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2010年8月31日火曜日

医療事故関連メモ(今更だけど)

麻酔科に関連した箇所の引用、まとめ。
参考文献は「ルポ医療事故 出河雅彦 朝日新書(2009)」よく取材されて書かれている。

東京慈恵会医科大学青戸病院腹腔鏡下手術事故(p127-160)
・本事案において、麻酔科指導医は業務上過失致死容疑で書類送検されている
@麻酔体制の不備
 ・麻酔を直接担当していたのは泌尿器科の研修医。
 ・麻酔指導医は他の5件の手術と併せて6件の麻酔指導を行っていた。
 ・本手術では早期に輸血できたならば重大な事態にならなかった可能性が高い。
 ・適切なリーダーシップを発揮して早期に安全な術式に変更させておれば重大な事態にならなかったと思われる。(・・・実際の現場では麻酔科医が術式変更の提言をするのは非常に難しい)
@手術チーム内や手術チームと輸血部等とのコミュニケーションの不足
 ・術者と麻酔医とのコミュニケーションの不足
 ・手術チームと病院輸血部とのコミュニケーションの不足

・弁護側は、麻酔科指導医の過失こそが患者の死を招いた、という主張を展開した
その主な根拠
・あらかじめ用意された赤血球濃厚液4単位を輸血した後も貧血状態が改善しないこと
・病院自体に血液の在庫がなくなったこと、血液センターに追加発注しても1時間かかるという情報を入手しながら、40分間も輸血オーダーをせず放置した
・患者が生命の危険にさらされていることを術者に伝えなかったこと
これに対する判決
「極めて不適切であり、麻酔科医として過失があったというほかない」
・出血管理が麻酔科医のみの責任でないことは明らか、として弁護側の主張は退けた
「患者の全身管理を第1次的に担っている麻酔科医が、全身状態の把握に必要な情報を被告人らにほとんど伝えることをしていなかったことが、被告人らにおいて被害者の全身状態に思いを到らせないまま手術を続行させ、大量出血により被害者を死に至らしめた大きな要因となっている」

やはり、外科医が誰であれ、手術経過がどうであれ、麻酔科医としてやるべきことは全て躊躇せずやらないと第3者からは厳しく断罪されるのだ。忘れないようにしよ。