当然避けうるべき合併症を起こす」の図式にすると、明日には私も残念な人に転落である。麻酔にはそのような落とし穴が無数にある。ドラゴンクエスト2の「ロンダルキアへの洞窟」など目じゃない(言い過ぎか)。
本書の読者は恐らくビジネスパーソンなので、全部を自分のいる環境に当てはめるのは無為不毛な作業だが、使える部分はたくさんある。それこそ「関心」があれば。

・一般的に、家族、趣味、夢は、仕事が上手くいってこそ得られるサブセット(p6)
・部下に仕事を頼むとき、受け手にとって少なくとも2割は創意工夫の余地があるように、できれば5割くらいは新しいスキルが身につくように依頼するのがマネジメントが留意するべき、人材育成と業績のバランスをとった仕事の頼み方(p10)
・一日が終わって「疲れた」状態になることを仕事が充実していると勘違いしてはいけない(p10)
・人生は下りのエスカレーターを逆送しているようなものだ、と考えることがある。ただ立っているだけではどんどん下に行ってしまう。普通に歩いてやっと現状維持。(p19)
・使えないシステムの陰に使えない人間がいる(p31)
・お金を持っていたら馬鹿馬鹿しくてやらないことは、やらなくていいこと。他人に対する仕返しのような行動は、自分の品格を損ねる結果になる(p133)
・転職して成功するためには、今成功していないとダメ。日本中いくら探しても自分にあう仕事なんか見つからない(p170)
・専門性を高めるのは確かに必要だが、それに固執すると後が厳しい。スキルだけで競っているといつか年下に負けるときが必ず来る。どこかのタイミングで、エンプロイアビリティ(雇用されうる能力)とは関係ないところを習得しなければならない。(p176-7)
・行動の変革を考えるにあたっては以下をなぞってみる(p204)
 ・具体的である
 ・測定可能である
 ・納得している
 ・実現可能である
 ・今やるべきことである、または期限がある
・「好き」の反対は「無関心」である(p205)

楽しい人生を過ごすためにはネガティブ思考よりプラス思考の方がよいと思うが、そういう二元論的なものの見方がそもそも問題かもしれない、とぼんやり考えた。素直な心が大事なのだ。
***
今日学んだこと
・できない約束はしない
・約束は適当にしない
・約束をした場合には期限を決める

Rhapsody of FireのThe Frozen Tears of Angels(2010)

今年はメタルの新譜の当たり年のようだ。

バンド8作目のアルバム。
このバンドの作品を聴くのは「Symphony of Enchanted Lands II: The Dark Secret」(2004)以来。恵比寿の駅近にある普段ならば足を踏み入れないようなちょっとお洒落な雰囲気のCDショップを覗いてみたら偶然発見したので、即購入。

CDの歌詞カード内にアルバムの世界地図が描かれるという徹底ぶりに衝撃を受けたデビュー作の「Legendary Tales」が1997年。現在まで既に13年経過。にも関わらず、本作で描かれる世界はデビュー当初から何ら変化していない。大仰であるが故に飽きられてもおかしくないこの種の音楽を表現し続けている。継続は力なりとは使い古された言葉だが、まさに彼らのためにあるようなもの。驚きを通り越して尊敬に値することである。映画のサウンドトラックになるかのような世界観からハリウッド・メタル、とかシネマ・スコア・メタルなどと称されるようになっているが、本作も「The Lord of the Rings」の世界であり、ドラゴンが空を舞い、勇者が剣で敵を薙ぎ倒していくロールプレイングゲームの世界を連想させるものでもあり、それは本作でも全く変わりない。俳優クリストファー・リーがナレーションをつとめる#1「Dark Frozen World」に導かれる#2「Sea of Fate」は普通の出来。#3「Crystal MoonLight」はコーラスが印象的な佳曲。単調ながらコーラスの畳みかけが圧倒的な破壊力をもち是非とも大音量で聴きたい#4「Reign of Terror」は本作の1つのハイライト。#6「Raging Starfire」や#8「On the way to Ainor」と疾走曲が多いのは非常に嬉しいところ。
 大大大傑作だった5作目「Power of the Dragonflame」には及ばないものの歌メロはよいしクオリティは高く丁寧な作りの作品。

2010年5月4日火曜日

Training in Rena(其の二十七)

5月初ランニング。

58分、8.3km(傾斜3で40分: 8.5k/h 30分 → 9.0k/h 10分、
 傾斜5.0で10分: 9.5k/h 5分 → 10.0k/h 5分
 傾斜3.0で8分: 12.0k/h 5分 → 6.0k/h 3分) 計175.4km
 (2月 48km, 3月 56km, 4月 63.1km, 5月 8.3km)
筋トレ: 腹筋、脊柱起立筋 
水泳:なし

2010年5月3日月曜日

長瀞日記

この日は電車、バス、舟、ロープウェイといろんな乗り物に乗った。

電車に乗ること延べ2時間30分ほど。西武線の西端までやってきた。途中の芦ヶ久保駅からは妙な存在感を放つ銅の仏像が拝める。芦ヶ久保大観音(埼玉県横瀬町、2000年建立、18.5m、倭座り)だそうだ。正座した観音は珍しいらしい。

終点まで乗る人が多いのかと思いきや、直前の横瀬駅で8割方の乗客が降車した。皆「芝桜」を鑑賞しに来たようであった。芝桜は美しいが、毎年見たいとは思わない。数年前に見た栃木県芳賀郡市貝町の芝ざくら公園での美しさが未だ鮮明なので、取り敢えず無視することにした。

この日の最高気温は25.5℃。
てくてくと宝登(ほど)山を登り、ロープウェイで山頂に着いた頃には汗ばむ陽気。ロープウェイはちょこっと人が並んでいたので待っている間に「2009年第5回埼玉B級ご当地グルメ王1位」というキャッチコピーで売っていた「みそポテト」を食べる。ふかしたジャガイモを天ぷらにし、甘みそをからめるというシンプルさがまさにB級だが、味は見た目から想像される通りであった。

ロープウェイは乗ったかと思うとあっという間に終点についてしまう。ロープウェー内でのナレーションでは宝登山と神社の由来を説明してくれた。「山麓の宝登山神社は西暦110年、今から1900年前、第12代景行天皇の時代に創立されたと伝えられている。皇子日本武尊が勅命によって東国平定の時、遥拝しようと山頂に向っている折、巨犬が出てきて道案内をしてくれた。その途中、東北方より猛火の燃えて来るのに出遇い、尊の進退はどうすることもできない状態になってしまった。その折巨犬は猛然と火中に跳入り火を消し止め、尊は無事頂上へ登り遥拝することができた。尊は巨犬に大いに感謝したところ、忽然と姿を消した。このことから「火止山」の名が起きたという。また巨犬は大山祇神の神犬であった事を知り、また防火守護のため火産霊神を拝し、その後山麓に社殿を建て三神を鎮祭し、これが宝登山神社の起源であると伝えられる。」

ロープウェイで山頂に上ると緑が美しい。しかし暑い。
くてくと歩くと小さな動物園があり、サルや鹿、豚、ウサギ、アライグマ、孔雀などがいる。豚は放し飼いにされておりあちこちで糞をしまくっている。動物園内も坂道が多く、陽に焼かれて徐々にぐったりしてくる。日頃のランニングが全く役に立っていない程の体たらくである。

ロープウェイを降りると荒川ライン下りに行く。全長10m、20名乗れる和船に船頭さん2人が4mほどの竿を操り丁寧に川を下っていく。陽は照っていたが、風と水飛沫、緑の匂いが非常に心地よい。川の両岸にある岩肌が美しい。瀞(とろ)の意味通りに川の流れは緩やかで、とてもゆったりとした落ち着いた心になれる。30分弱の乗船だったが、心身ともに涼むことができた。紅葉の頃に乗っても気持ちよさそうである。

2010年5月2日日曜日

Alice in Wonderlandは☆☆

目下大ヒット中の本作。
AVATOR上映時に本作の予告編を見て以来ずっと気になっていたので見に行くことに。せっかくなので3Dで上映している映画館を探して見に行った。考えてみると今年初の映画館での映画鑑賞である。

興行収入を低下させるようなネガティブな意見を言うのは非常に憚られるが、私が何を書いても映画は大ヒットするだろうから書く。
極彩色のワンダーランドを映像化したのは見事だが、私の感性にはまさに映像美しか響いてこなかった。好奇心旺盛な子供なら楽しめるのか、はたまた原作を深く知る人たちならばもっと楽しめるのか…。最後の最後まで映画の世界に入り込めない自分に落胆。肝心の3Dが上手く機能しているかと言われると、それも微妙。アリスが穴に落ちるときとチェシャ猫が出たり消えたりする場面以外には3Dであるありがたみがあまり感じられなかった。
楽しめなかった要因の1つは恐らくストーリー。原作の世界の13年後ということだからこれまで誰も描いたことのない世界の筈。109分の上映時間に合わせてシンプルさを追求した反動なのか、妙にご都合主義的な進行で一貫性がないように感じられた。その一貫性のなさもワンダーランドの話だからわざと狙ってやったことなのか。謎かけのような台詞の1つ1つも恐らく原作を知っている人には楽しめるものなのだろう。
数えてみるとシザーハンズ、エドウッド、スリーピーホロウ、チャーリーとチョコレート工場、コープスブライド、スウィーニートッド、と今回でティム・バートン監督作7本目の出演となるジョニーデップ(こうして挙げてみると全部見てるものだ)。今作は帽子屋を演じた彼より、赤の女王を演ずるヘレナ・ボナム=カーター(監督の奥様。猿の惑星、ビッグ・フィッシュ、コープスブライド、チャーリーとチョコレート工場、スウィーニー・トッドと今作で6本目の出演)が強烈過ぎる印象を残している。特に"Off with her head!"といろんな登場人物の首を何度もはねさせようとするシーンはそれぞれ破壊力があって非常によい。
振り返ってみると楽しめなかった1番の要因は原作を読んだことがない自分にある気がするが、芋虫のアブソラムをアラン・リックマンが、ジャバウォックの声をクリストファー・リーが演じていたことなどは嬉しい驚き。