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2010年7月31日土曜日

FD(faculty development)研修

実は一週間前から非常に憂鬱だった。今は無事に終わってほっとしている。ずっと続いていた咽頭部の圧迫感が漸くとれた。

というのも大学の教員研修があったからである。
研修内容は学生の教育体制のこの10年ほどの変遷、今後のカリキュラム内容の変更点、研究倫理やスキルスラボの説明などなど、多岐に渡っての座学がメイン。はっきり言って寝てようが内職してようがお構いなしに話は進んでいく。参加されていた他のDrたちの様子をちらちらと伺っていたのだが、論文を読む人、居眠りする人、まぁ推して知るべしと言った所。学生はよくもまぁ1日座って講義を受けられるものだ。講義内容に魅力や関心がなければ寝るのは教員であるDrも一緒なのだから、学生にあんまり強くいろいろ求めてはいけないのである。私は折角の休日の土曜日を潰して参加して悔しかったので、面白い話がないかと思い「聞く」のではなく「聴い」てみた(飽くまで集中力の続く限り)。
そんな中で唯一、参加者が能動的に参加するのが「micro teaching」。5人の小グループに分かれて1人5分のミニ講義をする→録画した講義の様子を自己評価する→評価者4人からのフィードバックを受ける、といういかにも欧米人が考えそうでかつ日本人が、否、私が苦手な演習である。これまで何度か看護師さんや研修医にレクチャーする機会はあったし、学会発表もしている。人前で話すのは慣れているといわないまでも経験を積んできたのだが、直接「評価される」のを目的としたプレゼンは初めて。だからこの1週間憂鬱だったのだ。あ〜仮病使って休めばよかった〜と講義を受けている間何度も思ったがお腹も痛くならないし鼻水も出てこないのである。
終わってみると、1番ためになったのがmicro teachingだった。自分の声のトーン、話すスピード、身振り手振り、聴衆へのアイコンタクトなど自分のプレゼンに対して勉強になった。それ以上に上手にフィードバックをするトレーニングをすることの難しさやトレーニングの必要性を実感できた。


・講義の形態は1000年変わっていない
・生き残るのは「環境に適応した動物」である
・明日の医療を創りたい!
・臨床実習前のCBTは320問を6時間。12000問のプールから出題。
・学生の指導は回診時の余談でもよい、学生は無視されることを忌み嫌う
・答えられない場合は答えを誘導する。答えられるレベルまで問題のレベルを落とす
・学生は時間延長した部分の講義は聞いていない
・講義はフローがはっきりしていることが大事
・パワーポイント:白の背景、1枚8行まで、色は3色程度まで
・問題:想起レベル、問題解釈、問題解決能力
・管子「ある男に魚を与えれば、その男は魚を一回だけ食べることができる。その男に魚の取り方を教えれば、残りの一生の間、魚を食べることができる」
・臨床実習の原則:最初にルール決める。現場ですぐに言わないと大変なことになることから教える。原則、基本を教える
・指導の禁止事項:プライドを傷つける、比較する、範囲を広げない、メンタルヘルスへの過剰介入
・成人学習理論(Andragogy)
 ・目標と必要性の開示を求める
 ・目の前に解決すべき問題があると意欲が高まる
 ・自分のペースを守ろうとする
 ・自己の経験に基づいて理解しようとする

<自分のプレゼンから学ぶこと>
・時間に対して分量が多い、もっと絞れば話すスピードがゆっくりにできる。Less is More
・イントロで「この話を聴こう」という動機付けはできていた
・身振り手振りは効果的であった(これは自分としては体をゆらゆら揺らしているように見えて気になったところだったので、意外だった)

<micro teachingから>
・フィードバック内容は要点を絞って伝える。よいところ→改善点の順に
・相手に受け入れてもらえるような環境をつくりだす
・身近な例え話を話の頭に持ってくるのはテクニックとして有用
・声のトーンで強弱つけて、強調できたらよさそう
・大事な点はスライドで書いてあっても、スピーチでも繰り返す。特に何度も繰り返して話すとよい
・情報に序列をしっかりつけると理解が進む

2010年7月28日水曜日

bicycle(其の五)

3ヶ月ぶりに自転車通勤。病院到着時に気づいたのだが、着脱式のライトがいつの間にかなくなっていた。恐らくどこかの段差で自転車が受けた衝撃で外れてしまったのだろうが、それにも気づかず走り続けていたことがちょっとショックである。
5本目往路:43分25秒(26℃, 5:34-6:17, 13.8km) 計69km

2010年7月27日火曜日

Training in Rena(其の五十参)、当直明けラン

スポーツクラブ内ではいつも音楽がかかっていないが、今日はなぜかLADY GAGAのPOKER FACEが流れていた。平日はあまり長い時間走れないので、傾斜を強くかけて心肺を機能を上げることを試みる。

ランニング:5.0km 34分(10km/hで傾斜3.0を5分、8.5km/hで傾斜10.0を5分、3分徒歩。繰り返し)計372.7km
筋トレ:腸腰筋、広背筋
(2月 48km, 3月 56km, 4月 63.1km, 5月 61.6km, 6月 63.8km, 7月 80.2km)

9月20km:田沢湖マラソン(あと54日)
12月21.095km:いたばしリバーサイドハーフマラソン(あと131日)
(2月 30km:青梅マラソン あと208日)

2010年7月25日日曜日

Training in Rena(其の五十弐)

ランニング:4.3km 31分(10km/hで傾斜3.0を5分、8-10km/hで傾斜10.0を5分、3分徒歩。繰り返し)計367.7km

(2月 48km, 3月 56km, 4月 63.1km, 5月 61.6km, 6月 63.8km, 7月 75.2km)

9月20km:田沢湖マラソン(あと56日)
12月21.095km:いたばしリバーサイドハーフマラソン(あと133日)
(2月 30km:青梅マラソン あと210日)

今日、練馬はついに猛暑日を脱した。6日間長かった・・・。

2010年7月24日土曜日

超音波ガイド下神経ブロックワークショップ

重要なメッセージ「意識が安全域をつくる」

・超音波ガイド下でも針先見えていないレジデントが43.7%いる ― Reg Anesthe Pain 2007; 32: 107
☆糖尿病患者では神経刺激のsensitivityが異なるので刺激装置の反応を過信しないよう注意
☆施行以前に神経支配領域の知覚・運動障害の有無を確認。しっかりカルテに残す
・神経損傷の可能性を常に意識
・基本的には抗凝固療法中にはやらない
・超音波画像は「実際の解剖を想像して」みる
・プローべを持つ手は患者や手術台等どこかに固定し、画像がぐらぐら揺れないようにする
・プローべはゆっくり動かす。ゆっくり過ぎるくらい

◎斜角筋間ブロック
・リニア、高い周波数10-15MHz, 深度2-3cm
・鎖骨上(鎖骨中点より少しだけ外側)にあて、上にずらしていく
・針は外側から刺す、刺入は脊椎に垂直方向には行わない―くも膜下穿刺や椎骨動脈穿刺の危険性
・カテ挿入時には針先端から3cm以内にする。硬膜外腔や胸膜内に迷入しないよう。薬液は0.15‐0.2%ロピバカイン4ml/h程度
☆神経障害発生率が他部位に比べて高い(2.83% ― Anesth Analg 2007; 104: 965)。神経外膜内に薬入れるときには注入抵抗が高いので要注意。最初の局麻の量は少量で。画像とparesthesia有無をしっかり確認する
・ブロックは覚醒下、もしくは軽い鎮静下で。全麻ではやらない ― Reg Anesth Pain Med 33:404,2008

◎腋窩アプローチ
☆神経分布は個人差が大きいのでプレスキャンをしっかりと
・患肢は90°外転、術者は頭側に立つ
・深度は3cmくらい
・プローべは大胸筋付着部外側。体軸に平行に
・腋窩動脈(以下A)は画面真ん中におく
・刺激装置は併用
・橈骨神経はAの下側から狙う。橈骨神経を正中・尺骨神経より先にブロックすると、腋窩動脈が画面下方向に沈み込まずやりやすい
・薬液はそれぞれの神経に7ml程度
・筋皮神経は上腕二頭筋と烏口腕筋の間。他の3神経より離れているので、針の角度を立てて狙う

◎大腿神経ブロック
・バリエーションが多い
・薬液は腸骨筋筋膜の下のコンパートメントに入れる
・プローべ位置は大腿動脈が分枝するちょっと中枢側。鼠径溝から1cm下くらい
・カテ入れる際は局麻注入後、交叉法で尾→頭側方向に。10-15cm程度。3 in 1になる。針糸固定せずテープ貼るだけでOK
・神経刺激装置併用時には薬液3ml注入程度で大体動き止まる
・刺激装置で0.5mAで反応あっても違うコンパートメントに入ることあり。超音波で確認
・持続の場合:0.15-0.2%ロピバカイン6ml/h

◎坐骨神経 膝上外側法
・深度4cm程度
・外側広筋と大腿二頭筋の間から刺入
・0.3%ロピバカイン20ml
・神経刺激0.2mAで反応あるのは危険。神経内かも。
・逆に神経刺激しても反応でないこともあり。その際は超音波で確認
・坐骨神経が分りにくければ足首を動かしてもらうと神経動く


これまで合併症に出会ったことがないのはブロックの施行回数が少なかったせいという理由だけかもしれない。神経障害は術後のQOLを著しく低下させるであろう事を想像すると、エコーで見えていれば安全と言うわけではないことを肝に銘じて日々の臨床に応用したいところ。

Training outside(其の五十壱)、早朝ラン2回目

33日ぶりに早朝ランを実施。2回目があるとは思わなかったが連日の猛暑。日中に屋外を走ったら死にかねない。6時半だったが既に太陽は高く昇り、アスファルトに照り付けていた。今日は練馬高野台あたりから豊島園近くまでを往復する新ルートを試してみたが、途中で環八通りにぶつかったため信号の待ち時間が長い。走行中に止まると心拍数が低下するため、再度もとの状態に戻すのはちょっと難儀である(それがまた負荷となるのでトレーニング効果はあるのだろうが)。道中、首からスタンプカードのようなものをぶら下げた子供たち何人かとすれ違った。恐らくラジオ体操(今もあるのだろうか)の帰りと思われ、世間は夏休みに入ったことを実感。

ランニング:7.4km 41分15秒(ほぼ平坦な道。およそ10.7km/h。27-30℃)  計363.4km

(2月 48km, 3月 56km, 4月 63.1km, 5月 61.6km, 6月 63.8km, 7月 70.9km)

9月20km:田沢湖マラソン(あと57日)
12月21.095km:いたばしリバーサイドハーフマラソン(あと134日)
(2月 30km:青梅マラソン あと211日)

2010年7月23日金曜日

第1回勉強会

1日インチャージとして仕事をした後、Y先生とレジデントの先生たちが中心となって開催された勉強会に参加させていただいた(右は引っ越したばかりの医局から見た御茶ノ水駅周辺。地上15階)。
毎日の朝カンファではどうしても時間が限られている上、発言しにくい(?発言しにくいと思わせているのはインチャージを務めることもある私にも責任の一端があるかも)。ということで、学会発表レベルではないけれども、自分が経験した印象に残る症例について簡単に提示してもらい、皆でああでもないこうでもないと自由に意見を言ってもらう。意見を言うことが大事。また、失敗を共有することも大事。失敗事例を自分が体験したかの如くにリアルに感じれば同じ過ちを繰り返さなくてすむ。私は皆さんの意見を聞いて、適宜方向付けするスタンスをとりつつ学ばせてもらえればと思う。みなさん、お疲れ様でした。
◎今日の症例
・硬膜外麻酔できない場合の開腹術の鎮痛
・巨大声帯ポリープ患者の麻酔法

2010年7月22日木曜日

Training in Rena(其の五十)、当直明けラン

ランニング:4.3km 33分(8km/hで傾斜3.0を10分、傾斜10.0を5分、5分徒歩。繰り返し)  計356.0km

(2月 48km, 3月 56km, 4月 63.1km, 5月 61.6km, 6月 63.8km, 7月 63.5km)

9月20km:田沢湖マラソン(あと59日)
12月21.095km:いたばしリバーサイドハーフマラソン(あと136日)
(2月 30km:青梅マラソン あと213日)

2010年7月21日水曜日

猛暑続く、久しぶりの手術室

梅雨明け4日目、練馬の猛暑日2日目、海の日の翌日に久しぶりに出勤した。仕事始めは1回/月程度のアウェーの外勤先に行ったのだが、目的の駅(居宅から1時間10分)の改札を通過してある重要なことに気づいた。
財布が鞄に入っていないのだ。
これから先必要となる「駅から病院までのバス代」と「病院からの復路のバス代」、「復路の電車賃」・・・。それらを考えるとぞっとしたが、幸いにしてPasmoに残っていたいくらかの残金で何とかなった。そもそもチャージ残高がなかったら駅から病院まで歩いていかなければならなかったわけで、この炎天下に片道1時間歩くとなるとぞっとする。しかも首尾よく病院にたどり着いたとしても身銭が無いから当然昼ご飯は買えない。手術の予定時間は6時間といわれている。金を借りればよいじゃないかと言われればそれまでだが、次にいつ行くか分からない病院の職場の人に金を借りたとしてもいつ返せるか分かったものではないし、誰かに渡して代わりに返してもらうのも、つまらないプライドの持ち主の私にはよっぽどの理由が無ければお断りである。もし借りたとしても昼食のために手術室を抜けることもままならない(手術中に自分が抜けている間に心室細動など起こるくらいなら私は昼食をとらない)ので、どちらにせよ意味がない。というわけで長袖を着なくてはならないほど冷え切った手術室の快適な環境で働ける自分の厚遇と、ICカードの恩恵と、水のおいしさに改めて感謝した1日であった。
そして今日。我が練馬区が37.6℃を記録した猛暑日3日目。これまた久しぶりに外来で20人弱ほどの患者さんの術前診察を担当したのだが、あまりにも久しぶりの感覚で何もかもが不安であった。患者さんの合併症の評価にしても「このくらいの状態ならまぁ大丈夫だろう」という感覚がすっぽり抜け落ちてしまっているのである。夏休み以前にはまるで呼吸をするかのように当たり前のようにできていたことができない感覚。普段いかに主観的な評価を行っていたかが身に沁み、またその主観的評価が体に沁み込んでいなかったかが分かった一日だった。「正しい主観的評価」(そんなものはおそらくないが、動物的な感で患者さんのリスクを正しく評価する能力とでも定義するならば)が体に沁み込んでいれば、すぐに以前の状態に戻る筈。丁度自動車の運転をひとたびマスターすれば久しぶりの運転でもすぐに元のようにできるように。まだまだ研鑽が必要ということを痛感できたというだけでも今日働いた甲斐があった・・・かな。

◎局所麻酔下、頚部手術に立ち会う際のメモ
・単なる生検の予定でも出血や気道閉塞を常に念頭においてモニタリング
・気管支ファイバー、経鼻挿管用の物品を手元に準備しておく
・入室時に再度気道評価:開口、頚部可動域、歯牙動揺
・画像:耳鼻科医が予め施行したファイバー所見、MRI等
・酸素マスク装着。ETCO2モニタも。
・覆布がかかった後、苦しい場合の合図等の確認。声が出せればそれでよいが、痛かったら足を動かす等の意思表示手段を患者と確認
・手術進行を注意深く見守る
・患者の恐怖感を煽らないよう、私語を慎む。適切な声かけをする

◎疑問
・硬膜外麻酔は冠攣縮に本当に悪影響を与えるのか

2010年7月19日月曜日

Training in Rena(其の四十九)

ランニング:17.0km 110分(傾斜0、9-10.5km/h)  計351.7km
(2月 48km, 3月 56km, 4月 63.1km, 5月 61.6km, 6月 63.8km, 7月 59.2km)

9月20km:田沢湖マラソン(あと62日)
12月21.095km:いたばしリバーサイドハーフマラソン(あと139日)
(2月 30km:青梅マラソン あと216日)

2010年7月18日日曜日

東京麻酔専門医会リフレッシャーコース(day 2)

◎産科麻酔関係
・産科麻酔診療ガイドライン Anesthesiology 2007; 107:843-63
・麻酔直前に気道評価が必要 Anesthesioloy 2008;108:357-
・27Gのペンシルポイント針だと頭痛0.1%
・HESは胎児に移行しない
・術後鎮痛オピオイドは脊椎内オピオイドは母乳に移行しにくく望ましい
・帝切中のECG上ST低下:硬麻38%、脊麻14%。
オキシトシン>メチルエルゴメトリンマレイン酸 の発生率は意外
・脊麻モルヒネ後の遅発性呼吸抑制は0.26%。ナロキソン投与は0.052%
・妊婦の心停止時:心停止中は子宮転位を維持する。母体心停止から4分以内に帝切開始すべき。
・超大量出血時にはセルセーバも考慮
・子宮内反症の緊急整復時:輸血ポンピングして血管内容量戻した後にニトロを50μgずつ静注。整復できたら子宮収縮薬を。整復できなければ開腹術。

◎大動脈手術
・解離+心タンポにうかつにカテコラミンを使わない。タンポを解除すれば血圧戻る
・急性B型解離の手術適応:瘤の拡大、切迫破裂(持続する疼痛)

◎心不全
・急性心不全の新しい病態把握法(clinical scenarios): Crit Care Med 2008; 36(sulll): S129-139
CS1 SBP>140:急激な肺水腫 → 血管拡張薬とNPPV
CS2 SBP 100-140:腎不全、全身性浮腫 → hANPや利尿剤
CS3 SBP <100:心臓が悪い → カテコラミンやPDEIを適切に
   CS4  ACS
   CS5  右心不全

◎ECTと麻酔
・アトロピンのルーチンな前投与はすすめられない。(欧州では禁忌)
・放電直後は副交感刺激で徐脈→大抵はアトロピン等で戻る。
・その後の痙攣で交感刺激 → 心筋虚血と不整脈(ECTの合併症は不整脈0.92%)
・痙攣は強直性痙攣10秒位→間代性痙攣数秒~1分 (48A80)
・呼気CO2↓で痙攣長くならない。normocapniaでよい
・視床の血流↑
・痙攣時間>25秒で効果あり、はおそらくエビデンスがない
・ChE低値だとSCC遷延。術前検査で注意。勿論カリウム値や脊損・熱傷の既往も
・三環系抗鬱薬とアトロピン併用でせん妄↑
・MAOIとカテコラミンで高血圧クリーゼ
・リチウムは術前は中止しないと麻酔薬が遷延する
・痙攣時間延長は・・・レミフェンタニル、アミノフィリン(ただしアミノフィリンはECTの禁忌)、βブロッカー。セボは??
・プロポフォール1mg/kgは術後の認知機能が低下する。
・サイマトロンは矩形波。サイン波より認知機能低下しにくい、らしい。
・チアミラール4mg/kg
・ランジオロール0.1mg/kgで頻脈抑えられる。徐脈にはならないようだ(提示されたstudyではPRF1.5mg/kgと併用)
・入室時にベンゾジアゼピン使用例にはフルマゼニル0.3-0.5mg静注。ただしECT後の興奮に要注意
・悪性症候群にSCCは使用可
・ペースメーカ者でもレート変更必要なし
・妊婦のECTではPRFで胎児の心拍数は低下する。チアミラールがよさそう

◎末梢神経ブロック
・rectus sheath block
・transverse abdominis plane block (TAP)
ともに浅いので全麻導入後施行でOK
・FNB
・obturator nerve block

***
昨日よりはマシとはいえ、今日も暑い。
私が住んでいる練馬は都心+2℃くらいある気がする。

ダニエル・ピンクの「モチベーション3.0」を読んでいたらもやもやしていた気分が晴れてくるような気がした。「生活維持に必要なレベル以上の報酬が保障されている仕事」においては内なる動機が何より重要なのだ。

2010年7月17日土曜日

Training outside (其の四十八)

夕方になり、やや涼しくなってきたところで負荷ラン。
ランニング:4.3km 20分24秒(平坦な道路。平均13km/h)  計334.7km
(2月 48km, 3月 56km, 4月 63.1km, 5月 61.6km, 6月 63.8km, 7月 42.2km)

9月20km:田沢湖マラソン(あと64日)
(2月 30km:青梅マラソン あと218日)

東京麻酔専門医会リフレッシャーコース(day 1)

朝から太陽が照りつけていた。会場に着くころには汗だくに。本リフレッシャーコースに参加するのは今年で3回目。百数十人いただろうか。この3回の中で1番参加者が多かったように感じた。3000円で2日間の講習。受動的態度でも知識のアップデートが出来る。自分からはなかなか勉強する気になれないようなあまり興味がない領域の知識も入るので非常に有意義な1日であった。改めて自分の不勉強を思い知らされる。

◎小児麻酔関係
レミフェンタニル(以下RF)について
・子供でもcontext sensitive half timeは3-6分
・小児での使用注意点
 ・投与時の死腔をできるだけ少なくする。体になるべく近いところから
 ☆逆流防止弁をつける
・皮切時に必要なRFの投与量は成人の2倍(Anesthe 2002; 97: 1142)
・アトロピンの前投与が心拍数の過剰な減少を予防する、ようだ。追加投与は多くの場合必要ない
・分布容量・クリアランスとも成人より大きく、十分な量を投与することが可能
・麻酔導入時にRF使用するときは、予め十分量の鎮静薬を。筋硬直予防に
・RFは容易に胎盤通過。速やかに再分布するため、代謝されるため新生児に臨床上の影響はなさそうである
・caudal additives in Children (BJA 2003)
  ・術後鎮痛の延長に仙骨硬膜外に麻薬追加。Morphine30μg/kg 効果10時間。呼吸抑制は30-40μg/kg以下では稀。フェンタニルは効果延長不確実なので使用しない

◎慢性疼痛に対するオピオイド
☆患者の選定が極めて重要。心因性の慢性疼痛症例には禁忌
・依存「脳の疾患であり、きっかけは自発的だが、一度依存に陥ると、薬物のコントロールは完全に破綻する。」 
・米国では・・・マリファナ、pain relieverが依存の主因
・レオンのゲーリー・オールドマン、ダークナイトのヒース・レジャー
・ドイツでは・・・慢性疼痛およびオピオイドの適切な知識や経験を持った医師がオピオイドを処方していれば、乱用・依存患者は稀。 Pain Pract 2006; 6: 254-64によると依存発症率は0.2%
・to cure sometimes, to relieve often, to comfort always
☆米国老年医学会JAGS 2009; 57: 1331-1346では鎮痛薬の第一選択がアセトアミノフェンで、NSAIDsに関しては最大限の注意を払って厳選された人のみ使用されるべきと勧告。
☆オピオイド常用者の麻酔注意: 導入時の誤嚥に要注意(消化管運動が抑制。術前絶飲食時間は長めがよいかもしれない)、RF使うなら多いほうがよさそう

◎局所麻酔の神経毒性
・心毒性:ブピバカイン>レボ=ロピバカイン>リドカイン
・神経毒性:リドカイン>テトラカイン>>ブピバカイン>レボブピバカイン>ロピバカイン
・アナフィラキシーはアミド型局麻では100万に1人と極めて稀
・エステル型は代謝物のパラアミノ安息香酸が化粧品添加物のメチルパラベンに似ているためアナフィラキシー起こしやすい
・痙攣発症時には・・・
 ・prf0.5-1.5mg/kg, MDZ 0.05-0.1mg/kg, ペンタール 1-2mg/kg
 ・ACLS
 ・イントラリピッド 1.5ml/kg (およそ100mlをdrip) → 0.25mg/kg/min 必要に応じて追加。最大8ml/kg
・1898世界初のコカインくも膜下麻酔(Bier) 
・1900日本初の脊麻(北川乙治郎、東良平)
・NaV1.5(心筋のナトリウムチャネル)はテトロドトキシンに抵抗性。ふぐ毒にはとりあえずmouth to mouthを
・脊髄くも膜下に局麻を過量投与すると神経毒性がおこる。
・root entry zoneのoligodendrocyteによるミエリン鞘が最も脆弱
・Naチャネル遮断は神経毒性には関与が少ない
☆神経障害を避けるためには以下を考慮
  ☆血管収縮薬は添加しない
  ☆投与量は最小限にする。リドカインは60mg以下。ブピバカイン、テトラカインは1A以下にする。(テトラカインは24mg投与で馬尾症候群の報告がある)
  ☆薬液注入前後で、髄液逆流が確実であるのに麻酔域の広がりが予想に反して仙髄、下部腰髄に限局している場合には脊麻のやり直しを避けるのが無難
  ☆砕石位は要注意。砕石位→root entry zoneの牽引→傷害増悪→TNS(transient neurologic symptoms)
・馬尾症候群の率:5/40640(Auroy Y, et al. 1997) 3/35439(Auroy Y, et al. 2002)3人ともtransient

◎迅速導入(スペリングはcrushではなくcrash)
☆挿管困難、換気困難が予想される場合にはそもそも禁忌といえる
・輪状軟骨圧迫はSellick法は頚部伸展位でやるのが、本来の方法。
・患者に意識がある内は約1kgで、入眠後は3kgで圧迫。圧は計量計などで測定して練習してみよう
・サクシニルコリン(SCC)は100mg投与で無呼吸平均4.5分。自発呼吸が戻るから、という理由で迅速導入に使用するのは合理的ではない。自発呼吸が戻るより低酸素になる方が早い
・SCCは血清コリンエステラーゼ値が低いと無呼吸が遷延する

2010年7月16日金曜日

Training outside (其の四十七) いよいよ梅雨明けか

午前中にもかかわらず30℃、湿度70%、ほぼ無風。
日焼け止めとキャップは欠かせない。

ランニング:8.9km 45分32秒(平坦な道路)  計330.4km
(2月 48km, 3月 56km, 4月 63.1km, 5月 61.6km, 6月 63.8km, 7月 37.9km)

7月10km:東和ロードレース
9月20km:田沢湖マラソン(あと65日)
(2月 30km:青梅マラソン あと219日)

***
「民意を問え」という言葉をよく政治家が口にするが、民意がどの程度この国の方向を正しく修正するのか甚だ疑問である。今回の参議院選挙の結果を見てそう感じた。昨年自民党に「No!」を激しく叩きつけた民意が、今回は民主党に「No!」を叩きつけた。それは前回選挙からのマニフェストの大幅な修正(前回のマニフェストが大嘘でした、という位の修正)や、消費税10%発言、その後の首相の発言のぶればかりを報道したマスコミに誘導された結果としての「民意」であるように思えてならない。今回の選挙では新党改革、たちあがれ日本、日本創新党など新党が多数立候補者を出しており、ぱっと見、国民目線からは「どれがなんだかよく分からない」状況であった。
 マニフェストをよく吟味して投票先を選択しようというのが多くのマスコミの論調であったが、多くの国民にはマニフェストの吟味よりも目の前のティッシュペーパーの値段や夏休みの旅行の計画の方が優先順位が高い。それぞれの党のマニフェストは新聞でもネットでも容易に得られる。個々の政策に対する各党の意見も自由に収集できる。しかしそれは「自分の一票を大事にしよう」と思って初めて起こされる行動であろう。だから「民主党がダメっぽいことをテレビで言っている。じゃあ民主党に投票するのはやめよう。でもどこに入れようか。何となく、みんなの党の評判がよさそうだから入れとこう」程度で一人一人が一票を投じているのではないだろうか。思考停止状態である。
 民意は当てにならないし流動的である。報道一つで容易に変化するし、結局他人事である。だからこそ去年民主党に入れた人が今回自民党やみんなの党に入れたりする。世論は政治家を批判するが、その政治家を選びこの国の大勢を決めているのは世論を形成する国民一人一人である。
 だからこそ個々の政治家の良識と、それを伝える報道の知や使命感が求められると考える。とは思うものの、これまで2000年何とかやってきたのが日本という国だから、これからも何とかやっていくのかも、と楽観的に考える自分もいる。

2010年7月15日木曜日

Trip to Wakayama (day 4) ~Nachi - Taiji to Tokyo

旅行も4日目。

那智大滝を体験した後宿泊した紀伊勝浦駅周辺から車で10数分走る。

アカデミー賞その他の賞をとってしまった噴飯物の問題ドキュメンタリー映画「The Cove」の舞台となった太地町(たいじちょう)にやってきた。
巨大鯨が町の入り口に飾られている。




クジラの尾を模した噴水。



反イルカ猟、反捕鯨と主張するのは構わないが、クジラを食して生きていること自体に何か問題があるのだろうか。SS等の団体がこの像(↓)を見たら、打ち壊したいに違いない。

くじらの博物館に行く。
イルカショーやクジラショーを見ることが出来る。しかも平日だったためか非常に空いている。我々の他に数家族しかいなかった。沖縄県にある某水族館の超満員のイルカショーより100倍楽しめた。どちらのショーもきちんとしたものだったが、特にクジラのショーはクジラを1mに満たないほどの間近に接近して見ることが出来、非常にパワフルであった。


館内には巨大なクジラの骨格が展示されている。


麻酔科医として気になるのは当然脊椎の構造。頚椎は7つ(クジラは萎縮し癒合している)、胸椎11、腰椎8。他にV字骨と尾骨がある。
中でもV字骨は大きく血管突起、血管孔の発達が良い。これはクジラ類の後肢が退化したために、後肢の部位にあった動脈が尾部に移動したことと、尾びれを上下に動かすために椎骨の周りに無数の靭帯が付着したことによってV字骨が陸生哺乳類よりも発達したものであるためだということだ(全て掲示された説明の受け売り)。クジラにも硬膜外腔はあるのだろうか。あるのだろう。

屋外には巨大なシロナガスクジラの全身骨格が展示してある。


くじらの博物館は建物自体の老朽化もあり、付き合い始めたばかりの恋人のデートコースとなりうるかどうかは微妙なところであるが、払った金額の何倍かは楽しめる今回の旅行の穴場スポットとなった。

その後に訪れたのは東牟婁郡串本町潮岬(しおのみさき)。本州最南端である。雨は降っていないが、非常に蒸し暑い。冷房の効いた車から出たくなくなる。潮岬灯台の周辺には、潮岬タワーという観光施設があるだけで後は芝が広がる。
潮岬灯台から太平洋を望む。
本州最南端は意外な程にさっぱりとした味わい。

そして帰路。南紀白浜空港。レストランと土産物屋しかない非常に小さな空港。本屋すらない。時間を潰すのは非常に困難である。この空港がなくなりませんように、と祈りながら東京にとぶ。

今日の走行距離メーター:84802-84968km(166km) /4日間の総走行距離:84466-84968(502km)
最後にガソリンを満タンにして返却したが給油量は18Lで済んだ。502kmも走って18Lだけの給油で済むのだとしたら燃費は27.8km/Lになる。プリウスは21km/L程度と発表されているがどうなっているのだろう。

2010年7月14日水曜日

Trip to Wakayama (day 3) ~Shirahama to Nachi Fall

5時半に目覚める。今日もすっきりと目が覚めない。
白浜から那智までは凡そ100km。車で2時間半程度。今回の旅行をこの日程にしたのは7月14日に那智の大滝で行われる「那智の火祭り」を体験するためである。

 高浜虚子(1874-1959)が詠んでいる。

 神にませば まこと美はし 那智の滝

那智大滝は直瀑としては日本一の落差といわれている(133m)。滝がある飛瀧(ひろう)神社は本殿がない。那智滝自体が御神体なのである。

例大祭は、熊野那智大社から御滝前の飛滝神社への年に1度の里帰りの様子を表したもの。火祭りは、12体の熊野の神々を御滝の姿を表した高さ6mの12体の扇神輿に移し、御本社より御滝へ渡御をなし、御滝の参道にて重さ50-60kg、12本の大松明で迎え、その炎で清める神事である。例大祭自体は10時から行われていたが、クライマックスとなる火祭りは14時頃。少し早くついたので、ぜんざいや黒糖ソフトクリームを食す。
ニュースによると7000人ほどの観光客がいたらしい。小雨降る中、巨大な松明を囲んだ熊野の森は異様な熱気に包まれていた。不快な湿気を思わず忘れてしまうような光景にしばし見入った。

火祭りが終わった17時前頃に再度訪れた、那智滝の近く。連日の大雨で水量が増していたためか滝は圧倒的な存在感でその場所にあった。滝を前にして神聖なものを感じたのは人生で初めて。こんな写真では全くその感動が伝わらないのが悔やまれる。  

滝を間近で体験した後、謀ったように土砂降りの雨が降ってきた。
 本日の走行距離メーター:84683-84802(計119km)

2010年7月13日火曜日

Trip to Wakayama (day 2) Mt Koya to Shirahama

やや汗ばんだ状態で4時に目を覚まし5時半に起床。窓を開けると少しひんやりとした風を感じる。6時から朝のお勤めがあるということで参加するために寺の本堂へ向かう。既に10人程集まっている。海外からの宿泊者もいる。私たちの後にもぞろぞろと集まり、計30人以上にはなっただろうか。胡坐(あぐら)や正座の姿勢を保持するのが難しい人のために椅子が何脚か用意されており、それに腰掛ける人もいた。薄暗い橙の蝋燭の炎が照らす空間。香の匂い。僧侶数人で読経40分。雨は降り続け、時折激しくなり経を読む声が時折遠く感じられる。読経が終わると法話を10分ほど聴く。この日は70名程宿泊しており、半分以上は海外からの客だそうだ。スペイン、ドイツ、フランスなど。ポーランドからは数十人の団体でやってきていた。その団体は前夜に大広間で大宴会を催していたらしい。写経をする部屋に向かう途中、その広間の脇を通過したときに非常に酒臭かったのを思い出した。
7時から朝食。9時前には宿を出る。
今日は30℃を越えない夏日。近畿南部は150ミリの降雨予報。
龍神温泉を通過して白浜を目指す。
国道371号(高野龍神スカイライン)を南下。出発時から雨が降り続ける。雨足が強くなったり弱くなったり。これだけならば予想範囲内なのだが、道は標高800-1300mの奈良と和歌山の県境。濃霧に悩まされ、どうしてもスピードを落とさざるを得ない。冬季は夜間通行止めになるのも頷ける。雨+凍結路面+濃霧ならば事故多発であろう。時折妻に携帯電話の電波確認をしてもらうが、ほぼ圏外。時折すれ違う車があることに安堵しつつも、事故発生時には多大な時間をロスするであろう事を考えながら慎重に運転する。写真は「ごまさんスカイタワー」近辺。護摩壇山(ごまだんざん)は和歌山最高峰であるとされてきたが、2000年に護摩壇山の東方約700mの峰「龍神岳」の方が10m高い(1382m)ことが確認されたそうだ。土産物屋の女性にはスカイタワーに上るならタワーの入場料を100円安くするよと言われたが、全く何も見えないであろうことから止めておいた。見えないことを確認するために上ってもよかったかもしれないが。

 その後も濃霧と格闘しつつ車を進めると田辺市に入り、奇絶峡(きぜつきょう)にたどり着く。不動滝(下の写真)では不動明王が祭られている。雨が多いためか滝の水量が豊富で非常に美しい景観であった。












三段壁(さんだんぺき)洞窟





三段壁から車で10分弱の場所にもう1つ有名な景勝地がある。

千畳敷(せんじょうじき)は第3紀層のやわらかい砂岩が波に長い間侵食されてできたもの。いくら岩がやわらかいとはいえ、岩に漢字をあちこちに彫っちゃまずかろうて。

今日の走行距離メーター:84559-84683km(124km)

2010年7月12日月曜日

Trip to Wakayama (day 1) ~Tokyo to Mt. Koya

<7月16-18日記載>

4時半起床。
羽田から関西国際空港まで1時間10分。10時前には関空に到着する。ここにくるのはケアンズ旅行からの帰国時以来。成田に向かうはずだった飛行機の現地出発が10時間遅れたため、成田ではなく26時の関空に到着したことが昨日のように思い出される。
これまた当時2度と来ないと思われた空港近くのローソンで傘を購入し、その隣りで愛想があまりない店員さんから車を借りて出発。外は小雨が降ってきていた。
泉佐野打田線を通って大阪府から和歌山県に入ると紀の川市を通過する。紀の川市出身の偉人といえば華岡青洲。ということを「高野山に入る前に昼食をどこで取ろうか」と調べていた旅行出発の2日前に初めて知った私。麻酔薬「通仙散」を20年かけて開発、それを使用して乳癌手術をした世界で最初の外科医。1804年(文化元年)10月13日(旧暦)のこと。医聖華岡青洲の展示と春林軒塾(住宅兼病院・医学校)の再現を見学。青洲生存中に千人以上の全国津々浦々の塾生が学んだらしい。しかも学んだ医術を口外すると破門されたということだ。学んだ医術を著書に残した本間玄調は破門されている。展示品の中に「私は治療によって不利益が生じても申し立てしません」という主旨の書類を発見する。華岡青洲の執念にも似た努力に触れた後、高野山に向かう。

順番からすると空海が開創(はじめて寺を開くこと)した壇上伽藍を先に見るべきなのかもしれないが、空海の入定(にゅうじょう。「定」とは心を集中させて瞑想状態にあること。真言宗では空海は亡くなったのではなく、即身成仏されたとしているのでこのような表現になるらしい)後に開かれた奥の院が気になっていたのでそちらに先に向かう。
奥の院は弘法大師空海の御廟所が最深部に構える巨大な霊場である。織田信長、明智光秀、加賀前田家などの墓やその他様々な企業の墓があり、樹齢数百年の杉木立の参道がおよそ2キロに渡って続く。周りから香が漂ってくる。小雨だがそれ程湿度は高くない。それどころか涼しい風が吹いてくる。小川のせせらぎが聞こえる。ここにきて「~~できますように」というような私自身の欲望を神仏に頼む気など失せてしまった。

続いて訪れた壇上伽藍は大師が最初に開いた聖地。根本大塔(こんぽんだいとう)の朱塗りが曇り空にもよく映えている。根本大塔内には巨大な大日如来像、金剛界四仏が安置されている。
敷地内にある西塔前の石燈籠は華岡青洲の寄進によるものだそうだ。

最後に金剛峯寺を訪れた。「金剛峯寺」という名称はもともと高野山一山の総称を示す言葉で、寺自体は豊臣秀吉が亡母の菩提のために1593年に建立し、1863年に再建されたもの。それ以前は青巖寺と呼ばれていたそうだ。今回の旅で初めて知った。
庭が見事で、石庭として我が国最大面積を誇る蟠龍庭(ばんりゅうてい)、狩野探幽らによる襖絵、秀吉に追放された秀次が自刃した柳の間など見所たくさんであった。1984年に新設された新別殿という大広間にいくと参拝客には茶が振る舞われる。畳の大部屋でのびのびと休憩ができる。偶然にも僧侶の法話を聴くことが出来た。「辛」いに一本棒が入ると「幸」せという漢字になる。独りよがりな辛い状態から手を出して回りの人と繋がることで幸せな状態になるんですよ、云々。

高野山に宿泊する人は宿坊に泊まることになる。宿坊といっても部屋にトイレと水道がない以外は殆ど和風の旅館と同じ。エアコンやテレビは置いてある。出される精進料理は普通に食べられるものであった。食後に写経を別室で行う。薄い灰色で書かれた般若心経の文字を上から筆ペンでなぞるというものであったが、渾身の集中力で心を込めて行う。これほど集中して文字を書いたのは久しぶり。普段使わない力と、普段触れないものに触れた満足感に包まれ寝る。

本日の走行距離メーター:84466-84559km(93km) 

2010年7月11日日曜日

Training in Rena(其の四十六)

ランニング:4.0km 25分(傾斜0-6.0. 8.0-12.0km/h)  計321.5km
(2月 48km, 3月 56km, 4月 63.1km, 5月 61.6km, 6月 63.8km, 7月 29.0km)
筋トレ:腹直筋、腹斜筋、広背筋

7月10km:東和ロードレース
9月20km:田沢湖マラソン(あと70日)
(2月 30km:青梅マラソン あと224日)

***
寝付けなかったので始発に乗って大学に調べ物をしに行き、帰ってきた足で参議院選挙の投票所に行った。7時少し過ぎたばかりだったが、20-30人は並んでいただろうか。
午後は新築賃貸マンションのオープンルーム見学に行った。引越しを検討している。いろいろな間取りの部屋を見て回った。間取りも専有面積も今のところより広い物件があったが、新しいという以外には特に胸躍る要素がなかった。池袋がより近くなるということを勘案しても、すぐ近くにコンビニがなかったり、スポーツジムがなかったりと、生活の便利さにおいては今いるところの方がよかろうという程度。

やるべきことが見えてくる研究者の仕事術 ― 島岡要 、 自分の強みを探す

ブログ「ハーバード大学医学部留学・独立日記」
http://harvardmedblog.blog90.fc2.com/
の管理人であり、麻酔科医である島岡要先生が2009年に出された本書は研究者向けの指南書という側面からも、「医師の自己啓発書」という点からも優れた著作である。自分自身のキャリア形成の参考になればと思い2009年に購入したが、時折本棚から出しては読んでいる。

・研究者として仕事をすべき10の原則
・中・長期的な時間管理術(p53には有名な「7つの法則」の「to doの4領域分類」も登場します)
・批判され/批判して自分を磨く「フィードバック力」
・変化に対する苦痛・恐怖を克服する

などの文字に興味を惹かれる人であれば、購入して読む価値がある本だと思う。

特によいと感じたのは第2章(その2)の「好きよりも得意にこだわる仕事術」の部分。
SBA(Strengths- based approach)仕事術という表現が出てくるが、「人は強みのある分野に最大の成長の可能性がある」という考え方がその根底にある。何でもそこそこな平均点レベルより誰にも負けない強みがあった方が仕事のパフォーマンスを圧倒的に高い、という理論は確かに合点のいくものである。
自分が好きなことと得意なことは必ずしも一致しない。「好きではなく得意にこだわれ」というのがメッセージである。趣味なら「好き」レベルでとどまっていてもよいが、仕事は相手ありき、成果ありきなのだから、好きだの嫌いだのは二の次である。パフォーマンスと結果が仕事の評価の大部分を占める以上、これは仕方ないことなのである。好き=得意なら最高だが、得意にこだわるうちにコンスタントにいい結果がだせるようになる自分およびその領域を「好き」になる可能性、そして更に誰も容易には到達し得ないレベルにまで上がる可能性は十分あるだろう。

・自分の専門領域の特殊を極めることを通して見えてくる普遍性を見抜く能力が必要
・プロフェッショナルが専門バカに陥らないようにするために大切なことは、専門領域以外の知識を深めることではなく、自分の専門を深める過程で普遍性を見失わないことなのです(ともにp37)

本書のもう1つ優れた点は参考文献に多数の自己啓発書をのせているところ。これらに当たれば更に、思考の幅が広がることと思う。

***
弱点を補強し続けるのは推奨されない。職業人として何でもそつなくこなすレベルは必要。だがそれ以上の技術を全ての領域で供給し続けるのは時間の制約から困難である。ここでいう弱点とは麻酔を習いたてのレジデントが「分離肺換気は苦手だから上手くならなくてもいいや」と諦めることでは勿論ない。プロの麻酔科医として、現在の臨床麻酔の水準から大きく下回ったものを提供するのは仕事をして賃金をもらう者としては論外である。イメージとしては70点(60点を「まぁ普通の管理だね」といわれるレベルと仮定した場合の話)をベースとして、1つの知識・技術において「~先生に聞けばいい」と思われる「強み」のある存在になることが近道かもしれない。

1つの仕事集団の中でも得意不得意は人それぞれである。強みの発見の手助けになるか不明ではあるが、本書でも参考文献に挙げられている

「さぁ才能に目覚めよう ― マーカス・バッキンガム」

という本は非常にユニークである。既に勝間和代氏の著書やブログ、その他様々なところで紹介されておりビジネスパーソンでの認知度は高いようである。本のカバー裏にIDが刻印されていて、それをウェブサイト上で入力すると「Strength Finder」が開始される(島岡先生の著書でもp41で紹介されている)。簡単な質問の繰り返しに答え続けると、34ある「自分の強み」のトップ5を教えてもらえる。
但し、使用済みのIDで2回以上のテストはできないので、中古本で買うとテストできない可能性があるので注意。

私が2009年初頭にテストした時の結果は以下の5項目であった。
1.内省
2.学習欲
3.調和性
4.慎重さ
5.達成欲 

活発性や社交性が私の強みのトップにくる筈もないが、結果は想像通りだったので結構信頼できるテストだと思う。内省が1位にくる人もあまりいなそうであるが。兎も角、占いを受けるより安くて正確な気がする。
ちなみにこのブログのタイトルは上位2位の自分の強みからとってみました。

2010年7月10日土曜日

スペル(Drag Me to Hell) ☆☆☆☆

原題「わたしを地獄に引き摺り降ろして」を地でいくホラー映画。
2009年公開99分
製作:$3000万  興行収入:$8284万

サム・ライミ監督が久しぶりに作ったホラー映画ということで以前から気になっていたが漸く視聴。
世間的にはサム・ライミ監督といえば「スパイダーマン」シリーズだろが、私の中ではスプラッター映画の名作「死霊のはらわた」(1981年)をつくったその人という特別な存在である。

ニコラスケイジの「マッチスティック・マン」でニコラスの娘役を演じていたアリソン・ローマンが主演の銀行員役を演じている。家の差し押さえ延長を嘆願しに来た老婆の依頼を断ってしまったがために、その老婆に不運にも呪いをかけられてしまう。その後3日間ポルターガイスト現象やら悪夢やらグロテスクな幻視やらと、あの手この手で悪霊の呪いを受け続けるために、除霊師とともに戦うことになるが・・・というストーリー。
21世紀にもなってまだこんな映画が存在するのか、というようなグロテスクシーンが要所要所を締めている。ここが本作がただのオカルト映画に終わらない点で、しっかりとホラー映画ファンを満足させる出来になっている。大量の蛆(うじ)や組成不明の液体等を使ったグロテスクシーンの見せ方がとてもえげつない(褒めている)。主演のアリソン・ローマンが清楚から狂気までしっかりと演技してくれているのもよい。予想通りのバッドエンディングが、またよい。
内容自体はナンセンスでくだらない(褒めている)。くだらないが筋が通ったストーリー。くだらないものを真面目に作るところに製作者の愛を感じる。悪霊が大暴れすることからして「21世紀版の死霊のはらわた」とでも言えようか。映画を見終えると総入れ歯の老婆の麻酔を担当するのが暫く怖くなる。が、幸いにして来週は夏休み。いい映画を観た。

Training in Rena(其の四十五)、漸く15km到達

1回に続けて走った最高距離を更新した。本格的に走り始めて5ヶ月ちょっと。消費エネルギーは1180kcal。コンビニの幕の内弁当1個分くらいのエネルギーを消費した。逆にいうと、走ってやせるのは結構大変。あの500円程度の弁当で摂取するエネルギーを消費するために90分も走らなきゃならないなんて。やはり食べないに限る。痩せる一番の近道は摂取カロリーを減らすことか。今日は外は真夏日。同じ距離を外で走ったら途中で具合悪くなっていたに違いない。しかし炎天下ランはいずれ通る道。今はまだやめておこうと思うへなちょこランナーであった。

ランニング:15.0km 92分(10kmまで傾斜3.0,以後 0.0。 9.0-13.0km/h)  計317.5km
(2月 48km, 3月 56km, 4月 63.1km, 5月 61.6km, 6月 63.8km, 7月 25.0km)

7月10km:東和ロードレース
9月20km:田沢湖マラソン(あと71日)
(2月 30km:青梅マラソン あと225日)

ハーフマラソンで2時間切れるだろうか。
自分の経験からは、ただの夢や願望に「到達するまでの期限」や「到達したい数字」の具体的な目標を入れることによって到達できないものはないと思う。まぁいずれ可能だろうと楽観的に考えてみる。

2010年7月9日金曜日

5分で「やる気」が出る賢者の言葉 ― 齋藤孝

いまどき珍しいのか?私は生まれて初めて「薪を背負った二宮金次郎の銅像」を自分の目で見た。(右は東和ロードレースの際に福島県二本松市で撮影。よく見ると蜘蛛の巣がはっている)

その二宮尊徳も登場する本書。このブログで何度も登場しているので既にお気づきだろうが、私は齋藤孝氏の著書の大ファンである。本書のサブタイトルには「プチ鬱から脱け出す33の技術」とあり、33人の歴史上の偉人のこんなとこが凄いというところからやる気をもらってしまおうとする本である。一編あたり数分で読めるので、ちょいと空いた時間にやる気を注入するには十分である。しかもたった756円で。プチ鬱が国民病のように蔓延する中において、このような書は貴重なのかもしれない。

・美しい「花」がある、「花」の美しさという様なものはない(小林秀雄 178)
・人を、その到達すべき目標にまで連れて行くことの出来るのは、ただ根本の力、即ち、気質だけである(セザンヌ 189)
・ふたたび回復できないならば おれはおまへをもう見ない なぜならおれは すこしぐらゐの仕事ができて そいつに腰をかけてるやうな そんな多数をいちばんいやにおもふのだ(宮沢賢治 216)

最近こんな本ばかり読んでいるのは勿論自分自身のモチベーションを維持するため。でなければ読む必要はない。本書に登場する偉人たちだって欝だった筈。

2010年7月8日木曜日

生き残る技術 ― 小西浩文

1ヶ月ぶりに肺外科の麻酔を担当したが気管支解剖の復習になり、とても有意義であった。
忘れないうちにまた暇を見つけて肺外科の手術室にお邪魔することにしよう。

***
「世界8000m峰全14座無酸素登頂」という、私には想像もつかないところを目指し活動中の著者。文字通りの「生き残る技術」について語っている。ビジネスの中で生き残れるかどうかという次元の話ではなく、本当に生きるか死ぬかの世界で生きている著者から語られる言葉だからこそ、語れるであろう言葉の数々であった。

<以下引用>
・「困難」には「好き」も「嫌い」もない(19)
・「限界」を超えるには、「夢」という目標は絶対に必要だが「執着」してはいけない。「集中」すべきなのである(24)
・人はたまたま生きている、周りにただ生かされているだけではないという思いが強くある。生きたい、生きているんだという心。「俺は生き抜くんだ」という気構えが生死を分ける(33)
・もちろん、たとえ一人でも生き抜いていくという強烈な覚悟は絶対に必要だ。ただ、それが強烈であればあるほど、自分自身を奮い立たせてきた極限状態だからこそ、「人は一人で生きていけない」という、普段は見過ごしがちな当たり前の価値に気付く。非常に尊く、まるでダイヤのようにキラキラと輝いてみえる(36)
・人生において決断・判断を下す際には、利害・損得・欲得をもってしてはいけない。特に重要な判断をする時ほど、「素直な心」(無心)で状況を判断し、自ら決断を下す。それが私の言う「直感」である(46)
・「誰かのため」という動機は、一見すると自分を奮い立たせるのにうってつけな気がするだろう。しかし、こんな気持ちは常に持っていなくてはいけない「当たり前」の心構えであって、苦しみや恐怖に打ち勝って限界を超えようという時に考えることではない。重要な判断・決断の時こそ、自分の内なる声に耳を傾けなくてはならない。限界を超えるのは誰のためでもない。困難を乗り越えて新たな成長を目指す「自分のため」ではないか(51)
・ギリギリの状況で限界を超えようというのなら、「ぶっつけ本番」ではなく、普段から自分の「我慢力」をのばす訓練をしておくべきだ(53)
・人間というのは死ぬまで成長できる生き物である。つまり、死ぬまで「オン」なのだ。だからこそ電車に乗っている時にも、歩いている時にも、腹の立つような嫌な取引先からお説教をされている時も、区分けすることなく、同じ「心」であるべきなのだ(56)
・いくら格好悪くても、周囲から馬鹿にされようとも、最後まで生き抜いた人間が勝利者であり、後世でも「成功者」だと評価される。あきらめるのは、万策尽きて死ぬ時だ(85)
・「後悔する」という欲求自体を抑えることはできないが、「後悔」の終わり方をコントロールすることが重要なのだ。どんなに後悔をしても、最後は楽天的に締めくくらなくてはいけない(91)
・反省は10分で終わらせても、敗因の分析には何時間、何日費やしてもかまわない(91)

引用終

本書を読んでいて思い出したのが、麻酔科医の仕事を飛行機の操縦に例えた話。麻酔導入と抜管を飛行機の離陸と着陸に例えた、医学生ならどこかで聞くであろうあのお話である。
麻酔が上手くいかなくても麻酔科医は死なない。フライトが上手くいかなければパイロットは乗客と共に死ぬ。この点において、恐らく麻酔科医とパイロットでは本気の度合いが違う。自分の命を賭して仕事をしているパイロットに対して随分失礼な例えだ。

2010年7月6日火曜日

第41回東和ロードレース(其の四十四)

7月4日
ランニング:10km-49分52秒(男子39歳以下 63位/185人)  計302.5km
(2月 48km, 3月 56km, 4月 63.1km, 5月 61.6km, 6月 63.8km, 7月 10.0km)

7月10km:東和ロードレース
9月20km:田沢湖マラソン(あと76日)
(2月 30km:青梅マラソン あと231日)

郡山から東北本線で下ること30分、小綺麗な二本松駅に着く。同じ目的で下車する人が大勢いる。走るためだけの目的で人が集まる。不思議な光景である。駅前からの送迎バスで更に20分。iPhoneをいじっていたら早くもバス酔いしそうに。
8時半頃大会会場入りし受付を済ませた頃には小雨がぱらついてきた。初めての雨天下マラソンになることを覚悟し始めたが、10時頃には雨は上がった。会場では梅干しや麦茶が振る舞われており、参加者はそれぞれ顔見知りの人達も多いようで、あちこちから「あれ〜ひさすぶりだこと〜はしるの?」と言った声が聞こえてくる。とてもアットホームな大会に、アウェー戦の私も心が和む。
地元の小中高校生らも参加している。走らない子供たちは父兄らとともにコース沿道にたち、冷たいスポンジや水を配ってくれる。ほぼ全線に渡り、声援が聞こえる。スタート直後には威勢よく太鼓の演奏も聞こえる。
スタートは10時半。曇っていて涼しい位。1番よい天候の下走り始める。

これは心機能の悪い患者(私)のOPCABの麻酔だ。開始早々「地獄坂」が待っている。いきなり回旋枝領域吻合のために脱転される心臓のようだ。復路では極楽坂になるんだろうが、それにしてもきつい。普段走っているトレッドミル換算にすると傾斜10.0以上はあるんじゃないか?坂を上っていると早くもくじけそうになる。往路5キロは上りだけかと思っていたが、同じ数だけ下りもある。これは行きも帰りも大変だ…マイペースマイペース完走完走と呪文を唱え続ける。追い抜かれてもマイペース。しんどい息遣いが隣から聞こえてきてもマイペース。下り坂でも自制しつつ歩を進める。上り坂のたびに脱転されて苦しいOPCAB中の心臓の光景を思い描く私。それと格闘する私。
コースに距離表示はない。危うく折り返し地点を無視して突き進むとこだった。予想に反して大分余力を残した状態で折り返せた。
5Km以降は一時的にイヤホンを取り出して耳に装着してみる。大会で音楽を聴きながら走ったことはなかったので、どのようなものなのか試してみたかったため。しかし普段の練習では全く気にならなかったイヤホンコードが邪魔で邪魔で、かつ、Cryptopsyの「Slit your guts」が全く走るテンポに合わなかった。結局数分でイヤホンを外す。
苦しかったのは5~7.5km間。「あと2.5キロだよ~」と応援されても嫌がらせのように感じてしまう私。それでも歩きたくない一心で走り続ける。足は疲れない。
論語物語の一節が頭の中でぐるぐる回る。

本当に力があるかないかは、努力してみた上でなければわかるものではない。力のない者は中途で斃(たお)れる。斃れてはじめて力の足りなかったことが証明されるのじゃ。斃れもしないうちから、自分の力の足りないことを予定するのは、天に対する冒涜じゃ。なにが悪だといっても、まだ試してもみない自分の力を否定するほどの悪はない。それは生命そのものの否定を意味するからじゃ

マイペースを維持し続けゴールが遠くに見えてきたところで、余力を全て振り絞り全力疾走。何人か抜かせてもらった。走り終えると目標だった50分をきることができた。

参加賞のTシャツ裏には「地獄坂」の文字。坂を何度も上ったり下ったり。完走できたことで自信がついた気がする。走り終えると、あんなに苦しかったのにもっと練習してハーフのコースに出てみたいと思う自分がいた。

今夏初のイチゴのかき氷は氷片が大きくてジャリジャリしてたが至福の美味さだった。

大会主催者、全ての大会関係者の方々に感謝したい。コースは辛いがまた出てみたいと思える温かい大会だった。

2010年7月3日土曜日

郡山でDIR EN GREYのUROBOLOS(DVD)に思う

自分の足で走るために新幹線に乗り、1泊しに郡山までやってきた。
自分独りでは「疲れたから途中でやめよう」としてしまう走るという行為を、ロードレースという決められた距離と時間の枠に嵌め込む事によってやり遂げたいからかもしれない。

***
郡山で炭水化物を大量に摂取しながら、ライブDVDを見ている。
イギリスのロック雑誌「Kerrang!」の表紙も飾るほど海外での人気も評価も高いDIR EN GREY が2010年1月に日本武道館で行ったライブ―その2日間を収めた「UROBOLOS」である。
ビジュアル系バンドの枠で括られていた頃の曲と最近の楽曲を聴き比べると「本当に同じバンド?」と思う位の進化、深化を遂げていることに気づく。アニメ版「浦安鉄筋家族」の主題歌だった「I'll」を歌っていた頃は「黒夢」を意識していたであろうが、ここまで変わるものか。昔の楽曲にみられた歌謡曲ばりのクサい歌メロは「CONCEIVED SORROW」に代表される絶望系バラード曲や「RED SOIL」の曲の中に垣間見られ相変わらず健在ではあるが、楽器隊の演奏力、ヴォーカルの京の表現の幅が格段に上昇しており、1曲1曲の完成度が異様に高い。1曲1曲に表情があり、音そのものに物語がある。歌詞、にではなく音そのものに、だ。ヴォーカルの成長は本当に感動的で、曲の中でのグロウル(デス声で低音の塊のような声を出す歌い方)の使い方が本当に上手い。と思えばCradle of FilthのDaniのような金切り声での高音シャウトもマジである。バンド史上最高にプログレッシブな「Vinushka」は現在一番気に入っている曲。歌謡曲の哀愁と、デスメタルの衝動と、ブラックメタルの狂気が全て入ったまさに「全部いり」な9分超の名曲である。

***
慣れない産科麻酔の、慣れない英語論文作成を本格的に再開しはじめた。なぜか。得られるであろう達成感のためにであろう。

佐藤可士和のクリエイティブシンキング ― 佐藤可士和

キリンチビレモンやふじようちえん、ユニクロのグローバルブランドデザインなどの仕事を牽引した経歴をもつ、一流アートディレクターの著作。
普段の仕事をルーチンワーク化せずに、そこから新しい発見や楽しみを見つけるヒントを得られるかもしれないと思い、手にとってみた。

・悩み事は書き出してみる(30)
・全く別々の事象を的確につなげることは、モノの本質をつかむ絶好のトレーニングになる(35)
・抽象的なものをなるべく具体的なものに置き換えて話す(36)
・相手から共感を得るためには、まず自分自身がプレゼン内容にリアリティを持てるかどうかが、最大のポイントになるのではないでしょうか(57)
・プレゼンテーションの場がどんなに大人数だったとしても、基本的には個人個人に語りかけるつもりで話すように(61)
・プライベートでの感覚は世間とずれていなくても、仕事になった途端、ついつい会社の都合や業界の慣習で考えてしまいがちな方も多いのではないでしょうか。お茶の間目線とお客様目線、この似て非なる視点を理解するには、ビジネスシーンにおいても、生活者のリアリティをどれだけ持ち続けれられるかにかかっています(81)
・仕事を他人事でなく、自分事にさせる(101)
・休暇中も仕事をするという意味ではなく、意識をフレキシブルにしておき、いつでもリンク先に飛べるような状態でいると、オンとオフが互いにうまく補完し合うような形で相乗効果を生むのではないでしょうか(148)
・一度にあれもこれもと浅く広く手を伸ばすのではなく、ひとつのことにフォーカスして入り込むことが大切だと思います。深く入り込めば入り込むほど、いつか突き抜ける瞬間があり、その先の本質的な部分に行き着けると、得るものは非常に大きいはずです(160)

・気づいていなければ、それは見えていない事と同じであり、見えていないものを理解することなど到底不可能なのです(あとがき169)

アートディレクターも地道な努力の積み重ねで一流の仕事をしている。気づき、興味、他への想像力や関心、リアリティ、一点突破。分野が変わってもトップランナーが考えていることは似ている気がした。
 がむしゃらな努力 → 成果 ではなく、正しい努力 → 成果
梯子をかける場所を間違ってりゃ頂に到達できないのだ。

2010年7月2日金曜日

2010下半期

当直開けの夕方。知的興奮が得られることを期待して麻酔科と外科系各科が手術と麻酔について相談する「重症カンファランス」に出席してみた。このカンファ、当院では毎週1回行っている。1例も症例提示がない週もあるが、商売繁盛1時間以上カンファが続くこともある。今日はどちらかというと繁盛した方である。

流石に各科の先生方が提示する症例は一癖二癖三癖あるような困った重症合併症をお持ちの患者さんばかり。あっという間におなかいっぱいになってしまった。特に間質性肺炎(最近1度急性増悪した疑い。HOT導入中)がある患者さんの大腸手術。CSEA(combined spinal and epidural anesthesia)でやりたいが、ITPと肝機能障害で血小板が数万しかない。さぁどうします?

今日は大学院入試問題の過去問を収集してみた。