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2010年12月26日日曜日

(本) KAGEROU ― 齋藤智裕

Amazonのレヴューで大炎上していたので、逆に興味をもって読んでみました。

話の内容はファンタジーです。作中の人物はどこかで聞いたような一般論としての「世界や人生の不条理」に対して批判的なことを随所で語ります。辟易する人には辟易する描写かもしれません。また例え(~のように)の表現も多く、文章が逐一しつこく感じられる、というのも一理あります。
これがプロ(ここでは、私がこのブログに書いているような、無料の玉石混交~主に石~の情報の垂れ流しではなく、それを発表することで生計が成り立つだけの収入が得られるかどうか、を取りあえずの「プロ」と定義します)の作品かどうかと言われると微妙ではあります。

ですが。
最後のページまでページをめくり続けさせる力があったという点においては、私は本書を評価したいと思います。つまらないお話であれば、最後のページまで読めません。もっとも私の評価などどうでもよいでしょうけれど。10000文字(原稿用紙25枚程度)の論文ですら、書き上げるのに数ヶ月かかる私には、このように商業ベースに乗せられる作品を、大きな破綻なく書き上げることだけで尊敬に値します。(破綻してるって。という批判をする人は、作品に対する愛が足りない人です。医師として読むと一般常識的には破綻だらけですが、小説が事実の羅列であれば、私は読みたくありません。手回しの人工心臓のくだりとかその他色々突っ込みどころがあって楽しめます)。
「著者が容姿の優れた俳優という肩書きがあったからとれた賞なんじゃないか」とか、「大賞を取って2000万円の賞金に値する価値があるのか」とか。そういう批判だったらいくらでもできます。他に批判する対象は、いまの世の中いくらでもあるような気がします。

適切なブラッシュアップによってさらによい作品が生み出されることを、私はひそかに期待したいと思います。