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2011年12月31日土曜日

(映) 最近みた7本分

暇を見計らって、気になっていた映画を色々見てみた。

***
「バーレスク」(Burlesque, 2010年)
クリスティーナ・アギレラが歌って踊る映画。ストーリーはこじんまりとしているが、私的には歌って踊っていればそれで結構楽しめた。もう1回見るか、って言われると…大スクリーンでならもう一度見てみたい。

「ブレードランナー」(Blade ruuner, 1982年)
むかしむかし見た映画。確か16歳頃。SF映画の金字塔と言われていたこと、ハリソン・フォードが好きだったこと。そんな理由でみた気がする。途中で寝た。寝ては起き寝ては起き、最後まで何とかみた。覚えていたシーンは雨がよく降る2019年のロサンゼルス、太陽が見えず暗い、ハリソン・フォードが何かの食べ物を4つ頼むシーン。そんな記憶しかない。

だから、レプリカントのロイ(ルトガー・ハウアー)による名台詞なんて全く忘れていた。
I've seen things you people wouldn't believe.
Attack ships on fire off the shoulder of Orion.
I've watched c-beams glitter in the dark near the Tannhäuser Gate.
All those ... moments will be lost in time, like tears...in rain.
Time to die… 
(こんなことしてません? から引用させていただきました)
この映画は多分、このシーンを見るためにあるんだろう。
今回は、昔ほどはつまらなく感じなかったけど、やはりそれ程は楽しめなかった。もう20年後くらいに見れば、また違った感想をえるのだろうけど。

「アンチクライスト」(Antichrist, 2009年)
内容がよくわからないのは、私がキリスト教にコミットしていないためだろうか…と思ったのだが、Lars von Trier監督のインタヴュー記事(Rotten Tomatoes掲載)によれば
It's not really a horror film and it's not really religious.
とある。いずれにせよ、劇中に使われる曲「私を泣かせてください(Lascia Ch'io Pianga) - オペラ『リナルド』(ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル作曲)」の曲名とメロディが自分の中で一致した。映画の内容は賛否両論のようだけど、痛いの(足に手動ドリルで穴開けたり)嫌いな人は見ないほうがいいと思う。娯楽目的の映画ではないですな。

「第9地区」(District 9, 2009年)
ずっと気になっていたけど、漸くみた。こんな内容だったのか。本当に凄い。凄い映画。自由な想像力で、怖くてふざけていて悲しくて残酷で楽しくてワクワクしてあったまる。そんな映画。この映画も大スクリーンで見たい。

「ノルウェイの森」(2010年)
村上春樹の小説に出てくる曲は、いつも殆ど知らない曲であり、これまで聴いてもあまりピンと来ない曲ばかりであった。
エンディングクレジットには
・The Doors - Indian Summer
・Can - Don't Turn the Light on, Leave Me Alone、Mary, Mary So Contrary
・Can - Bring Me Coffee or Tea、She brings the rain、Deadlock
・Reynaldo Hahn, Paul Verlaine - L'Heure exquise
なんかが挙げられていたけど、1時間10分頃流れるVan Morrison(?)の曲が1番よかった。内容は結構好き。原作を読んだ人、読んでない人いるでしょうが、私は途中まで読んで放り出していた人間。

「神々と男たち」(Des hommes et des dieux, 仏, 2010年)
アルジェリアのカトリック修道士たちの1996年を舞台にした話。過激派の武装集団たちの襲撃が身近に迫ってきたところで、村を捨ててフランスに帰るか、とどまるか、修道士たちが苦悩する。娯楽性は希薄。劇後半のチャイコフスキー「白鳥の湖」の物語と修道士たちの運命を重ね合わせる演出がよい。

「シャッターアイランド」(Shutter Island, 2010年)
マーラーにピアノ四重奏曲イ短調があったのか。後でチェックしよう。肝心の映画の方は…結構序盤でエンディングが予想できてしまった。私で予想がつくのだから、恐らく皆さん予想できちゃったんじゃなかろうか。それでもエンディングを見ると…まぁちょっと複雑な気分ではある。それなりに楽しめた。

***
ということで「第9地区」と「神々と男たち」が面白かったな。

2011年12月30日金曜日

(音) 2011年に聴いた音楽のまとめというか羅列というか

以下の曲を作ってくださった方々、またそれを広めてくださった方々、または下のバンドのファンの方々、それらの方々全てに感謝したいと思います。
@2011年に聴いてよかった曲.ベストアルバムスに入ってる曲もありますが。
曲名/バンド名 (収録されてるアルバム名、発表年、国)の順。記載ミスがあってもご容赦下さい
1. Pramen, co vi / Silent Stream of Godless Elegy (Navaz, 2011, Czech): 世界遺産級バラード
2. DIABOLOS / DIR EN GREY (DUM SPIRO SPERO, 2011, Japan):全く飽きない9分52秒
3. Different Sense / DIR EN GREY ((DUM SPIRO SPERO, 2011, Japan):ギターソロが好き
4. The Violation / Fleshgod Apocalypse (Agony, 2011, Italy): 衝撃度ナンバーワンの黒塗りシンフォデス
5. Half Past Loneliness / Royal Hunt (Show Me How to Live, 2011, Denmark): 歌謡メタル
6. A New Dawn / IN FLAMES (Sounds of A Playground Fading, 2011, Sweden):解放感
7. Heretic / Symphony X (Iconoclast, 2011, US): メロディアス過ぎないネオクラシカルパワーメタル
8. Judicial Noir / Versailles (Holy Grail, 2011, Japan):メロディアス過ぎるネオクラシカルパワーメタル
9. Sangreal / Septic Flesh (Communion, 2008, Greece):ハミングブラックメタル 
10. Open Face Surgery / Cryptopsy (Blasphemy Made Flesh, 1994, Canada):息継ぎなしの28秒咆哮
11. 私は風 / カルメン・マキ&OZ (カルメン・マキ&OZ, 1975, Japan):ハードロックいいとこ取り
12. 崖の上のポニョ / Imaginary Flying Machines (Princess Ghibli, 2011, Japan et al.):国宝級カヴァー
13. El Enigma de la Vida [Acoustic Version] / Sirenia (The Enigma of Life, 2011, Norway): ゴシックメタルバラードの名曲
14. 夜な夜な夜な / 倉橋ヨエコ (婦人用, 2002, Japan)
15. 希望山脈 / 渡り廊下走り隊7 (2011, Japan):
16. 薔薇獄乙女 / ALI PROJECT (薔薇架刑, 2006, Japan)

@2011年に聴いた中でのベスト・アルバムス。聴いた回数の多い順ということにしてみました
1. The Great Mass / Septicflesh (2011年, Greece, 8th):断トツ。聴きやすいホラー映画サントラみたいな
2. DUM SPIRO SPERO / DIR EN GREY (2011年, 日本, 8th)
3. The Apostasy / Behemoth (2007年, Poland, 8th): 聴きやすい荘厳デスメタル
4. Agony / Fleshgod Apocalypse (2011年, Italy, 2nd): 聴きやすいシンフォニックデスメタル
5. Holy Grail / Versailles (2011年, 日本, 3rd(majorでは2nd)): 聴きやすいシンフォニックスピードメタル
6. Imaginaerum / Nightwish (2011年, Finland, 7th): 聴きやすいSFファンタジー映画サントラみたいな
7. The Powerless Rise / AS I LAY DYING (2010年, US, 5th): 聴きやすいメロディックデスメタル
8. Silencer / Death - Pierce Me (2001年, Sweden, 1st): 聴きやすい…?自殺系ブラックメタル
9. Wound wide Open / TO/DIE/FOR (2006年, Finland, 5th ): 聴きやすいゴシックメタル
10. 廊下は走るな! / 渡り廊下走り隊 (2010年, 1st): 聴きやすいJ-POP。「完璧ぐ~のね」とか凄い
11. Jaguar Hard Pain / The Yellow Monkey (1994年, 3rd): 聴きやすいロック。「薔薇娼婦麗奈」とか「Red Light」とか
12. Southern Storm / Krisiun (2008年, Brazil, 7th): 聴きやすいデスメタル
13. Christ 0 / Vanden Plas (2006年, German, 5th):聴きやすいプログレッシブメタル

2011年作品といえばDream TheaterもOpethもMegadethもInsomniumもOmnium gatherumもTo/Die/Forも陰陽座も、その他諸々色々ありましたが、全部来年以降に回します。キリがないのでこの辺で。

2011年12月29日木曜日

(本) 死なないでいる理由 - 鷲田清一 (角川文庫, 2008年)

・家庭であれ地域社会であれ、じぶんが果たしうる小さな「役割」を考えること、どうしたらたしかな父に、母に、隣人に、そして市民になりうるかを考えなおすことからはじめることが重要かとおもう。p32
・嫌いでもつきあう、もめても話しあって解決する、そんな、なじみのないひとともうまくやってゆけるよう、じぶんを鍛えておかなければならない。歳をとっても、なにも不自由なからだをふりしぼってやることはない。中略。「人間の弱さは、それを知っている人たちよりは、それを知らない人たちにおいて、ずっとよく現れている」p39
・「成熟とは、『自分がおおぜいのなかの一人(ワン・オブ・ゼム)であり、同時にかけがえのない唯一の自己(ユニーク・アイ)である』という矛盾の上に安心して乗っかっておれることである」p41
・これ以上向こうに行くと危ないという感覚、あるいはものごとの軽重の判別、これらをわきまえてはじめて「一人前」である。ひとはもっと「おとな」に憧れるべきである。そのなかでしか、もう一つの大事なもの、「未熟」は、護れない。p72
・人生を「できる」ということからでなく「できなくなる」というほうから見つめてみると、もっと違う<いのち>の光景が眼に入ってくる。p123

今、この本から得られることは、これが精一杯。また何年か、何十年かしたら読み返してみたいと思う。この本で語られていることは、時代の潮流を意識しつつも、時代に関係なく当てはめられることだろうから。

2011年12月28日水曜日

(音) Silencer の Death, Pierce Me (Sweden, 2001年)

ブラックメタルの中にdepressive suicidal black metal (鬱系自殺系)というジャンルがあるらしいのですが、その中でも最高峰(初心者向け?)に属すると言われているバンドが、ただ1枚残したアルバムです。YouTubeでも全曲アップされていますし、なんとiTunes storeでアルバムを購入することもできます。いったい誰が買うんだろう・・・。
楽器隊は至極まともで、良質なブラックメタル的音楽を奏でています。このアルバムが全曲instrumentalだったら神盤とは言われていなかったでしょう。兎に角、ヴォーカルの存在感が凄い。
嘔吐・咳嗽・絶叫・憤怒等あらゆるネガティブなものを表出したヴォーカルのインパクトが凄すぎて、それを好きになれるか否かで本作の評価は真っ二つに分かれるでしょう。冷静に考えて95%以上の人は否、でしょう。「音楽は楽しく聞くものだ」と恐らく多くの人が思っている筈ですから。そして楽しく聴ける類の音(ヴォーカル)ではないと思います。#5では、ヴォーカルさんがちょっと笑ってますが。

試しに#1の1:46の絶叫を聴いてみていただければ分かりますが、テレビやラジオで流れていたら苦情が殺到すること間違いないし(視聴者以前にスポンサー様方から)、車でのデートのBGMには99.9%以上の確率で使えないでしょうし、胎教にも良くなさそうですし、全身麻酔中でも残ると言われている聴覚によい影響を与えるとは到底思えません。見たことないような怪鳥の鳴き声か悪魔の動物園に迷い込んだような錯覚を覚えます。「ロード・オブ・ザ・リング」に出てくるゴラムのような生物が終始拷問を受けて絶叫しているようなヴォーカルです。
ヴォーカルのNattramn氏は統合失調症でこのアルバム作成後に精神病院に入院加療。だからSilencerのアルバムは一枚しかありません。本作のヴォーカルパフォーマンスに触れたときに、精神科医の皆様がどのような反応をするかというところに、私は非常に興味がありますが、本作のスタイルからは、何か見えてしまってはいけないもの、幻覚に抗っているかのような印象を受けます。
鬱系自殺系、という言葉に反応して「あぁ、ちょっと今気分落ち込んでいるから暗い曲でも聴いてみよう」というノリで聴く類のアルバムではないです。「あぁ、自分では気分が落ち込んでるって思ってたけど、そういう次元で語れない精神状態の人がいるんだ(いたんだ)」って、少しは生々しく感じられるかもしれません。鬱に対するヒーリング効果という観点では、恐らく本作の効用は相当小さいでしょう。

いずれにせよ、Cradle of FilthとかDimmu Borgirとかの売れてる系ブラックメタルが好きってくらい(私)では、ちょっと立ち退きを迫られる程の敷居の高さを感じますが、慣れてくると凄くハマります。慣れるのもどうかと思いますし、何のために慣れるのかよくわかりませんが。昨年末、これを聴いていた私はもうハマってしまった側の人間でしょうか。

1. Death, Pierce Me 10:30
2. Sterile Nails and Thunderbowels 6:16
3. Taklamakan 8:32
4. The Slow Kill In the Cold 11:34
5. I Shall Lead, You Shall Follow 8:47
6. Feeble Are You, Sons of Sion 3:02

6はインストです。
メタルという音楽ジャンルの懐の深さを感じる作品でした。

ヴォーカルのNattramn氏。退院した後には「Diagnose: lebensgefahr」という名義で「Transformalin」というアルバムを発表してますが、こちらは手に入らないのかな。

2011年12月26日月曜日

2011年12月25日日曜日

(旅) Seto Inland Sea from Naoshima



詩を見つけました。

ゆかむがためにゆくものこそ まことの旅人なれ
心は気球の如くにかろく 身は悪運の手より逃れえず
なんの故とも知らずして たヾゆかむかなゆかむかなと叫ぶ

佛國 ポードレール作
永井荷風訳

2011年12月21日水曜日

(本) 2011年下半期の本と今年1年の読書雑感

今年はまだ10日程ありますが、一応今までのまとめ。特に順番に意味はありません。しっかし、「罪と罰」っていう本は、本当に損していると思う。こんなに面白いのに(という私もやっと読了したばかりですが)その厚さと、その著者名と、その題名で狭き門だと多くの人に思わせていると思います。

・罪と罰(1-3巻)、ドストエフスキー、光文社古典新訳文庫、2008-2009年(原著:1866年)
・「ぐずぐず」の理由、鷲田清一、角川選書、2011年
・人間の往生、大井玄、新潮新書、2011年
・夜間飛行、サン・テグジュペリ、光文社古典新訳文庫、2010年(原著:1931年)
・暴力に逆らって書く 大江健三郎往復書簡、大江健三郎、朝日文庫、2006年
・気になる部分、岸本佐知子、白水社uブックス、2006年
・ねにもつタイプ、岸本佐知子、ちくま文庫、2010年
・空海の思想について、梅原猛、講談社学術文庫、1980年
・暇と退屈の倫理学、國分功一郎、朝日出版社、2011年
・一般意志2.0、東浩紀、講談社、2011年
・オイディプス王・アンティゴネ、ソポクレス、新潮文庫、1984年(原著:紀元前427年頃)
・ナラティブ・メディスン 物語能力が医療を変える、リタ・シャロン、医学書院、2011年(原著:2006年)

本当の本は私たちを読む。私はエリオットの詩に読まれ、『ユリシーズ』に、『失われた時を求めて』に、『城』に、若い時から長年にわたって読まれてきた。これらの本の中には最初、私を拒否したものもあった。私はそれらをうんざりさせた。しかし私が年をとるにつれ、そしてそれらが私のことをよく知るようになるにつれ、それらは私に共感をよせるようになり、私の隠された意味を理解するようになった。(ナラティブ・メディスン p160にて引用されたライオネル・トリリングの言葉)

***
「オイディプス王」を読むと、少なくともこの2500年間、人類が全く進歩していないように感じます。そしてこの自分の、人生において初めて内から沸き起こる感情、その全てが、これまでこの世に生を受けた人、どなたかが必ず通過したであろう感情なのだろう、と曲がりなりにもいろいろな人の書いた、いろいろな人の本に触れることで気づきました。だから、その意味では、どんな感情が生じても、自分一人で抱え込むものでもなく、自己憐憫に浸るものでもなく、まして誰も分かってくれない、なんて思う必要もないのです。私と、あなたと、彼と、誰かと共有しているであろう感情というのは、たとえ自分の身の回りにはなくても、必ずあります。
と書いている自分が、別に非常な苦境に立たされているわけでは全くなく、もしかしたら、そのような感情に苦しめられている人が、どこかにかいたら、私はそのそばでそっと立ち尽くしていたいと思うのです。たとえ共感することも理解することもできなくても空気を共有することができる。そういうことをきちんとしてしまう優しい(?)人はきっといるでしょう。私は妄言するだけかもしれませんが、自分の想像力が、自分がいくつ歳を経ても、1年前の自分よりも広がっていたい。そう思う今年1年の読書生活でした。何を言っているかよくわかりませんが、まぁ、よく分からない1年だった…そういうことです。

2011年12月15日木曜日

(麻) BJAのeducational review

そういえば、以下の9項目についてのレヴューがここから読めます。無料。英語の勉強用に。
・β-Blockade in the perioperative management of the patient with cardiac disease undergoing non-cardiac surgery
・Perioperative management of patients with cardiac implantable electronic devices
・Multimodal therapies for postoperative nausea and vomiting, and pain
・What is really dangerous: anaemia or transfusion?
・Development and potential clinical impairment of ultra-short-acting neuromuscular blocking agents
・Anaesthetic considerations for non-obstetric surgery during pregnancy
・Perioperative management of the paediatric patient with coexisting  neuromuscular disease
・Does regional anaesthesia really improve outcome?
・Regional anaesthesia in the patient receiving antithrombotic and antiplatelet therapy

(研) 9箇月間のまとめ

今年はまだ2週間ちょっと残っていますが、大学院生活で「身に沁みて」学んだことを、自分なりに総括したいと思います。
以下、箇条書きで。

・社会的な成功と、その(俗世間的な意味での)成功者の想像力は、全くもって相関しない
・「努力すれば何でも叶う」「やめなければ何でも叶う」、は幻想である。これはネガティブな意味ではなく、本当に個々の人間の体が許す範囲でしか活動できないのです。その意味では多くの自己啓発書は嘘つきです。もしくはそのような主張を臆面もなく言える人は身体環境時代共に恵まれたエリートさんです。もしくは、「やめなければ何でも叶う」という想像力しかもたない、想像力の欠けた方です。
・体が発するメッセージに気付くべきである。そして体が発するメッセージを無視している、もしくは知ってても気づかない振りをして余計な苦しみを味わっている人が、世の中には本当にたくさんいる
・ショウペンハウエルは著書「読書について」で、

読書にいそしむかぎり、実は我々の頭は他人の思想の運動場に過ぎない。(中略)ほとんどまる一日を多読に費やす勤勉な人間は、次第に自分でものを考える力を失っていく。(中略)多読すればするほど、読まれたものは精神の中に、真の跡をとどめないのである。

と書いていますが、私のような凡人には、少なくとも「想像力や共感能力、理解力」を鍛えるという意味においては読書は有用である。というか必要不可欠である。

まぁこんなところでしょうか。大学院の高い授業料を払って学んだことにしては「え、それだけ?」と思う方もあるでしょうが、理解するのと「身に沁みて」わかることの間には三途の川よりも深い隔たりがあるのではなかろうか…よく分かりませんが、今の自分にはそう思えます。

あぁせいせいしたなぁ…の258日間。

参考
・内田樹氏:著書たくさん
・齋藤孝氏:「身体感覚を取り戻す」
・その他今年読んだ約400冊の本と、聴いた約300作品の音楽アルバム
・周りにいる素晴らしい方々
・家族

(音) 凄いぜNightwishのImaginaerum (Finland, 2011年)

7作目のスタジオアルバムです。きっといっぱい売れて、すぐ値が下がって中古市場に出回るだろう、もしくはレンタルになるまで待とうかな、と思っていたのですが、中古の輸入盤が意外に早く安く購入できたので聴いてみました。

本作はバンドの祖国フィンランドでは発売日に5万枚以上売ってダブルプラチナアルバムを獲得したそうです。日本人的感覚からすると「たった5万枚?!」、って感じですが、フィンランドの人口は540万人、と日本の人口の1/24程度。単純に掛け算すると日本で120万枚売れてることになります。これは2011年に日本で売れたアルバム~嵐の「Beautiful World」やAKB48「ここにいたこと」、EXILEの「願いの塔」~などより売れたことになりますが、…まぁどうでもよい比較です。それにこれらのアーティストを超えてNightwishのアルバムが日本でランキング1位をとるなんて、これまでもこれからも絶対ない。そしてこのアルバムが120万枚も売れたら変だ。そんな世の中が来たら、それは日本人の辺境スピリットが侵食されている結果だろう。恐らくフィンランド人が変なのだろう。

なにせコンセプトアルバムになっていてランニングタイムも74分55秒です。長すぎ。お腹いっぱい。

私はオペラティックなソプラノ歌唱のTarjaのヴォーカルがそれほど好みではなかったため、シンフォニックな音楽の装いには大いに興味を惹かれつつも、それほど熱心にNightwishの作品を追いかけて来ませんでした。そんなわけで歴代のスタジオアルバムの中では「Oceanborn」でも「Once」でもなくAnette Olzonがヴォーカルをとっている前作「Dark Passion Play」(2007年)が最も好みなのです。

本作は2012年に映像化されるらしいです。
そしてそれを反映してか非常にシネマティックな作りになっています。これまでもシンフォニー要素、クアイアいっぱい、オペラかよ、っていう世界観でしたが、いよいよ磨きがかかってもう誰も止められない世界に到達してしまいました。凄いぜNightwish。そして今後、メタルの世界から飛び出せるであろう、普遍的魅力に溢れた数少ないバンドの1つであろうことを、本作を2回ほど聴いただけで確信するに至りました。おそらくそれをメタルファンは望んでいないでしょうが。

という意味においては、メタルが好きで本作を聴く人には多分物足りないでしょう。って偉そうですが、それくらいメタル色が希薄な曲がたくさんあります。#4なんてナイトクラブでカクテルかワインかウイスキーを傾けながら聴くのが全うな聴き方なんじゃなかろうか、と思う曲もありますし、ヴォーカルなし、メタル色なしのinstrumental曲も何曲かある。
それでも、これまでのNightwishファンだった方々へのリップサービスのような曲もあります。#2、#5、#11なんかがそうです。
バグパイプが大活躍な#5はポップで楽しげでキャンプファイヤーを囲んで踊りたくなりますが、歌メロはもうちょっと何か欲しいかなぁ。ストレートなメタルっぽさを留めている#2と#11。#2はシンフォニックなクアイア全開で多くのファンに受け入れられるでしょう。Anetteのヴォーカルも映える。#11のAnetteは若干残念ですが、それを補って余りあるNightwish的メタルサウンドです。

ということで、Nightwishの真性ファンじゃない私ですが、そんな私でも2ndアルバムの「Oceanborn」から曲がりなりにも追いかけて来た甲斐があったなぁ、しみじみ…と素直に感動できる作品でした。是非とも多くの人に触れて欲しい、「メタルなんてゴミだろ?」って思っている方にこそ触れて欲しい作品です。今年最後の(?)名盤です。

1. Taikatalvi
2. Storytime
3. Ghost River
4. Slow, Love, Slow
5. I Want My Tears Back
6. Scaretale

7. Arabesque
8. Turn Loose The Mermaids
9. Rest Calm
10. The Crow, The Owl And The Dove
11. Last Ride Of The Day
12. Song Of Myself
13. Imaginaerum

早く本作の映像がみたいなぁ。

2011年12月14日水曜日

(本) 読んでみた~SICU Pearls 外科ICUで困った時に開く本

この

マニュアル本

は、マニュアルとしての機能を十分すぎるくらいに果たしてくれそうです。
麻酔科研修医は患者さんを術後ICUに入室させる時に、p6-7の事項を申し送ることを目標にすればよいでしょう。
第2章の図表は秀逸。第3章の、各病態ごとの管理についての文章も肝を外さずに、それぞれよく練られています。第4章にはTrouble Shootingが記載されていますが、マニュアル本にありがちな鑑別診断の羅列でないところがよい。と、偉そうなことを書いてしまいましたが、目一杯利用しようと思います。勉強になるなぁ。
いい買い物をしました。

・そういえば…来年から麻酔科専門医試験の日程が変更になるようですね。口頭試験と実技試験は神戸、筆記はあちこちの都市で?と学会HPに提示されてますが。
・これまたそういえば…レミフェンタニルの副作用に「全身痙攣」が追加されていますね。

2011年12月13日火曜日

(音) 最優秀アルバム・ベスト25 ~ 「魔獣の鋼鉄黙示録」より

年末になり、そろそろ今年のベストアルバムを選出しようと思っています。
賛否両論(多分、否の方が多い)だと思いますが、

上記の本

に記載されているベストアルバム(1970年~2004年)は以下。

・AC/DC : Back in Black
・Angel Witch : 悪魔の翼
・Bathory : Under the sign of the black mark
・Black Sabbath : 黒い安息日
・Carcass : Heartwork
・Celtic Frost : To Mega Therion
・Destruction : Infernal Overkill
・Dream Death : Journey Into Misery
・Emperor : 闇の皇帝
・Holy Terror : Terror and Submission
・Immortal : Battles in the North
・Iron Maiden : Killers
・Judas Priest : In the East
・Kreator : Terrible certainty
・Mercyful Fate : Melissa
・Metallica : Ride the Lightning
・Morbid Angel : Formulas Fatal To The Flesh Released
・Motley Crue : Shout at the Devil 
Motorhead : Overkill
・Napalm Death : 哀歌
・Rainbow : 虹を翔る覇者
・Saxon : The Eagle has landed
・Slayer : Hell Awaits
・Voivod : Demension Hatross

このうち、私はまだ10枚しか聴いていない。鋼鉄の道は長く険しい。要修行。

(本) 博士の本棚 - 小川洋子 (新潮文庫、2010年)

人生で読んだ小説の数が多く見積もっても数百冊であろう私にも好きな作家さんがいます。

小川洋子さんはそのうちの1人です。と言ったら小川洋子さんに迷惑がかからないだろうか…否、多分かからないだろうと、思って書きますが。

最近読んだ「博士の本棚」にとても嬉しい文章を見つけました。

当時、新刊の単行本を買うのは、何よりの贅沢だった。一割引きで購入できる大学の生協以外、普通の書店で買物をしたことがなかった。古本や文庫や図書館で借りるのではなく、まっさらな新刊を自分だけのものにしたい気持が、純粋な本物の欲求であるかどうか、お財布と相談しながら、吟味に吟味を重ねた上での買物だった。(p267)

あぁこんな偉大な小説家の先生の書く言葉に共感できるなんて(私のことを書いているのか、と本気で錯覚しました)。おそらくこの共感は私の勘違いだと思いますが、勘違いだとしても、幸せな気分にしてくださった小川洋子さんには、心の底から感謝したいと思います。そしてこれからも素晴らしい、否、素晴らしくなくても良いので、楽しく小説を書き続けてもらいたいなぁ、と分不相応にも思うのでした。あぁ他人の書いた文章で幸せになれるなんて、本当に幸せなことだ。

2011年12月12日月曜日

(研) アルバイト麻酔科医大学院生の健康保険

医師アルバイト必勝法

上記ブログに健康保険についての情報をみつけました。もっと早く見とけよ、って感じですが。
私は現在、職場の健康保険を任意継続していますが、それよりも医師国保の方が安いです。
何事もきちんと自分で調査してから決定せよ、ということですね。迂闊でした。

2011年12月9日金曜日

(本) 自分を超える法 - ピーター・セージ(ダイヤモンド社、2011年)

・「達成する方法がわかる目標」は、目標として小さすぎる
・自分が感動できることを敏感に認識しながら、人生に身を委ねて、とにかく行動すること p267
・「自分のビジョンが何であるか、自然にわかるとき」は必ずきます。「自分の可能性に自然に心を開いたままでいること」で。 p268-9
・人生は、ほしいものを自動的に運んでくれるようなものは決してない p304
・何かを変えるためには、自分の世界観を変えるしかない p404

こんな本を読むのが趣味だったら、ただそうしていればいい。ですが読むだけでは変わらないのです。当たり前ですが。だったら面白い小説や映画を見たり、友人と話をしたり、音楽を聴いていた方が何万倍も意味があります。行動や意識を変えるためにこそ、このような本は存在しているのです。ですが、本に洗脳されて「よし、がんばるぞー」と頑張るのも何だか嫌なのです。それはきっと、変えなければならない自分を、自分の中にいっぱい発見してしまうからでしょう。ですが、このままだと、自分の行動の枠から出ていけないことは自明、なおかつそれが不愉快なので、何らかの行動が絶対に必要です。そしてその、何らかの行動が、適切かどうかなんて、行動しているときには分からないのです。でも行動するしかないのです。そういう時があります。頭で考えているだけではどうにもならないのです。自分の体が発するメッセージを、思考以上に大切にしたほうが良いこともあります。
おそらく怖いのは、行動を開始するときだけです。だから何も恐れる必要はないのです。

(走) Training in Rena (其の百二十八)

56日ぶりに走ったことを記録し忘れていたので、記録しておこう。

12/4 5.0km, 35min
total distance: 900.4km (July 34.0km, August 17.0km, September 45.2km, October 10.0km)
total time: 5713min = 95h13m (since 7th, Feb, 2010 走り始めて666日目)

またゆっくりと距離を伸ばしていこう。人生長いんだし。

***

絶望の虚妄なること まさに希望に相同じい (「ある一行」 茨木のり子 より)

絶望も希望も大したことない。どっちも人生に必要なんだろうけど、それに絡め取られてるだけではまだまだ浅いんだろう。浅いってことは生きる必要があるってことだ。深く生きるために。深いってなんだろう。そもそも深く生きる必要があるんだろうか。
尤も、何が絶望で何が希望か、うろうろと悩んでいるだけでも生きている価値があるってものかもしれない。命が潰えたときには、悩むこともできない。

私も茨木のり子氏のように、上の言葉を時々呟いてみよう。

2011年12月6日火曜日

(本) 自分の小さな「箱」から脱出する方法 - アービンジャー・インスティチュート (大和書房、2006年)

このようなことを意識することで少しは良い方向に変わっていくのでしょうか。少なくとも周りの人々が、自分の思い通りでにならなくて怒るだけ・・・の不毛な生活からは脱出できそうです。

***
知っておくべきこと
・自分への裏切りは、自己欺瞞へ、さらには箱へとつながっていく
・箱の中にいると、業務向上に気持ちを集中することができなくなる
・自分が人にどのような影響を及ぶすか、成功できるかどうかは、すべて箱の外に出ているか否かにかかっている
・他の人々に抵抗するのをやめたとき、箱の外に出ることができる

知ったことに即して生きること
・完璧であろうと思うな。よりよくなろうと思え
・既に知っている人以外には、箱などの言葉を使うな。自分自身の生活に、この原則を活かせ
・他の人々の箱を見つけようとするのではなく、自分の箱を探せ
・箱の中に入っているといって他人を責めない。自分自身が箱の外にとどまるようにせよ
・自分が箱の中にいることが分かっても、諦めるな。努力をしろ
・他の人々が手を貸してくれるかどうかを気に病むのはやめろ。自分が他人に力を貸せているかどうかに気をつけろ。(p264-265より引用、一部変更)

(麻) deep grief

・脳死ドナーの管理は麻酔科学会の指導医や専門医ならできて当たり前。
・指導医や専門医が断わるというのはいかがなものか。

あぁ、そういう認識の先生がいらっしゃるのですね。
私は脳死どころかいかなる臓器提供ドナー、レシピエントの麻酔管理にも関わったことがありません。もし万が一、臓器移植の管理で私がトラブって訴えられて裁判ざたになっても、「この麻酔科医の技術や知識が未熟だと言わざるを得ない」と判を押されてしまうのでしょう。

今年、麻酔科専門医試験に偶然にも合格させていただきましたが、早くも資格を返上したくなりました。

凡麻酔科医の私としては、臓器移植に関する、日本語で書かれたガイドラインや教科書の発行・出版を切に望みます。そうすれば死に物狂いで勉強しようと思います。いつか目の前にいらっしゃるかもしれない臓器移植の患者さんのために。

2011年12月3日土曜日

(本) ぼくは勉強ができない- 山田詠美 (新潮文庫, 1996年)

気軽に楽しく読めました。たまには人の推薦を盲信して読むのもいいもんだ。読む本を自分で選んでるだけだと偏るし、天地がひっくり返るような驚きや興奮に中々出会えなくなりそうだし。

著者は主人公を、勉強ができない高校生、という設定にしておきながら、哲学的なことを只管(ひたすら)考えさせ、吐き出させています。この主人公は勉強はできない(やらない)だろうけど、、アタマは非常に良い。アタマがよいために窮屈な高校生活を強いられています。
学校の集団生活、社会生活というのは、ある意味においてバカになる、ということです。これはしてはいけない、あれをすると罰せられる。だから何も起こらないよう、目立たないよう、周りの人間と同じ行動をしよう。子供の頃からそのように洗脳、調教され、大人になるにいたっては、そのような態度で生きることに何の疑いもなくなっていく。でも、そうはできないから窮屈さを感じている。それを主人公は母子家庭で育ったことやいろんなことのせいにしているのですが。

***
「どうせ、人って死ぬのかと思うと、将来ってどういう意味があるのかって考えちゃうよ。理想を追いかけてたって、体が消えちゃえば、それまでじゃない。ぼく、来る途中、考えてたんだ。煙をつかむようなものだって」
祖父は、興味深そうに、ぼくを見詰めた。
「煙をつかむのに手間をかけて何が悪い、秀美、そういうことをダンディズムと呼ぶんだぞ。まあ、悪あがきと言えないこともないが、格好の悪いことでは決してないぞ。物質的なものなんぞ、死んだら終わりだ。それなら煙の方がましだ。始末に困らないからな。困らないものがいったい何なのか、おまえにもその内、解る時が来るだろうよ」(p169)
***

読む人によって、色んなセリフに引っかかりを感じるだろう良い小説でした。

2011年12月2日金曜日

(音) 待ちに待ったRoyal Hunt - Show Me How To Live (Denmark, 2011年)を聴いてみた

iTunes storeにて。発売日12/2午前0時に購入し、現時点まで10回ほど全編通して聴いた所で記載。途中に大量出血手術の麻酔を数時間挟みましたが。購入してから明け方まで、夜を徹して聴いてしまいました。

最初に結論を言ってしまうと、歴代スタジオアルバムランク付け(あくまで本日時点)において、新作はこの位置でした。

1.Paradox (1997)
2.Fear (1999)
3.The Mission (2001)
4.Paper Blood (2005)
5.Moving Target (1995)
6.Show Me How to Live (2011)
7.Eyewitness (2003)
8.Land of Broken Hearts (1992)
9.Clown in the Mirror (1993)
10.Collision Course... Paradox 2 (2008)
11.X (2010)

D.C.Cooper復帰です。アルバムの雰囲気は、5th「Fear」をやや明るくしたような印象。Royal Huntで有ることに拘ったサウンドが全編全開であります。音楽的な方向性は近年の作品よりは3rd~5thあたりに近いかも知れません。このあたりは熱心なオールドファンにはたまらないかも。Andreのキーボードのフィーチャ度は近年の作品では最高度、シンフォニックな色合いも近年の作品では最高度。勿論歌メロはポップです。そこからも解るように、D.C.Cooperの歌に最も焦点が当てられた作りになっています。サビの部分でのバックコーラスも分厚いし。先行シングルの#4は既に100回以上聴いていましたが、このアルバムのこの位置にあって、また新たな魅力を感じられます。この曲はやっぱりよい。
しかし、本作で1番の聴きどころは、何と言っても#5の「Half Past Loneliness」でしょう。一聴するだけで歌メロがハマる。まるで歌謡曲のようです。何かの曲に似ているような気がするのですが…思い出せません。個人的には他の曲がどれ程普通だとしても、この1曲があったお陰で非常に救われました。やっぱりこういう曲をD.C.には歌って欲しい。

10分超えの#6に1番期待していたのですが、凡庸で退屈な展開でがっくし…。#1や#7は曲展開は割と好きですが、今一歩、歌メロにフックが足りない。そして本作で1番の不満はJonas Larsen のギターソロが自分好みでなく楽しめない、という点。

1. One More Day 6:15
2. Another Man Down 5:16
3. An Empty Shell 4:35
4. Hard Rain's Coming 5:15
5. Half Past Loneliness 5:39
6. Show Me How To Live 10:06
7. Angel's Gone 5:12

個人的には先行シングルの#4がアルバムの1曲目に来て、「お、これは凄いアルバムかも?!」と期待を煽りまくり、#4を凌駕したシンフォニック悶絶チューンのオンパレード…っていう展開を期待してしまっていたのですが、まぁ、それは無理な望みですよね…。愛ゆえに本作をそこまで評価出来なかったのか、はたまた愛が足りないから本作をそこまで楽しめないのか。まぁ、今作はD.C.Cooperの復帰ってことで、次作に期待します。といいつつ、あと数十回は通して聴いてみよっと。

(本) 克服すべき16項目の弱点 ~ 思考は現実化する より

以前ドラッカーがブームになったけど、私は断然ナポレオン・ヒル推しです。だからどうしたっていう感じですが、本書は本当に痛いところばかりついてきます。その中でも特にこの16項目。
ここで提示される「富」という言葉は、何もお金のことだけを示しているわけではなく、仕事、趣味、家族関係、職場の人間関係、友人関係、哲学的問題、そういう自分の人間的成長に欠くことができない要素、全てを引っ括めた有形無形の財産を示していると思います。数年前に読んで溜飲を下げたのですが、最近、頭の中でいろんなことに蹴躓いているので、久しぶりに本棚から取り出して眺めることにしました。ここにメモとして置くことで少しでも自分の怠け心が減ります様に。

富を築くために克服すべきウィークポイント

1.何を望んでいるか分からず、説明もできない
2.理由の有無関係なく仕事を翌日に延ばす
3.知識欲、勉強意欲が欠けている
4.優柔不断。正面からの対決を避け、全てにおいて責任転嫁をする

5.明確な計画を立てず、口実を作っては言い逃れをする
6.自己満足

7.無関心。安易な妥協
8.他人の失敗を厳しく責め、自分の失敗を認めない

9.動機付けをしなかったことによる熱意の弱さ、またそれによる怠け癖
10.最初の失敗で簡単に挫ける
11.ずさんな計画。目標や願望を紙に書こうともしないため、分析も反省もできない
12.目の前にアイディアやチャンスが現れても、手を伸ばして捕まえようとしない怠惰な性格
13.夢想するだけで何もしない
14.豊かになるために苦労するなら貧乏のままでいいという態度
15.自ら汗を流そうとせず、ギャンブルや投機などで近道して儲けようとする
16.他人からの批判を気にする結果、行動を起こさない。これはこのリストの中でも最大の敵である
(携帯版 思考は現実化する, 2005年, p.303-4を参照、一部変更)

2011年11月30日水曜日

(雑) 沖縄防衛局長の更迭

・非公式懇談の上、発言の前後の流れが不明である
・「やる前にこれからやりますと言いますか」と本当に発言したのだろうか。情報源によって表現が異なるのが気になる。
・非公式懇談の内容を報道して良いのでしょうか

という疑問がすぐに湧きます。
今回の更迭の件は、「放射線つけちゃうぞ」で更迭された大臣の時に非常によく似た気持ち悪さを感じます。気持ち悪さは、発言内容に、ではなく、報道のされ方、にです。
上の言葉だけ報道されれば当然みなさんお怒りになるでしょう。ですから、その前後の内容、周りの人たちの様子、どれくらい酒が入っていたのかとか、全部、メディアによって加工しない状態の映像情報を出してもらえると、私としてももう少しまともな判断のしようがあるのですが。
火のないところに煙は…と言いますが、それにしても、米軍基地問題について政府の動きを快く思っていない人の悪意の結果の顛末なのではないだろうか、と疑ってしまいます。非公式懇談での失言(?)によって本人やその家族の人生が大きく悪化するだろうことを考えると、どのように受け止めて良いのやら。政治家や官僚はずいぶんと簡単に首を切られてしまうものなんですね。

2011年11月26日土曜日

(研) 中国語事始

英語もままならない私ですが、折角なので、中国語を教わることにしました。
余裕がある時に、気が向いた時に、同じ研究室のY先生の手が空いてそうな時に、ですが。
因みにY先生は私と喋るときは日本語、教授や他の国の留学生と喋るときは英語、携帯電話で家族や友人と喋るときは中国語。うーん、凄いことです。

ということで今日は初回。タイムリーな言葉でスタート。
困死了kùn sǐ le :死ぬほど眠い (日本語表記だと「クンスラ」に近いでしょうか)
累死了lei si le   :死ぬほど疲れた
~死了で「~で死にそう」という意味のようです。

 因みに…「腹減りすぎて死にそう!」は「饿死了e si le」なのですが、「e」の発音が難しくて何度Y先生の真似をしても出来ませんでした。早くも挫折しそうです。

2011年11月25日金曜日

(音) メタルの1つの到達点~Royal HuntのParadox (Denmark, 1997年)

バンド4作目の本作を最後に脱退していたD.C. Cooperがいつの間にかバンドに復帰していることに気づいたのは数ヶ月前(しかも来日までしてたなんて…)。もうすぐ11作目のスタジオアルバム「Show Me How to Live」が発売されるということで、復習しています。

新譜の方も…↓を聴いてしまうと期待するしかありません。iTunes storeで購入できる先行シングル「Hard Rain's Coming」も昔からのファン(私)には涙モノです。まさかRoyal HuntにD.C.Cooperが戻ってくる日が来るなんて!!


そしてParadox。
一般的には、うるさくて下品な存在のヘヴィメタルですが、そんな一般論自体はどうでも良く、そしてメタルが好きか嫌いかは別として、本作が普遍性を持った優れた作品であることは間違いないと思います。根拠?うーん、聴いて判断してもらうしかないのですが。
本作はアルバム全体で、宗教と神をコンセプトとした1つの物語になっています。物語だけなら小説や詩を書けばいいのですが、あくまで音楽ですからメロディが最重要です。本作は、メロディそのものがシンフォニックに神懸かっています。全編、ちょっと陰鬱かつ秀逸なメロディに支配されています。宗教や神、といえば小難しく深刻なテーマですが、そんな難しいことを考える必要は全然なく、ただただ聴いて音に身を委ねればいいのです。伸びやかなD.C.Cooperのヴォーカル、荘厳で美しいAndreのキーボード、女性コーラス、叙情的なJacob Kjaerのギター。ただもう聴くしかない。

1. "The Awakening" – 1:39
2. "River of Pain" – 7:14
3. "Tearing Down the World" – 5:32
4. "Message to God" – 6:41
5. "Long Way Home" – 5:54
6. "Time Will Tell" – 9:31
7. "Silent Scream" – 6:13
8. "It's Over" – 6:20

キャッチーな神曲「Tearing Down the World」。映像は流石に古臭くて安っぽいですが。長いことこの曲がフェイバリットでしたが、アルバム全編凄いことになってるじゃないか…と気づくまで大して時間は必要ありませんでした。


#3に負けず劣らず気に入っているのが、アルバム1番の大作#6「Time will Tell」です。序盤はヘヴィですが、めまぐるしくメロディが変化し続け、いつの間にかその世界に引きこまれます。中盤から後半に登場する荘厳な女性コーラスのハーモニーがこの曲の唯一無二性を引き出しています。この曲が本作1番のハイライト。(曲間なしで続く#7「Silent Scream」もドラマティックこの上ない名曲です。)


その「Paradox」の続編とされた11年後発表の「Collision Course: Paradox II」(2008年)収録の「Tears of the Sun」です。こちらのアルバム自体の出来は……でしたが、この曲はロイヤルハント以外には作り得ないだろう名曲です。バンドの音楽性には紆余曲折色々あったのでしょうが、ドラマティックなヘヴィメタルを演奏し続けているという点においては一点の曇りもありません。


あぁ、末永く頑張って欲しいなぁ。死ぬまで聴き続けます。

(研) プレゼンテーションが拙いと全て台無しである

今取り組んでいる研究に関連する内容の話…ということで、先日、大学院の講義に出席しました。

ですが。

??声が小さい…マイク使ってるのに…声のトーンも張りが無い…抑揚もない…スライドがつまらない…文字も小さい…。

これらが私の理解力不足に起因するものならば、ここに敢えて書く理由もないのですが、講義、という点では今回の講義は準備不足としか思えません。しかも、演者の先生は、自分の興味のない分野の話を嫌々しているわけでもない筈です。大学生に講義をするのと違って、自分の現在の研究内容、ライフワークを嬉々として語って良い場である筈なのに、この”伝える気のなさ”は何なのでしょう。
演者の先生の表情を見るかぎりでは、やる気がないわけでは決してなさそうでした。ですが…どこかで1回でも練習してきたのでしょうか。講義にしても学会発表にしても、演者は聴衆の何千倍、何万倍も努力して本番に望む…ということは理解していたつもりですが、これほどまでに聴く気が起こらない講義、というものは久しぶりです。学びのための貴重な時間が、「眠気に負けそうでごめんなさい」と、罪悪感に駆られるだけの1時間余になってしまいました。こんなことを学ぶために大学院に来たわけではないのですが。

どんなに素晴らしい研究をしていても、発表がまずいとすべて帳消しです。どんなプレゼンテーションも聴衆の貴重な時間を頂いているのだ、ということを再確認しました。あぁ、気をつけよう。

2011年11月23日水曜日

(音) StratovariusのPolaris live (Finland, 2010年)

スタジオ盤並のクオリティ、リズム隊の安定感。ライブ盤らしい躍動感(#3はやっぱ名曲)。コティペルトも高音が時折ちょいと苦しそうですが、ほぼ声は出させていますので、ファンとしては特に文句のつけるところが見当たらない好盤です。ただアルバム「Polaris」の曲は、過去の作品群より歌メロそのものが弱く感じられるため、それがちょっとばかり残念です。

 1.Destiny
2.Hunting High And Low
3.Speed Of Light

4.Kiss Of Judas
5.Deep Unknown
6.A Million Light Years Away
7.Bach:Air Suite [Keyboard Solo]
8.Winter Skies
9.Phoenix
10.SOS

11.Forever Is Today
12.King Of Nothing
13.Father Time
14.Higher We Go

下は#1です。スタジオ盤ですが。現時点では、この頃までのStratovariusが一番好みだなぁ。

2011年11月21日月曜日

(本) 衝動買い

日本人研究者のための絶対できる英語プレゼンテーション(Philip Hawke, Robert F.Whittier) 

・読みたくなる装丁
・読みたくなるレイアウト、色つかい
・英語だけでなく日本語も書いてある
・コストパフォーマンスがよさそう(よい、か否かは読んだ後でないとわからない)
・「いつか読むかもしれない」ではなく「今必要」

という諸点をクリアしている本は数十秒の立ち読みで購入決定です。
この本は、私にとってまさに全てを満たしていたので久しぶりに嬉しい買い物でした。取り上げられている例が基礎研究領域のものなので、臨床のドクタには、引っかかるものがあるかもしれませんが、それを差し引いても有用な本である予感がします。
研究室の抄読会の次回の自分の担当まで少し間があるので、この本を片手に準備してみたいと思います。それを終えたときには、この本のどこが有用か、もう少し語れることを期待しつつ(そして自分の英語力が少しでも上昇していることも期待しつつ)。

2011年11月16日水曜日

(麻) 妊産婦の心停止時蘇生用メモ

11月に入ってから一度も麻酔関連の記載をしていなかったことに気が付きました。そろそろこのブログの看板から「麻酔科医」を外そうかと思っていたのですが。下記のPDFから、蘇生の部分だけ、ここにメモとして置いてみます。

・子宮左方転位は30°。無理なら用手による子宮左方転位
・気管挿管をなるべく早く行うべき
・妊婦は横隔膜が挙上しているため、1 回換気量を少なめに
・胸骨圧迫の部位は一般成人よりもやや頭側
・AEDは一般人と同様に使用。子宮に放電しないようにパッドを貼付。
・薬剤も一般人と同様に使用
・心停止の鑑別診断は5H5Tの他に高Mg血症、羊水塞栓、妊娠高血圧腎症/子癇、麻酔関連合併症
・子宮の大きな妊婦が心停止に陥った場合、ただちに、PCS(perimortem cesarean section; 母体救命を目的とした帝王切開) を施行する準備を始める。準備の間に心肺蘇生処置や心停止の原因の鑑別診断を進める。帝王切開術が母体の心肺蘇生処置の一つになりうることを忘れない。

日本産婦人科医会
母体安全への提言2010

2011年11月13日日曜日

(雑) TPPのつづき

11日夕方、久しぶりに国会の様子(議論とよべないようなものでしたが)をテレビでみた。舛添氏と福島氏の質問の場面だったけど。
腹の中は賛成推進で固まっていても、それを意気揚々主張すると、党を離脱する人が出て、他の法案審議の際に影響を及ぼす。とか何とか色々色々と複雑な、官僚や既得権益層への配慮やなんかがあるために、ああいう、なんとも覇気のない答弁にならざるを得ないのだろうか。

これだけ是か非か二分されている状況では、恐らくどちらが絶対に正解ということはないのだろう。賛成することによって得をする人が何千万人、損をする人が何千万人、というように。単にそのバランスの問題であり、国が壊れるか壊れないか、という単純な二元論ではないだろう。尤も、二元論によって意見を主張する人も、「こういう悪いところは予想されます。ですが総合すると~~の理由で交渉に参加すべきです。いや、でも……もあるんですけどね」と、ごにょごにょいうわけにいかないからキャッチフレーズ的に「乗り遅れれば国が沈没するぞ」みたいなことを言うことになってしまう。
トータルでは今後10年で2-3兆円程度のプラス収入が見込まれる程度、というから(その目算も、情報の出どころによって様々だけど)、得をする人は、きっと多く得をして、損をする人がすごく損をするだろう。もしくは多くの人がうっすらほんのりと得をして、それよりは少ない数の人達が損をするのか。そのバランスはよくわからないけれど、これまでも多くの政策決定において、涙を飲んだ人はいた筈だし、損をする人たちの補償をどうするのか、は今に始まった問題ではない。昔どこかで見たような光景が、今回も繰り返されているようだ。

新しい関税の体系、人の流れにおいて、「適切な努力」をした人間のみがその場に踏みとどまることを許され、「不適切な努力」や「努力をしない」人間、「現状維持が精一杯で努力できない」人間が凋落の一途を辿る。
TPP反対派の意見は、国内の農業(米、小麦、牛乳、砂糖など)がダメになる、というもの。賛成派はグローバルに展開する自動車産業やその他の製造業の競争力のハンデとなる関税を撤廃しないと、海外の企業と戦うことすらできない、というもの。
しかしすでにお金を持てる人、と持たざる人の差は十分広がっている。持たざる人たちの幸福も考えるならば、スーパーで安い商品を選択できることは生きていくために必要ではなかろうか。現在ですら、お金を持てる人たちは、高くても安全性の高い(だろう)野菜や果物を手にしている。お金を持たざる人たちは、安い食品添加物まみれのファストフードを手にしている。これはまぁホンの一面でかつ偏見的な視野だけど。

国民健康保険の財源は加入者(国民)の保険税と市・県・国の補助金や負担金等で賄われている。産業が衰退し、少子高齢化が進行し、国が出せるお金や国民が払う保険税が減れば、国民健康保険制度は早晩崩壊する。TPP参加によって、万が一、医療の世界に自由競争が導入され、国民皆保険制度が崩壊する、という反対派の根拠があるけれど、40年後には65歳以上が国民の4割を占める国になる。そのため、TPPに参加しようがしまいが国民皆保険制度は、私の老後にはなくなっているだろう。今回TPPに加わるか加わらないか、は、そのタイミングが早いか遅いか、の違いではないだろうか。
農業に関しても国の庇護のもと、金銭的・制度的補助下に置かれている状態だろう。
総じて考えると産業でのプラスが農業や医療の赤字分を多少なりとも補填している(国としては借金まみれで全く補填してないけど)ような、現在のこの国の状態をみるならば、TPPに参加しないことで産業界もへたってしまい、更にこの国は「金銭的にも」衰退していくことになる。

賛成派:もうとうの昔にきつ~い国際競争にさらされている業界
反対派:農業・医療など国に守られている業界

という大変大雑把な図式をみて、10~数十年のスパンで物事を考えれば、今TPPに反対している人たちも、貧乏くじを引くハメになる気がする。自由貿易が経済発展に必要、というのはこれまでの経済理論から事実のようだ。だから、TPP参加以外の選択肢はない。あるだろうけど、それはやはり、不参加の場合よりも不幸になる人が、将来的に多くなる気がする(我々の子どもや孫の世代には)。

ということで現時点では、私は今回の首相の決断(決断させられているだけだろうけど)に一応同意せざるを得ないという結論に到達したけれども、自分がいる業界が「国の制度に守られている医療」なので、TPP参加によって短期的には割を食うだろう覚悟をもって生きていかなければならないのかなぁ、という危機感であることには変わりない。取り敢えず日本で医師として働けなくなる日が来たとしても困らないように英語だけは勉強し続けよう、怪我や病気をして病院の世話にならないように体調管理を気をつけよう。外国の農薬まみれの野菜が入ってきても困らないように、自分で食べられるくらいの野菜を育てることを計画しよう。そうして自分や家族を、取り敢えず国や社会のせいにしなくてもよいような状態にしてから、自分が社会に対してできることをしよう。そんなところだろうか。

参考文献:Japan Mail Media 他

2011年11月12日土曜日

(音) Marty FriedmanのTOKYO JUKEBOX (Japan?, 2009年)

全編ギターによるカヴァーとアレンジです。ヴォーカルは一切なし。私はギターの音は大好きですが、ギターオンリーの曲はあまり好きではないのです。でも、知ってる曲のギターカヴァーだったら楽しめるかも…と思って手に取ってみました。

セットリスト(と原曲を歌っているアーティスト)。
1. 爪爪爪 / マキシマム ザ ホルモン
2. GIFT / Mr.Children
3. 天城越え / 石川さゆり
4. Story / AI
5. ポリリズム / Perfume
6. 帰りたくなったよ / いきものがかり
7. TSUNAMI / サザンオールスターズ
8. 雪の華 / 中島美嘉
9. 駅 / 竹内まりや
10. 世界に一つだけの花 / SMAP
11. ロマンスの神様 / 広瀬香美
12. 明日への讃歌 / alan

メジャーな曲ばっかり・・・の中、知らなかった#1, #12をYouTubeで聴いたら…両方とも素晴らしい曲ではありませんか!ありがとうマーティ、教えてくれて!

内容ですが、どの曲も「かっこいいって言えば、まぁ、かっこいいよね」なのですが、原曲の歌メロに忠実過ぎてあまり楽しめない・・・のが正直なところ。
そんな中では、アコースティックに生まれ変わった#11と壮大な#12がグッド。何回も聴きたくなるレベルなのは・・・#9くらいでしょうか。1番期待していた#3は、本家が既に神なので如何なるカヴァーも受け付けないのかも。そして原曲を全く受け付けない#10は、本バージョンでも全く受け付けずしょんぼり。自分の音楽許容能力の狭さを再度実感するだけでした。

あぁ、でもこんなに上手いギターなら、Mr. Chldrenなら「タガタメ」とか「虜」が、いきものがかりなら「月とあたしと冷蔵庫」とか「ブルーバード」が、Perfumeなら「セラミックガール」が、サザンオールスターズなら「恋のジャック・ナイフ」のアレンジが聴きたかったなぁ。
まぁ、それを言い出したらキリがない。私にとってこのアルバムは「マキシマム ザ ホルモン」の凄さを知っただけでも十分な収穫でした。

下は#12のダイジェスト版(#1も素晴らしい曲なのですが、歌詞が素敵過ぎて、小心者の私にはここに貼れません)。

2011年11月11日金曜日

(本) 夜間飛行 - サン・テグジュペリ (二木麻里訳、光文社古典新訳文庫、2010年)

原題:Vol de nuit, 1931年

大分寒くなってきました。麻酔の仕事をしに通勤するときは、朝日が出る前から電車を乗り継ぎ乗り継ぎ、Opethの「Damnation」を聴きながら90分ほど移動します。

***
まだ夜間飛行が命懸けだった頃の話。操縦士たちの飛行状態を地上で監視する社長のリヴィエール。サン・テグジュペリは、本書において多くの哲学的な言葉をリヴィエールに語らせています。堀口大學訳の新潮文庫版を遥か昔に読んだときには、リヴィエールの言動にそれほど共感できませんでしたが、今回の読書では、作中のどの人物よりも彼に惹かれました。

「ものごとというものは」と思った。「ひとが命じ、ひとが従い、それによって創り出される。人間は哀れなものだ。そしてひと自身、ひとによって創られる。悪がひとを通じて現れる以上、ひとを取り除くことになるのだ」(p61)
・勝利。敗北。そうした言葉はおよそ意味をなさない。生きることはそうした観念の足元で、すでに新しい観念をかたちづくりつつある。勝ったためにかえって民の力が弱まることもあれば、負けたために民が目覚めることもある。リヴィエールを襲った敗北は、おそらく来るべき真の勝利に結びついていくための約束なのだ。ものごとが進みつづけることこそが重要なのだった。(132)

今回の読書で、私が感動したのは訳文です。非常に読みやすく、美しく、澱みのない日本語。訳者自身が巻末の解説において
「作品の文体は静謐で、優れた素描のような簡素さと品がある。同時に、どこかしら口ごもってもいる。」(147-8)
と書いていますが、訳者が産み出したこの日本語の文章からも、私は同じ印象を受けました。作品自体の芳香と、訳者が創りだした日本語の香り。ダブルで楽しむことができ、朝からとても幸せな気分になりました。

2011年11月10日木曜日

(雑) リフリフレイン

クリーンベンチで実験している最中にずぅぅぅぅぅっとBlack Sabbathの「N.I.B.」のギターリフが頭の中で繰り返し繰り返し流れてきた。この曲をそれほど好きでもない私の脳にも染み込んでいるなんて。悪魔のリフだ。

2011年11月9日水曜日

(研) 日記的な

やる必要のある実験が増えてきました。
まだまだ教わりながらですが、徐々にいろんなモノの進捗状況を自分なりに考えて、可能な限り有意義に使おうとしてきています。
「あー、これを始めておけば60分くらい間があくから、その間に細胞凍結させたり、ウェスタンブロット用のゲル作っておこう」とか。まぁその程度ではありますが。
これまでは全ての実験を直列にやってもそれ程時間のやりくりに困らなかったのですが、先週あたりから並列もしないと回らない(そして恐らくきちんと卒業できない)ことに気づき、そのような体のリズムになるべく調整しています。

しかし一度失敗してやり直しても、またうまくいかない実験もあり。軽くげんなり。
何ヶ月前かに教わった実験内容を再度レクチャーしてもらう時も「これ前に教わったなー」という記憶だけしかなくて、これまた軽くげんなり。あと何回げんなりしたら学位が貰えるんだろう。

自分自身がまだこれから学ばなければならないのに、他人の先生になりすましている人がたくさんいる。 (文読む月日―下巻、トルストイ、ちくま文庫p231-2)

が耳に痛かった昨年の今頃~それは毎日毎日手術室で研修医の先生たちと一緒に麻酔をしていた頃ですが~その頃の自分よりは幾許かマシかな。どうかな。

2011年11月8日火曜日

(本) 自分のアタマで考えよう -ちきりん (ダイヤモンド社, 2011年)

いろんなデータ、統計、情報の羅列を元にして、どのようにしてアタマを使って考え、結論を導き出すか――ということを噛み砕いて説明してくれる、題名そのままの内容の本です。就活の学生さん、婚活の女性、などを挙げたわかりやすい例え話で、すぅっとアタマに本の内容が入ってきます。
私は(大人気らしい)著者のブログを読んだことがなかったのですが、とても楽しめました。アタマを使って考えよう、という趣旨の本は、本書以外にこれまで何冊も読んだ気がしますが(医学統計の本や英語の本のように)、未だにこの手の本に惹かれてつらつらと読んでしまうあたり、自分の思考停止っぷりを最確認するだけで愕然とします。いずれにせよ、暇さえあればインプットに勤しんでしまう「情報収集病」とでもいうべき状態を、少しずつでも考える時間にあてようと思いました。まぁでも自分のアタマで考えて素晴らしいアウトプットを出せるのは、著者のような素晴らしいアタマの持ち主に限られるような気もするので、インプットも相変わらず継続していこうとは思いますが。

2011年11月6日日曜日

(音) Mozart memo


本日聴いたもの

・フルート四重奏曲第3番ハ長調 K.Anh.171(285b)
・弦楽四重奏曲第19番ハ長調 K.465『不協和音』
・フルート四重奏曲第4番イ長調 K.298
・フルート四重奏曲第1番ニ長調 K.285

第1番の第2楽章が自分好み。

2011年11月5日土曜日

(本) 有事対応コミュニケーション力 - 鷲田 清一, 内田 樹, 上杉 隆, 岩田 健太郎, 藏本 一也 (技術評論社, 2011年)

3月の震災の3ヶ月後に行われたチャリティシンポジウムの内容を文字に起こした本です。本は大抵電車の中で読むのですが、帰宅途中の電車の中では読み終えられず、寝る時間を多少削って読了しました。そして一回読了した後に、時間をおいて、再度読了してしまいました。

本書で得られる情報に基づけば、テレビや新聞の情報を特に吟味しないで「あぁそういうもんなんだな」という態度で居続けるのは最早不可能でしょう。原発の問題で、いかに多くの情報がねじ曲げられて伝えられていたか。伝えられず隠匿されていたか。また、それらによって自分の行動や思考が規定されていたか。腹立たしい事この上ない。まぁ、そういう反応もまた、この本を読んで何も考えずに内容を盲信した結果にほかならないので、テレビや新聞で得られた反省を何も生かしてないに等しいのですが。

・震災後、まともな発言した多くの人たちが退場させられたこと
・既得権益、ポジショントーク、スポンサーとの利害関係、思考停止で事実は曲げられる
・情報格差社会は今後間違いなく社会の問題となっていくであろうこと(私的には既にそうなってるように思うけど)

結局本書に書かれた内容も疑ってかかって吟味した上で、自分の行動のエビデンスの一部とすべきかどうかを判断するのが正しいことだと思うのですが(そして本書の著者らもそれを望んでいる筈です)、情報の出どころに深くコミットできない私のような人間には、どの情報を信頼して良いのか分からない。本書の著者らのように、一見、信頼できる情報発信者の方々が発する情報が、いつも正しいか、それも分からない。でも、恐らく「常には」正しくない。そういうスタンスでいることは大事な気がします。

でも、テレビのニュースって小説のようだ。
何か事件が起こる。それを取材する。記者が思考停止のまま(もしくは不十分な知識のまま)咀嚼して文字に起こす。そして「こういう話に違いない」とニュースの原稿を作る人が考える。その時点で事実と大きく解離した物語が出来上がる。
タチが悪いのは、それらが一見本当であるかのような根拠を提示しつつ紡がれる物語だということ、児戯的な勧善懲悪思想が根底にあること。そしてテレビを通して悪性のウイルスのように市井にばら撒かれる。見ている方は”自分の頭で考えないと”そうだよなーと、コメンテータやニュースの内容が正しいものだというままに脳に刷り込まれてしまう。そして自分の行動もそれに規定されたものになってしまう。事実を巧妙に料理した物語を、人はいとも簡単に信じてしまう。小説家が書く小説を読んで、それに基づいた行動をすることはないのに。
「あれがおかしい、これがおかしい」とツッコミを入れながらみるテレビはある程度有益かもしれないが、いつもいつも「こういうふうに報道されているということは、事実はこういうことに違いない」と推理して、その推理が正しいかを毎回毎回自分で探索するのは骨が折れるったらありゃしない。
だから私自身は、現時点では、
・「テレビや新聞よりも信頼できるだろう」人たちが書いているであろうメールマガジン
・海外のニュースサイト(日本国内で発生した事故や事件と直接の利害関係がないだろう)
・「テレビや新聞よりも信頼できるだろう」人たちが書いているであろうブログの意見
などを適当に参考にして、咀嚼して生きている。
何が正しいのか分からないし、正しいものもないかもしれないし、そもそも人によって正しいと考えるものが違う。

テレビも間違った情報を流した場合には、謝罪会見をしたらどうだろうか。間違った報道で多くの人が傷ついたり社会復帰できなくなっているだろう。また、死に追い込まれる人も少なくないだろう。病院は、医療事故で一人の患者さんを不幸に陥らせるだけで徹底的に謝罪させられ断罪される。勿論、被害者の数の問題ではないし、医療事故を容認しろなどというつもりはない。私自身も容認などしたくない。病院が死に至らしめている患者さんの数よりも、メディアが無意識的に死に至らしめている一般市民の数の方が多いんじゃないだろうか…と思うのは私の妄想だろうか。
いずれにせよ自浄作用の働かない組織は腐敗していくだろうから、いろいろなことを時間が教えてくれるだろう。腐敗するのは勝手だが、国民を徹底的に知的に破壊するのは止めてもらいたい。でもしょうがないのかな、既に情報発信者たる大きなメディアが知的に破壊されているのだろうから。もし、知的に破壊されていないと主張する大きなメディアの方がいるのならば、本書の内容に1つ1つ反論するべきだろう。反論できないのであれば、矢張り、知的に破壊されているということでよろしいでしょうか。

そんなことをつらつらと考える一冊でした。

2011年11月3日木曜日

(研) 7ヶ月たちて

昨日失敗したウェスタンブロットのやり直し。そして一昨日、6ウェルプレートにまいた細胞の状態が悪い。別のディッシュで継代しているおんなじ種類の細胞は元気そうなのですが。うーん。
言葉は不適切かもしれませんが、臨床麻酔より難しい。臨床では、ある程度不適切(かもしれない)輸液量や不適切(かもしれない)薬剤投与をしても患者さんの予備力などで一見何事もなかったように術後経過することも多いですが、実験は「適当な経過だと適当な結果しか得られない」。当たり前ですか?当たり前ですね。

実験室に来てからもう7ヶ月も経ってしまいました。まだまだまだまだまだまだまだ分からないことだらけ。というか何が分かっていないかもまだ分かっていません。しかし立ち尽くしていてもしょうがないので、少しずつ少しずつ地道に進めていこう。自分がスロースターターであることを忘れないように。

@以下、過去のものと重複するかもしれないけど、実験態度メモ
・暇をみては自分が行なっている実験のエンドポイントを考える
・実験していてもエンドポイントを意識すること。エンドポイントが見極められたら,そこから逆算して自分に足りないデータが何なのかを考える
・周りの人たちと議論すること
・実験量が足りなければ、実験の結果はついてこなかろう。逆に言えば実験結果はそのうちついてくるだろう(という楽天的な欲望)。
・外部からの批判の耐えうるものかどうかを判別するために,あえて批判的な観点から自分の実験を考察する。他人の論文を読むときも同様
・研究から得られることは兎に角全て受け入れてみよう
・すべての結果には原因がある。

@以下の出典は英辞郎とwikipedia(なのでどれくらい正確な記載なのかわかりません)。少しでも覚えられるように貼っておきます。
・vigorous / víg(ə)rəs : 精力的、元気
・disrupt : バラバラにする
・dissociation : 分離、解離
・aqueous phase : 水相
・vortex / vɔ́ː(r)teks : 渦
・chloroform / klɔ́(ː)rəfɔ̀ː(r)m : クロロホルム
・epidermoid :類上皮
・discard : 捨てる
・quantification : 定量化
・DEPC : diethylpyrocarbonate ジエチルピロカーボネート
 ・RNAを分解する酵素である RNase を失活させるために使う試薬。
 ・DEPC が RNase のヒスチジン残基に対して共有結合修飾を行うことによる。そのため、同様に修飾のターゲットとなるTrisやHEPESバッファには DEPC は使えない。PBS、MOPS には使用可能である。簡単な法則として、反応性のある -O:、-N:、-S: といった残基を持つ酵素や化学物質に対しては、DEPC で RNase フリー処理を行うことはできない。
・DDW : double distilled water 再蒸留水
・DTT : dithiothreitol ジチオトレイトール C4H10O2S2。
 ・空気酸化を受けやすいためDTTは比較的不安定な化合物
 ・強力な低分子酸化還元剤
 ・還元力はpHが7以上の場合に限られる
 ・チオール化したDNAを還元して「脱保護」する
 ・タンパク質のジスルフィド結合を還元し、タンパク質のシステイン残基の間で分子内または分子間のジスルフィド結合が形成されないようにするためによく使われる
・cDNA :complementary「相補的」の頭文字をとって、cDNA と省略される。
 ・mRNA から逆転写酵素を用いた逆転写反応によって合成された DNA。
 ・スプライシング済みの成熟mRNA から cDNA を合成すればイントロンを含まない状態の遺伝子(塩基配列)を知ることができることから、遺伝子のクローニングに広く利用されている。
・Primer : プライマー
 ・ DNAポリメラーゼが DNA を合成する際に 3'OH を供給する役割をもつ短い核酸の断片
 ・DNAポリメラーゼはプライマーなしに DNA を伸長することはできない。
 ・生体内でのDNA複製では主にDNAプライマーゼによって合成される RNA 断片が用いられる。また蛋白質がその機能を果たすこともある。
 ・試験管内でのPCRに使用されるものは、化学合成した短いオリゴヌクレオチド。その長さは通常は20塩基程度だが、目的によってより短いことも長いことも。増幅対象の2本鎖DNAの両鎖それぞれの3'側と相補的な配列をプライマーとして用意する。
・dNTP Mix : is a premixed ready-to-use solution consisting of the following compounds: dATP, dGTP, dCTP and dTTP. The deoxynucleosidetriphosphates are dissolved in water, pH 7.5.
dATP, dCTP, dGTPおよびdTTPのナトリウム塩が各10mM溶解されたプレミックスタイプの水溶液(pH 7.5)50µl反応にdNTP Mix 1µlを添加すると各dNTPの終濃度は200µMになる。
・5x RT Buffer : 反応バッファー、MgCl2、dNTPs などを含んだ5x 濃度の逆転写反応バッファー。溶解時に白濁することがある。ボルテックスミキサー等で激しく攪拌し、完全に溶解させてから使用する

森進一の「さらば友よ」ってすごい歌だ。

(音) じっくり聴かせる名盤~Dark Moor のAncestral Romance (España、2010年)

西班牙(スペイン)のシンフォニックメタルバンドのスタジオフルアルバム8作目。
なぜか嫋(たお)やかな山の峰々を背にした、深く碧い湖面を連想させる作品。

素晴らしいアルバムに出会えたとき、私がいつも感じるように、このアルバムも「作り手が作ろうと願ったレベルにまで、作ってみたら本当に到達しちゃったんだよね」という自己満足に溢れた作品に違いありません。音楽を聴くときに、この「作り手が自己満足できているだろう」と、私自身が感じられるか感じられないかは、とても大事なことです。たとえ自分の好みの曲調でなくても、そのアルバムにパッケージされた曲の端々から迸(ほとばし)る何かから、アーティストの心意気を感じてしまうという体験が確かに存在します。そういったアルバムは、初めは「うーん。どうも好きじゃないけど何か惹かれる…?のかよくわからないけど…何かあるんだよなぁ」と繰り返して聴いてうちに取り返しが付かない程溺愛してしまっていた…という経験に繋がることが多いのです。

そして、私がこのDark Moorに求めていた音像は、古くは2nd「The hall of the olden dreams」(2001年)の「Bells of Notre Dame」や3rd「The Gates of Oblivion」(2002年)に収録されている悶絶歌謡スパニッシュスピードメタルだったり、6th「Tarot」(2007年)の「Devil in The Tower」や「The Star」のような様式美的シンフォニックメタルだったりしていた筈なのですが、本作のミドルテンポ中心のアダルトな(言い換えればメタルの衝動的なエッジが取れた優等生的な)作風を自分でも吃驚する程気に入ってしまったのです。

このアルバムはクラシック+ロックのバランスがよく、非メタルリスナーの方々にも十分アピールしうる作品。「俺が俺が」と自分が其処にいるということだけを主張するような自己顕示ギターソロもないし、ポップスの延長で語ることすら許される、けれどもメタルスピリットを忘れていない。そういう文脈から語ることのできる、誠に稀有な存在となっています。10年後も50年後も私のCDラックにおいて、そのラックの中の取り出しやすい最前列で、そしてその片隅にあって折に触れて存在感を示していて欲しいと願う作品です。

1. Gadir
2. Love From The Stone
3. Alaric De Marnac 本作では1番今までの路線を踏襲した曲
4. Mio Cid まぁ速い
5. Just Rock これが好きな人は多そうです。タイトル通り、ロックへの愛に満ちた1曲
6. Tilt At Windmills
7. Canción Del Pirata スペイン語で歌われるヴォーカルが眩しい
8. Ritual Fire Dance 昔のRPGで使われていそうなインスト
9. Ah! Wretched Me まずまず速い。思わせぶりなイントロから想像するよりは地味だが良曲
10. A Music In My Soul いいバラード
11. E Lucevan Le Stelle ボーナストラックだけど、イタリア語で高らかに歌い上げられるこの曲が1番好きだったりする(邦題は『星は光りぬ』:ジャコモ・プッチーニの歌劇『トスカ』(1899年)の中でカヴァラドッシによって歌われるアリア)

聴き始めてから11ヶ月間で数十回通して聴きましたが、聴けば聴くほど胸に染み入るいいアルバムなので、記載することにしました。

2011年11月2日水曜日

(雑) 通学定期券ってこんなに安かったのか

これまで使っていた通勤定期券の期限が切れたので、通学定期券に変更してみました。
大学院生ですから。
そしたら、通勤定期券に比べて43%の価格(6ヶ月分の場合)で購入できました。半額以下ってどういうことでしょう。

学生になって給料が減ったにも関わらず、様々な税金や国民健康保険料(勤めているときは、自分と病院で折半して保険料を支払われている。何も知らないと、バイトになった後、勤務先の病院が払ってくれていた分も含めた高額の保険料を納めなくてはならない)は昨年の確定申告に徴収されるため、「また金の請求書かい!一体いくら、私から取ろうってんだい?!」と憤懣遣る方無き日々の中、この程度の得は許されるでしょう。…というか別に得でもないか。
この不景気極まりない世の中において、社会人になってから勉強できるのは、共働きの妻と、自分が麻酔科医という職についていたお蔭でして、そのことには心の底から感謝しつつも、通学定期券が思いのほか安かったこと程度で喜んでしまった自分が、ちょっと哀しい。
早く実験結果を出して喜びたいな。

2011年11月1日火曜日

(雑) 「超高齢」でも働き続ける秘訣?

日経ビジネス
「超高齢」でも働き続ける秘訣 (無料でできる会員登録をすると読める記事です)
によれば

・企業が抱える経営課題を解決した経験のある人
・社内外に幅広い人脈を持つ人
・日本語以外の言語を、少なくとも1カ国語話せる人
・独自の強み(セールスポイント)がある人
が老後も働ける秘訣らしいです(あくまでも1つの意見ということですが)。
まぁ、そりゃぁそうでしょうね。

逆を言うと
・経営課題を解決した経験がない人
・人脈がない人
・日本語しか話せない人(日本語もろくに話せない人?)
・セールスポイントのない人
はジリ貧の老後を送る可能性が高いのかもしれないってことでしょうか。こういう人は世の中たくさんいそうですが。

2055年に日本の高齢化率は4割に到達するらしいので、少なからざる人びとが厳しい生活を送らざるを得ない…とあちこちから聞こえてきますが、本当にそれほど悲観的な予測通りの未来がくるのでしょうか。来るのかなぁ。
日々の仕事や研究で時間の大半を消費している中、いかに数十年後のことを予測して行動すればいいのやら。目の前のことに一生懸命になって「今日もよく頑張った」と言っているだけの生活ではまずいということはよく分かるのですが。
頑張るだけでは、ダメなんだろうなぁ。

(音) 城南海(きずきみなみ) - 加那-イトシキヒトヨ- (日本, 2009年)

これっぽっちもメタルじゃないですが。

大学病院で麻酔科の当直をしていた頃。当直室で、彼女の歌声がブラウン管のテレビから流れてきて、思いがけず引きこまれました。それが、彼女の歌と出会った最初。
ファーストアルバム。
奄美大島、島唄、という単語から想像される通りの歌声なのですが、よいものはよい。
ただ曲によってはメロディのフックに乏しいため、右から左に流れて行ってしまう。#7や#13のような彼女の強みを生かした曲や、#11のような歌詞の曲(この曲はアンジェラ・アキが歌っても全く違和感なさそうだけど)がもっとあるといいなぁ。彼女の才能を最大限に引き出すような、神曲が生み出される日を待っています。

1. 太陽とかくれんぼ
2. アイツムギ
3. 四季ウタカタ
4. 蛍恋

5. 誰カノタメニ
6. 紅 7. 白い月
8. 月とペンギン
9. Sunrise
10. あさな ゆうな
11. つばさ (誰かの言葉が責めてるように響くのは 私が誰かを責めるから)
12. ココロのフィルム
13. 光 (album mix)

2011年10月31日月曜日

(本) 武器としての決断思考 - 瀧本哲史 (星海社新書, 2011年)

大学生が読むと、確かに糧になりそうです。理屈っぽいことを喋る理屈屋さんになるためにはツッコミを適切に入れる力が必要ですね。

***
・問題が大きすぎる場合には小分けにする
・~すべきか否か、で問いを立てる

@メリットへの反論の6項目 
<内因性への反論>そんな問題はそもそもないのでは?
・論題の行動を取らなくても問題は解決する
・そもそも現状に問題はない
<重要性への反論>問題だとしても、たいした問題ではないのでは?
・質的に重要ではない
・量的に重要でない
<解決性への反論>重要な問題だとしても、その方法では解決しないのでは?
・プランを取っても別の要因が生じるため、問題は解決しない
・プランは問題の原因を正しく解決しない

@デメリットへの反論の6項目
<発生過程への反論>新たな問題は生じないのでは?
・プランだけではデメリット発生にはいたらない(他の条件が必要)
・プランの影響はデメリット発生にいたるには弱すぎる
<深刻性への反論>問題が生じたとしても、たいした問題ではないのでは?
・質的に問題ではない
・量的に問題ではない
<固有性への反論>重要な問題だとしても、すでにその問題は生じているのでは?
・プランを取っていない現状でも問題は起こっている
・プランを取らなくても、将来、同様の問題が起きる   (p138-140)

***
取り敢えず、議論できるレベルにまで問題を細かく刻み、上の篩にかけて、より良いだろう回答を出す、ということでしょうか。これは、患者の状態や外科医の腕、施設の医療レベル、等々を秤にかけて、普段手術室で麻酔科医が無意識のうちに決めていること~A-line入れるのか、硬膜外麻酔やるのか、輸血するのか、手術室で抜管しないのか~そのものですね。この思考法は手術室だけでなく、様々な問題に対して使えるようですよ。困ったときには、頭の中で考えるだけじゃなくて、実際に書きだしてみて並べてみることも重要かもしれません。早速試してみよっと。

2011年10月30日日曜日

(音) ポップで陽気なメタル~Destrageの「The King Is Fat 'N' Old (王様はデブで老いぼれである)」(Italy, 2010年)

「Imaginary Flying Machines」の「Princess Ghibli (プリンセス・ジブリ) 」(2011年)収録、「崖の上のポニョ」は良曲でしたが、あの曲に参加していたDESTRAGE(デストレイジ)のアルバムに漸く到達しました。イタリアのメタルコアバンド。本作は2作目のスタジオアルバム。
この「Jade's Place」のPVは見てるだけで楽しいです(初めて動画を貼ってみました)。ヘヴィなんだけどとってもポップ。演奏のレベルも高い。アルバム収録曲は、この曲以外も総じてレベルが高く、フックのある歌メロ満載。メロディが明るくてとっつきやすいから、もっともっと売れてもよさそう。

2011年10月29日土曜日

(研) 抄読会(made in US)が終わった

太平洋上空で抄読会用の論文読んだり(私だってジム・キャリーが出てるペンギンの映画見たい!)、シカゴのホテルでパワーポイント作成していたのが何故なのか、今となってはよく分かりません。
風邪による嗄声のために今日に延期してもらっていた抄読会当番(in English)が、無事終了。あぁ、よかった。声が出るようになって。こんな事くらいで喜んでる場合じゃないのですが、喜ぶ。
抄読会用の論文を読み始めてから発表できる体裁にするまで、まだ3週間程度はかかることが分かりました。
しかし、引用文献はまるで読めていないし、論文中に出てくる知らないchemokineや受容体やらもGoogleさんや教科書で軽く調べる程度。肝心の発表も、スライドのFigureだけ見ながらスラスラ出来ればよいけれど、読み原稿に目を落としながらというレベル。内容が麻酔で、かつ日本語での発表ならもっと早く上手く出来るんだけどな…。
まぁできていないことを挙げれば切りがない。半年前にはまるで出来ていなかったのだから、進歩しているということにしよう。

(音) 黒夢のFAKE STAR〜I'M JUST A JAPANESE FAKE ROCKER〜 (日本、1996年)

メタルじゃないのですが。

10年ぶり(?)にこのアルバムを聴きました。そして、ここに閉じ込められていた音が、全く古くささを感じさせなかったことに驚きました。高校生当時もCDに無数の傷がつく程に聴きましたが、切れ味抜群の剃刀のようなロックと、歌謡曲のようなポップさがよい次元でミックスされているのが、今も楽しんで聴ける理由かも。
新たな発見としてはシングルだった#3、#6、#14の3曲に、当時感じていた魅力を感じなくなっていたこと。これらはもしかすると、当時の彼らが商業ベースにのっけられて、自分たちが創りたくないものを造らされているような力が働いていたせいなのでしょうか。今の自分にはあまり響かなくなってしまっていました。
逆に、とんがりまくっている#2や#4や#11はやりたい様にやっている、この時点における彼らの真骨頂のような気がします。#4の吐き捨てるような歌い方が(実際に最後には唾まで吐いてますが)実にすとんと腑に落ちるのです。これらの曲は10年前よりも好きになっています。
そして、艶やかなミドルテンポ#7、演歌歌謡な#15、チャイニーズな(?)#16など今聴いてもよい曲ばかりだ。
もうすぐ発売される新譜は恐らく全く異なった方向性になっているに違いありませんが。

1. Noise Low3
2. FAKE STAR
3. BEAMS[FAKE STAR VERSION]
4. BARTER

5. SE I“SUNNY'S VOICE”
6. SEE YOU[FAKE STAR VERSION]
7. REASON OF MYSELF

8. SE II
9. SEX SYMBOL
10. Cool Girl
11. S.O.S

12. SE III
13. HYSTERIA'S

14. ピストル[FAKE STAR VERSION]
15.

16. 「H・L・M」is ORIGINAL
17. SE IV“EITHER SIDE”

(麻) cardiac arrest during thoracotomy

おっかないタイトルは、単に私の妄想です。マイブームでもなんでもなく、最近の私は「術中心停止恐怖症」に罹患しているようです。

あぁ、冠動脈が3枝とも石灰化してる…右開胸術か。
術中に心停止したらどうしよう…と思って簡単に調べると。

・「麻酔 2010 Dec;59(12):1483-6.」では、「左」開胸術中に「動脈管索リンパ節」郭清中に高度徐脈と心停止を起こしている。心臓神経叢(迷走神経分枝)への刺激によるものと推測されている。
因みにエフェドリンとアトロピンと開胸心マで自己心拍再開している。

・「日本呼吸器外科学会雑誌 22: 1027-1032, (2008) 」では
「左」開胸、腫大した大動脈下リンパ節の摘除を行っていたところ,突然,洞性徐脈,心室性期外収縮から心停止に至った.直ちに開胸心マッサージを開始し,エフェドリンを静注したが,心拍は再開しなかった.開胸心マッサージを継続し,エピネフリンを投与すると,心拍が再開した.心停止から心拍再開までは約4分であった.切除術は断念。その後、非閉塞性肥大型心筋症と診断(術前は高血圧と不完全右脚ブロックのみ指摘)され、手術前日に一時的ペースメーカーを留置した後,初回手術から44日目に全身麻酔のみで再手術を行った.特にイベントなく無事終了。
考察で、硬膜外麻酔による心臓交感神経遮断が徐脈・心停止の一因となった可能性?とある。

脱線するけれど、上記論文内で、「臨麻1993;17:521-2.」が引用されていて、
「閉胸式心マッサージにより心肺蘇生が得られたが脳蘇生の点からは不十分であった理由として,HCM のため心臓内腔が狭く,閉胸式心マッサージでは脳血流が十分に維持できないことが考えられている」とあった。
これも臨床上の注意点かな。覚えておこう。

***
ということで、「左」開胸時の方が、心イベントが多く発生するだろうことを再確認しました。だから何なんだ…。

2011年10月27日木曜日

(音) Pain Of Salvation の Road Salt One (2010年)とRoad Salt Two (Sweden, 2011年)


「Road Salt One」について書いた記事を。


私の人生の金字塔アルバムの「The Perfect Element Pt. 1」(2000年)と比べてはいけませんが、7作目のスタジオアルバムとなる本作「Road Salt One」は、過去の作品に比べたらプログレッシブ・メタルの要素は控え目で控え目で控え目で全然違うバンドなんじゃないか、という批判も飛んできそうです。そして本作は、多くのファンが離れて行ってしまうかも知れないほどの冒険となったに違いありません。バンドは自分たちの間口の広さやルーツをお披露目する意味でやっているのかも知れませんが。音像は、よりストレートなロックサウンド(70年代ロックへの憧憬と表現できそうな原始的なロック?)になっていますが、メタル耳の私にも十分楽しめる作品で安心しました。むしろ所謂70代ロックをロクに聴いたことが無い耳だからこそ楽しめるのかも知れませんが。

なんといっても1番のお気に入りは#3「Sisters」。暗く物悲しい鍵盤。無駄を排した曲構成。Daniel Gildenlöwの美声にうっとりできます。メタルバンドのバラードなんて…と思っている方には是非聴いていただきたいと思います。私的にはこの曲に出会えただけでも本作を手にとった甲斐がありました。

#6「Sleeping under the Stars」も非常に面白い曲。 1:15-1:30で奏でられるようなリリカルなギターの調べにグラっときます。

1. "No Way" 5:26
2. "She Likes to Hide" 2:57
3. "Sisters" 6:15
4. "Of Dust" 2:32
5. "Tell Me You Don't Know" 2:42
6. "Sleeping Under the Stars" 3:37
7. "Darkness of Mine" 4:15
8. "Linoleum" 4:55
9. "Curiosity" 3:33
10. "Where It Hurts" 4:51
11. "Road Salt" 3:02
12. "Innocence" 7:13

以上、2010年10月3日記載。

***
そして「Road Salt Two」です。

初期のプログレッシブ・メタルをなかったことにするかのようなロックサウンドへの方向転換があった前作「Road Salt One」(2010年)。音楽性が全くといっていい程変わってしまっても「Sisters」のような涙腺決壊バラードを作られてしまうと、私としてはフォローせざるを得ないのです。本作は8作目のスタジオアルバムです。
iTunes StoreにてLADY GAGAの「Born This Way」が1200円になっており、ちょっとだけ食指が動きました。けど、あちらさんを買う人は世の中に数百万人単位で存在するでしょうから、こちらさんを買うことにしました。

音楽の方向性は「Road Salt One」と一緒です。前情報通りでしたが、やっぱり何度聴いてもおんなじ方向です。プログレッシブメタルを聴きたい人はさぞかしがっかりするでしょう。

しかし、このアルバムからはヴォーリストでかつギタリストなDaniel Gildenlöwがやりたい様にやってる自由奔放さ、ある種恍惚的な世界を感じます。本作は最早メタルですらない。私にとってはDanielの極ウマなヴォーカルさえ聴ければいいのかも。
1回聴いただけでいいメロディとわかる、リスナーに優しい作りの#4、郷愁にかられる#8、曲後半の浮遊感が心地よい#13あたりが今のところのお気に入り。


1. "Road Salt Theme" 0:45
2. "Softly She Cries" 4:15
3. "Conditioned" 4:15
4. "Healing Now" 4:29 
5. "To the Shoreline" 3:03 
6. "Break Darling Break" (bonus track) 2:22
7. "Eleven" 6:55
8. "1979" 2:53 
9. "Of Salt" (bonus track) 2:36 
10. "The Deeper Cut" 6:10
11. "Mortar Grind" 5:46
12. "Through the Distance" 2:56
13. "The Physics of Gridlock" 8:43 
14. "End Credits" 3:25
15. "Last Night"
16. "Thirty-Eight"

バンドメンバー
Daniel Gildenlöw - lead vocals, electric and acoustic and fretless guitars, bass guitar
Fredrik Hermansson - electric and acoustic pianos, organs, mellotron, other keyboards
Johan Hallgren - electric guitars → バンドから脱退が決まっているようです(10/21 official HPより)
Léo Margarit - drums

メタルのフィールドに、Daniel Gildenlöwはもう帰ってこないのでしょうか。個人的には帰ってこなくても彼自身が満足できるような、よいアルバムを作り続けてくれていればよいです。寂しいですが。それよりも心配なのが、誰をメインターゲットにこれからのアルバムを売るか、ということでしょうか。この路線のままでは、メタルリスナーはPain of Salvationのアルバムを購入しないでしょう。かといってロックファンが注目してくれるかというと・・・?商業的に困窮すれば作りたいものが作れなくなって、アルバイトで生計立てつつ音楽活動を…なんてことにもなりかねないのでは。それはそれで名盤を作る原動力になるのかもしれませんが。
時々「The Perfect Element part.1」や「Remedy Lane」みたいなオールドファンたちが喜ぶアルバムを作って、後は自分の趣味に走った実験的な作品をつくる…ってのが私としては嬉しいですが、まぁそんな簡単じゃないでしょう。
メタルファンからは酷評される、もしくは評価の対象外、もしくは買って聴かれることすらないアルバムになってしまったかもしれませんが、私としては、遠くから温かい目で見守っていきたいと思います。

(雑) 矢張り頑張らないのが1番

裁判官は、内科医が「病気やない、甘えなんや」「薬を飲まずに頑張れ」などと力を込めて言ったことについて、「安易な激励や、自助努力を促すような言動で病状が悪化する危険性を避ける注意義務に違反した」と述べ、発言と病状悪化との因果関係を認めた。 

→「『頑張れ』などの発言は違法」として、60万円の支払いを命じた。

***
この記載では
・どれ位、医者が力を込めて言ったのか
・どの位、患者の病態に対して安易な激励だったのか
・どの位、自助努力を促したのか
・どの位、患者の病状が悪化したのか
・患者の病態が悪化するような、その他の交絡因子はなかったのか

が、まるで分からないので、「私がこれから出会う患者さんから訴えられる可能性を低減させること」(即ち私の不適切発言によって傷つく可能性のある患者さんの発生率を下げること)に全く役立ちません。勿論、そんなことを意図しての報道ではないでしょうけれど。
麻酔科医としての私は、 取り敢えず、手術室で患者さんの全身麻酔導入前に「頑張りましょうね~」と無責任に言う外科医や看護師、研修医を取り締まろうかな~と思ったりします。
それはやらないにしても、夜中の3時の緊急手術時でも、患者さんや家族に頑張りましょうというのは止めておいて、こっそり自分の中で頑張ろっと。

2011年10月25日火曜日

(雑) カマンコウルド(其の弐)

本を読みました。

「一生風邪をひかない体のつくり方」 (知的生きかた文庫, 2011年)

普通の医者はあまり手に取らないであろうタイトルです。
しかし、私は「風邪をひかない」どころか、医者になってからも年に数回風邪をひく風邪の猛者、常連客なので、もういい加減そんな生活に嫌気がさしました。そして、何でもいいから風邪をひかなくなりたい(若しくはせめて、風邪を引く回数を1回/年、程度にはしたいなぁ)と思って、 読んだという次第。

規則正しい生活、早寝早起き、禁煙、深酒をやめる、適度な運動をする、適度な肉食をする、ビタミンは野菜で足りなければサプリメントで補う、手洗いうがい→うがいは口うがいだけではなく鼻うがい(ぬるい生理食塩水で)も行う、人ごみに出かける際や飛行機にのる際にはマスク着用、コンビニの弁当は極力食べない、などなどが書かれておりました。

私の場合、

・当直日に、「いつ急患が来るだろうか」と思ってビクビクしながら起きていないでさっさと寝る
・酒は極力飲まない
・少しは肉を食べる
・サプリを摂る
・鼻うがいをする
・人ごみではマスク着用
・コンビニ弁当食べない…当直日には3食分持参すればいいのでしょうか

ぐらいかな。あと、やるとすれば。
とか何とかと、ごちゃごちゃと悩んでるから風邪ひくんじゃなかろうか?私の場合。

(麻) 久しぶりにJB-POTネタ

もうすぐJB-POTですね。

一昨年、英語のJB-POTを受ける際には原著の方にお世話になった、「Perioperative Transesophageal Echocardiography Self-Assessment and Review」の邦訳が出たんですね。


「周術期経食道心エコー図―効率的に学ぶために」(真興交易医書出版部 (2011/10))
Amazonでは今日現在品切れのようですが。

邦訳の価格を見てぎょっとしましたが、原著も1万円くらいすることを考えるとお得かもしれません。私自身はこの問題集で間違えまくって暗澹たる気持ちで受験したのですが、何故か合格できました。
邦訳なら勉強が捗るでしょうね。
私がもう一度JB-POTを受けるならばこの本は「買い」です(勿論日本語訳が正確であれば、ですが。注:訳された先生方にケチを付ける意図ではなく、試験問題において「~は上昇する」とか「~は減少する」とかそういうところが誤訳だったりするとクリティカルになるので、すべての翻訳の本においてそれを懸念しての発言です)。が、本番の問題傾向が、問題集と異なっても泣き寝入りするしかないのですが。

2011年10月22日土曜日

(雑) ジェットラグとカマンコウルド

シカゴから帰って、数日経ちました。帰国便に乗る前から頭痛・鼻水・悪寒が止まらず、かと言って帰らないわけにはいかないので、帰国便ではじぃっと窓際の席に押し込められたまま13時間座ってました。帰途に着く頃には、日本から持っていった風邪薬は全て飲み尽くしていたので、オヘア(O'hare)空港に売っていたアメリカのCONTAC(アセトアミノフェン500mg+フェニレフリン5mg/1錠)を機内で内服したのですが、鼻汁の勢いになす術なし、といった状態。 ホテルで大量にティッシュペーパーをもらっておいてよかった。

 シカゴ行きの飛行機では一睡も出来ませんでしたが、帰りは具合も悪かったので13時間中、6時間は眠っていた気がします。起きてする事といえば鼻をかむ事と、与えられた食事をとる事、トイレに行く事。家畜のような。

そんなアメリカ便のセットリスト
@往路
・宇多田ヒカル/ Wait & See 1曲
・Labyrinth : Return To Heaven Denied Pt. II  
・Yngwie J. Malmsteen: Trilogy
・Yngwie J. Malmsteen: Trial By Fire: Live In Leningrad
・ALI PROJECT: dilettante
・As I Lay Dying: The Powerless Rise
・Adagio: Archangels in Black 7曲目まで。
・My Chemical Romance: Three Cheers for Sweet Revenge
・Strapping Young Lad: heavy as a really heavy thing
・Strapping Young Lad: City
・Rhapsody of Fire: From Chaos to Eternity
・ChthoniC: Takasago Army
・山口百恵: GOLDEN☆BEST / PLAYBACK MOMOE part2 Disk1-2
・Wuthering Heights: Lost at Sea 1曲
・Wig Wam: Hard To Be A Rock'n Roller...
・Septicflesh: The Great Mass
・Queen: More of that Jazz 1曲
・PENICILLIN: Ultimate Velocity
・ACCEPT: Staying A Life [Live] Disc1-2 このアルバムの熱気って凄すぎる
・HALFORD: Live Insurrection Disc1-2 やっぱりJawbreakerって凄い曲だ
・Blind Guardian: 東京物語
・Primal Fear: Jaws Of Death

@帰路
・Yngwie J. Malmsteen: Concerto Suite for Electric Guitar and Orchestra in E Flat Minor LIVE with the New Japan Philharmonic
・Dark Lunacy: The Diarist
・JUJU: Request 何周かした
・宇多田ヒカル: Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL. 2 (2010) こちらも何周かした
・Queensryche: Operation: Mindcrime

 帰国してから発熱し、開業医のところに行って大量の風邪薬を処方してもらい、飲んで昼間に寝ていたら今度は夜中に全く眠れなくなり(シカゴ滞在中から睡眠リズムがおかしくなってしまっていたのも理由の1つ)、その状態のまま麻酔しに行ったら20時間ほぼノンストップで1件の予定手術(久しぶりに気管支ブロッカー使ったよ)と3件の緊急手術の麻酔をして、終わったのは夜明け近く。また眠れず。抄読会の英語の練習をしたくとも、咽頭痛・黄色い痰・嗄声のためにうまく出来ない。そんな感じで今日も生きています。
精神的には元気でも、体がそれに追い付いてこない状態というのは、結構ストレスです。「休みなさいっていうサインだよ」ってことなのでしょうが、横になっても眠れないので困っています。時差ボケと睡眠障害の人の気持ちが、ほんの、ほんのちょっぴりだけわかったような気がするというのが、この旅行の収穫でしょうか。

漸く 麻酔関連の行事が終了したので、本業の大学院生活に戻れる…といいな。

2011年10月21日金曜日

(雑) TPPって…

ちょっと前ですが。

環太平洋経済連携協定(TPP)に日本が参加すべきだと思う人は51%で、「参加すべきでない」23%を上回った。(2011年10月7日~9日の読売新聞社の電話による世論調査)

今更ですが。TPPとは「環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement)」。参加国:シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの自由貿易協定(FTA)として2006年に発効、その後、米国、豪州、ベトナムが参加、現在は計9カ国。

上記調査に「参加すべき」と答えた過半数の日本国民の方々は、TPP参加で、本当に日本が豊かになると考えているのでしょうか。上記の国々で日本の輸出を押し上げるような財力のある国はアメリカしかない気がしますが。そしてそのアメリカの失業率は9%以上です。テレビ情報では、農業のことばかり取り上げられますが、医療も自由競争の俎上に上げられます。
人・モノ・金・サービスの移動を全て自由化する、というのがTPPの本質だとしたら、医療費は高騰し、国民皆保険制度は崩壊し、医療サービスが受けられずに死ぬ経済的弱者が増え、不景気で儲からないアメリカ人弁護士が日本に上陸して、今よりも医療裁判が増える(そして私は訴えられて路頭に迷う)。

メディアは概ねずっと「参加したほうがよい」という論調だったように、私は感じているのですが、もう一度、「TPPに日本が参加するとどんないいことがあるのか、悪いことがあるのか」というところから説明して欲しいと私は思います。これは情報操作なのか、TPPに参加するとメディアに何か儲かる話があるのでしょうか。

年金の支給開始が遅くなることより、TPP参加の方が大問題の気がします。 上記のことが全て、単なる私の誤解と妄想なのだとしたら、どなたかその誤解を解いて、安心させてくれないでしょうか。もうちょっと学ばないとダメだな、こりゃ。

2011年10月18日火曜日

(音) 太平洋上で嬉しい誤算だったAS I LAY DYINGのThe Powerless Rise (US, 2010年)

アメリカのバンドが奏でるメタルがメロディアスじゃなかったのは、もう遠い昔…という逆説的な懐古主義に浸ることのできる1作。2001年から活動、本作はスタジオアルバム5作目。このバンドの作品は初めて聴きます。

ASAに向かう上空で、思いがけずその良さにハマってしまった一作です。

このバンドの音はメタルコア、というジャンル(メタル+ハードコア)に分類されるようです。ハードコアどころかメタルコアというジャンルの音を聴いたことが殆ど無いので、そのジャンルの中での本作の位置づけは私にはよく分かりません。なので、欧州のバンドの奏でるメロディックデスメタルに鍛えられた耳として本作を聴くしかありませんが、そんな私でも、殆ど努力することなく楽しめます。というか、かなり良い。破壊力抜群のヴォーカルと時折垣間見られるクリーンヴォイス(#4とか#8とか#9のサビとか)、随所でスリリングに聴かせるギターソロやわかりやすいリフの数々、ブラストビートから想像するに、メロディックデスメタル好きな人にも十分アピールする作品です。北欧バンドを凌駕するかの如き哭きフレーズを小出しに連発してくるのでぐいぐい惹きつけられます。もっともデスメタルやブラックメタルファンにとってはメロディアスすぎて、お子様向けな音に聴こえるかもしれませんが。
私的には、近年のChildren of BodomやSoilworkの作品より楽しめました。本作は、より聴きやすくなった「The Crown」という印象です。1曲1曲がコンパクトな長さなのもよい。即効性が高い分、時間の流れに耐えられるかどうか、が気になります(つまり百回単位のリスニングに耐えられるか、何年経っても飽きないかどうか)。
本作は専門誌でもバンドの最高作と評されているようです。これ以上のメロディはこのバンドには不要だと思います(この作品しか聴いていないくせに大変おこがましいですが)が、次作以降でもっともっとパワフルに我が道を突き進んで、メタルシーンの一角を牽引して欲しいと願います。

近々発表されるカヴァーアルバムにJudas PriestのThe Hellion ~ Electric Eyeが収録されているようなので、そちらもどんなアレンジになっているか楽しみ。

1. "Beyond Our Suffering" 2:50
2. "Anodyne Sea" 4:35
3. "Without Conclusion" 3:15
4. "Parallels" 4:57
5. "The Plague" 3:42
6. "Anger and Apathy" 4:26
7. "Condemned" 2:50
8. "Upside Down Kingdom" 4:00
9. "Vacancy" 4:27
10. "The Only Constant Is Change" 4:08
11. "The Blinding of False Light" 5:05               Total length: 44:15

色付けはあくまでも相対的に、ですが。

(麻) 周術期ACLSの簡単なまとめ

TEEとか末梢神経ブロックとか勿論大事なのですが、生死に関わるピンチのときに何も出来ないと麻酔科医のアイデンティティが大きく損なわれる気がします(TEEは勿論life threatening situationにもパワーを発揮しますが)。ピンチの際には下のまとめなんて見ている余裕は当然無く、頭より先に体を動かさねばなりません。鑑別診断リストなんて覚えようとしていたら覚えられませんが、瞬時に色々思いつかないと患者さんを永遠に失いかねません。
ちゃんと勉強しないとな…。

***
Anesthesiology. 2003 Aug;99(2):259-69.によると・・・
・非心臓手術で周術期に心停止を起こした症例を検討。
・1990から2000年の11年間、Mayoクリニックにて。
・518,294麻酔中223人が心停止。(4.3 per 10,000)
・対全麻では (7.8 per 10,000 during 1990-1992; 3.2 per 10,000 during 1998-2000)
・対局麻では(1.5 per 10,000)
・MAC(monitored anesthesia care)では (0.7 per 10,000)
・心停止後生存率は46.6%, 生存退院は34.5%.
・24人(0.5 per 10,000) は麻酔に直接原因のある心停止。
(つまり麻酔が原因は24/223人で心停止中10%弱)
・多変量解析では出血による心停止患者は生存退院率が有意に低い(P = 0.001).
・時間外(nonstandard working hours)心停止患者では生存率が低かった(P = 0.006)。
これは蘇生にかかわれる人出が足りないためであろう。
・心停止前に長期に低血圧が続く患者も生存率が低かった(P < 0.001).
・多くの心停止が麻酔関連原因ではなかった。麻酔関連心停止患者の多くは生存退院していた。
***

・心室性頻脈>150 bpmによる重篤な症状等があれば直ちに除細動する

@周術期にACLSを要す麻酔薬関連原因
・静脈麻酔薬過量投与
・吸入麻酔過量投与
・区域麻酔による高位交感神経ブロック
・局所麻酔薬による全身的毒性
・悪性高熱症
・薬剤投与エラー

@呼吸による原因
・低酸素血症
・急性気管支痙攣
・autoPEEP

@心血管系による原因
・迷走神経反射
・循環血液減少、出血性ショック
・緊張性気胸
・アナフィラキシー
・輸血に対する副作用
・高カリウム血症等の急激な電解質異常
・重度の肺高血圧
・腹腔内圧上昇
・ペースメーカー不全
・QT延長症候群
・急性冠症候群
・肺塞栓
・ガス塞栓
・眼球心臓反射
・電気けいれん療法

@オペ室での蘇生ポイント
・全麻下であれば患者の意識有無を呼びかけ確認する必要がない
・適切な人間にCPR開始を指示すること
・麻酔と手術を中止すること
・助けを呼ぶこと、除細動器をもってきてもらうこと
・挿管されてなければBMVを行い、その後挿管すること
・不用意にCPRを中止しない。脈拍触知よりもカプノグラフィの方が循環再開の鋭敏な指標となる
・換気は8-10回/分。100%酸素。
・全ての静脈ラインは全開にする

@以下は区域麻酔について
・区域麻酔中の心停止は1.8 per 10,000 patients (neuraxial)
・頻度は脊麻>硬麻 (2.9 vs. 0.9 per 10,000 ; P = 0.041) (Anesth Analg 2005;100:855-865).

@区域麻酔中の心停止治療
(注意:勿論下記だけでは全ての状況はカバーできない。局麻の過量投与や頻脈、ガス塞栓、産婦ではそれぞれの状況に応じて治療する必要あり)
・中止できる麻酔や鎮静薬は中止
・100%酸素で換気、挿管。
・症候性徐脈や脈なし10秒以上ではCPR開始。
・徐脈は1mgのアトロピンで治療
・1mg以上のアドレナリン静注で治療(0.1mg/kgまで)
・40単位のバゾプレッシン併用を考慮

@周術期PEA・心静止の鑑別診断(8H & 8T)
Hypoxia Trauma/hypovolemia (低酸素、外傷/循環血液減少)
Hypovolemia Tension Pneumothorax (循環血液減少、緊張性気胸)
Hyper-vagal Thrombosis of Coronary (迷走神経過緊張、冠動脈血栓)
Hydrogen Ion Tamponade (アシドーシス、タンポナーデ)
Hyperkalemia Thrombus in Pulmonary Artery (高カリウム血症、肺塞栓)
Malignant Hyperthermia Long QT syndrome (悪性高熱症、QT延長症候群)
Hypothermia Toxins (anaphylaxis) (低体温、薬物-アナフィラキシーなど)
Hypoglycemia Pulmonary HTN (低血糖、肺高血圧)

***
勿論、上記の記載は全てを網羅していません。臨床の問題に決まった答えは1つとしてなく、あくまでcase by caseです。
自分がこれまで治療に関わった、オペ室で心停止を起こした患者さんたちのことを、朧気に、しかしはっきりとシカゴで思い出します。

参考文献
Adapting ACLS to the Perioperative Period (Anesthesiology 2011 refresher course lecture summary)

2011年10月17日月曜日

(本) After Dark - Haruki Murakami (2004年)のメモ

原著を読んだ後に英語翻訳版を続けざまに、読んでみました。
"Has your father ever gone to prison?"
She shakes her head. "I don't think so."
"Your mother?"
"I don't think so"
"You're lucky. You should be grateful that's never been a part of your life." Takahashi smiles. "I don't suppose you know that."
"Never thought about it."
"Most people don't. I do." (p.146)

"Well, finally, once you become an orphan, you're an orphan till the day you die. I keep having the same dream. I'm seven years old and an orphan again. All alone, with no adults around to take care of me. It's evening, and the light is fading, and night is pressing in. It's always the same. In the dream I always go back to being seven years old. Software like that you can't exchange once it's contaminated."(p.148)

"Let me tell you something, Mari. The ground we stand on looks solid enough, but if something happens it can drop right out from under you. And once that happens, you've had it: things'll never be the same. All you can do is go on living alone down there in the darkness."
Korogi stops to think again about what she had just said and, as if in self-criticism, gently shakes her head. (p.158)

今自分がいる、この場所は、矢張りとても脆い場所で、昨日までの自分が何とか社会とのつながりを保ってやってきたことの上に成り立っているんだっていうこと。当たり前のこと。そう、当たり前すぎて誰も言わない。誰もが知ってるから。
その脆い場所が、気がついた時には壊れているということもあるんだろうか。壊れたときには壊れたことすら気づかないのだろうか。

2011年10月16日日曜日

(旅) Anesthesiology 2011 ~ASA day 0~1 海外初ポスター発表

Chicago Tribune紙の創業者Robert McCormickから名前をとった”McCormick Place”は、迷子になるなという方が難しいような巨大な建物群で成り立っています。シカゴのガイドブックを真剣に読み始めたのが出発前日…という私でもそれだけは知っていました。気を抜くとすぐに迷子になる私は、発表の前日、学会参加登録証を貰いに来るついでに下見に。と言っても巨大すぎるので、自分のポスターを貼り付ける場所が会場全体のうち、どのあたりに位置するのか、を把握しただけ。Metraという電車を使って会場まで来たのですが、券売機の読み方に苦戦したり、ホームで待っていたら「次の電車何時にくんの?University Park行き?(in English)」と黒人のお姉さんに聞かれたり、ちょっとドキドキします。何処からどう見てもasianな私に聞いても分かる筈ないと思うのですが。乗車時間はほんの数分。電車の窓が埃で薄汚れていてあまりよい眺めではありませんでした。


という下準備の元、発表の朝を迎えます。まだ暗い中、6:30にホテル前の迎えに来るシャトルバスに乗って会場へ。朝もはよから、バスには数十人の麻酔科医らしき人たちがいました。
空を見上げるとまだお月様が。
会場内はまだガラガラです。遠くに「ANESTHESIOLOGY 2011」と掲げられております。一応ちゃんと行って来ましたよ、という証拠写真です。 昼間に同じ場所を通ったら…まぁ凄まじい混雑具合。東京から来たのに、また東京の通勤ラッシュの中に戻ってきたような気分になり具合が悪くなりました。
 ポスター会場は、企業ブースの隅っこの方にありました。巨大ラリマ。
同じく巨大モニタ。

発表についてです。
座長の先生(2人)がポスターを1枚ずつ回り、演者はその先生方(+聴きに来た聴衆)の前でプレゼンをするという、日本の学会と同じスタイルです。私の発表の順番は早めの時間だったため、聴衆は疎らでしたが、こちらとしてはそのお陰で、過度の緊張を強いられることなくプレゼンを終えることができました。いきなり座長の先生に握手を求められ、おぉアメリカン!と一人感動。私の英語が本当に聞き取って貰えていたのかについては、今となっては闇の中。ですが、プレゼンの最中に座長が適切なタイミングで、内容に即した適切な質問をしてくださっていたので、まずまず伝えたいメッセージは伝えられたのではないかと思います。あぁよかった。小さなメモ用紙にプレゼン内容を書いていったのですが、結局それは見ず、ポスターを指し示しながら喋り、そして、聴いている方々がちゃんと内容に着いてきて下さっているのかを確認しながら話すことができたので、目標は達成されたということにしたいと思います。5-6個質問もされましたが、何故か応答することができました。奇跡です。
そして、日本の学会と大きく異なるのはポスターセッションの時間が3時間もあることです。その3時間は自分のポスターの前(もしくはその付近)に立っていなくてはならず、それが結構大変です。夜中には全然眠れなかったのに、今頃になって眠くなってきます。そうこうしていると時間が経って無事終了。会場に来て下さったI先生、ありがとうございました。

*** 
学会はまだ続いていますが、発表までにどんなことをしてきたのかの記録を残しておこうと思います。
このブログを読んでくださる方の中に、もしかしたら今後、アメリカ麻酔学会に初めて抄録を提出し(させられ)、採択され、ポスターをつくり、発表原稿をつくり、念仏のように原稿を口に出して練習し、渡米し、発表する、ということにチャレンジされる方がいらっしゃらないとも限らないので、私がこの半年でやったことを記しておきたいと思います。まぁ、こんな人間もいるんだな、という程度にでもご参考になれば。

***
4月:抄録を作成する。指導医と何度かメールのやりとりをして完成にこぎつける。 
4月29日:抄録をオンラインで提出。締切日、締切時間の超直前は避けないと。
7月4日:演題登録時には6月中に採択の可否がメールで送られてくると通知があったのですが一向に来ない。しびれを切らしてメールで問い合わせると、すぐさま返事が来ました。流石ASA!と思ったらauto replyで「The ASA office will be closed on July 4th.」あぁそうか独立記念日だから。
7月5日:メールの返信が来て「2週間以内には通知します」
7月9日:当直中、眠気まなこにメールチェックしたら採択されていました。
7月11日:更に英語リスニングに力を入れようと思い、iPod nanoを英語リスニング強化仕様にした途端に故障。オンラインで修理を依頼したところ、手元に戻ってくるまで1週間かからず驚嘆。
7月12日:ポスター作成規定を読む。ふむふむ…と作成開始
毎日暑い
7月25日:麻酔科専門医試験が1日早く開始になる、という情報にちょっと動揺
本当に暑い
7月30日:研究室の英語抄読会を終え、ストレスが1つ減り安堵
8月1日:飛行機とホテルと、学会参加登録をする。1ドル77円で円高がちょっとありがたい。学会のホームページからホテルを選ぶ。あぁなんでこんなにホテルの値段が高いんだ。しかもどこも結構会場から遠いぞ。予約可能なホテルの中で1番会場に近そうなところを予約。
何でこんなに暑いんだ
8月27日:連日の暑さに、やる気の低値更新中だったが、漸く底値を脱した気持ちになってくる。モーツァルトのレクイエム「Rex Tremendae」を無限リピートしつつ、ちまちまとポスター作成。
9月5日:作ったポスターを指導医にみてもらう
(9月29日~10月1日:麻酔科専門医認定試験)
10月1日~:試験が終わった直後からポスターと発表原稿の手直しを再開。
10月3日:思いだしたかのようにASAのリフレッシャーコースの申し込みをオンラインでする。どれも$0で申し込めるようになっている。どうやら今年は無料で席も早い者勝ちのようだ。
10月5日: ポスター発注。原稿の喋り練習をスキマ時間に行う。ぶつぶつぶつぶつ
10月12日:大学で予演会。もっとブラッシュアップしなきゃダメか。ぶつぶつぶつぶつ練習
10月13日:ワシントンD.C.のダレス国際空港で乗り継ぎ便に間に合わずチケットの交渉。あぁ英語、全然聞き取れない。こりゃ駄目だ。もう帰ろうかな。
10月14日-15日:ホテルの部屋で最後の練習。

@役に立った本など。大変お世話になりました。
・地球の歩き方 シカゴ'10-'11. ダイヤモンド社
・タビトモ シカゴ. JTBパブリッシング (2010/12/28)
国際学会English挨拶・口演・発表・質問・座長進行. 医歯薬出版 (2007/04)
国際学会Englishスピーキング・エクササイズ口演・発表・応答. 医歯薬出版 (2010/03)
英語抄録・口頭発表・論文作成虎の巻―忙しい若手ドクターのために. 南江堂 (2006/4/17)
・ポッドキャスト: OpenAnesthesia.org ほか
・本:The Checklist Manifesto: How to Get Things Right. Atul Gawande :ASA学会での講演をぜひ聞きたかったのですが、自分の発表の時間と重なっていたので、著書を読んで我慢しました。
カラープリントショップアドテック :ポスターはこちらにお世話になりました。データを送ると翌日には届けてもらえました。筒でポスターを持っていくのはちょっと…という方は考えてもよいかもしれません。布ポスターは値が張るので若干躊躇しますが、利点としては、折りたたんでも破けたり印刷が滲んだりしないため飛行機内持ち込み用のカバンに収納できることです。海外に行くと、スーツケースが行方不明になる危険性もあるので、ポスターは肌身離さず持っていたいものです(特に私のような初心者は)。

今度発表できるのは、いつになるかな…。

(麻) 麻酔科専門医認定試験・口頭と実技試験 ~ A homage to Prof. S

麻酔科専門医認定試験を受けた方であれば、「俺はどんな問題でも完璧に答えられるぜ」という一部の奇天烈な麻酔科医を除いて、み~んながお世話になったであろうwebサイトに最大限の敬意を払い、私の受験記を掲げてみたいと思います。
間違ったことを言っている箇所もありますが、可能なかぎり再現してみました。最早、記憶の彼方ではありますが。

***
12時40分に集まって以後私語厳禁。13時過ぎに誘導されてエレベーターで8階の会場へ。薄暗く長い廊下の左右に椅子が点々と置かれ、試験のお手伝いをしてくださる女性たちが各部屋の前に座っている。なんだかなぜだかいつかどこかでみた映画のワンシーンみたいだ、とぷちぷち感動して、なんだか「マトリックス」が見たくなってきたなぁ。と思っているうちに自分の椅子に誘導され着席する。

前情報通り、5分間の問題文読みとメモ記載。しかし、書くことがない。
「書ける」ことがない。
5分って意外に長い…。

部屋に通されると右に男性、左に女性の先生が座っている。

1問目
70歳の女性が転倒して大腿骨頚部骨折。20年来のリウマチ(RA)。大腿骨頭置換術予定になった。

A先生(以下A):問題文は読んだ?はい、じゃぁRAの方の麻酔上の問題点を挙げて下さい。
―(あ、もう始まってんのか)は、はい。ぺらぺら。(あれ、でもあんまり言うことが思い出せないや)
A:ステロイドの長期内服で注意することはなんですか。
―は、はい。(とステロイドの合併症を説明)

その後、環軸椎亜脱臼でどういう症状が出るのか、どうして出るのか、など質問。

A:はい、先生はどんな麻酔をしますか。
―私なら、抗凝固薬内服中などの禁忌がなければ、脊髄くも膜下麻酔を行います。
A:何をどれくらい使いますか
―等比重のプピバカイン(あぶね、マーカインって言いそうになった。一般名で答えなきゃ)を・・・2.4-2.8ml程度だと思います。Th10を目標に。(あ、穿刺部位も言ったほうがよかったかな…ん?もっといっぱい入れるのが好きな先生なのだろうか?そんな量でTh10まで行くか!って思ってんのかな?…表情からは全然わからない…)
A:どっち向きに?
―え、えぇと痛いので患側が天井側になるように…
A:じゃあこの方が抗凝固薬を飲んでいてね、先生がおっしゃるように脊麻ができないとします。挿管全麻でやるとして気道確保の方法を教えて下さい。
―私なら、経鼻ファイバー挿管で行います。(口が開けばAWSだけどなぁ…と思いつつ)
経鼻ファイバー挿管のやり方を教えてください。
―最初に鼻の中を麻酔します。4%リドカインとアドレナリンを混ぜて…
A:どのくらいの割合で混ぜるの
えーとリドカイン9mlにアドレナリンを1mlで10000倍にして…
A;えぇ、そんなに濃いの??それだと何倍になるの?

このあたりから離人感でいっぱいになる。あ、あれ、そんなにいれないぞ俺。
以下、何問か聴かれたけどこの時の離人感ですっかり失念する。

A:手術が終わってリカバリにいたらね、急に「胸が苦しい」って胸部苦悶感を訴え始めました。鑑別診断を挙げて下さい
―鑑別診断は
・肺塞栓
・気胸
・喘息発作
・ACS、急性冠症候群
・稀ですけど大動脈解離
あとは…麻酔中の出血過多や輸液量が少ないことによるhypovolemiaで血圧低下が原因かも知れません…あとは…
 A:(言い淀んでいたら遮られて)はい、ではどう対応するか教えてください
―まずモニターを装着して酸素を投与開始します。救急カートを持ってきてもらいます。NIBPとSpO2と心電図、あれば12誘導ECGでバイタル確認します。取り敢えずのバイタルが保たれていればポータブルのエコー装置で肋間や剣状突起下から心臓の動きを観察します。右心系の負荷があるか、左室壁運動の極端な低下があればおそらく分かると思います。同時に採血でD-dimer、これは手術の影響もあるので高くなっていて役に立たないかも知れませんが、とトロポニンT値を測定します。その後に循環器内科のDrに連絡して診察をお願いすると思います。
A:じゃぁ以上です。(B先生に対して)じゃぁ先生の番ですね。

2問目
手術不能の進行期膵臓癌の治療のために疼痛コントロール目的に入院となった。

B先生(以下B):がんの痛みの分類を教えて下さい。
―(ちーん、はい終了。痛みの分類?そんなのありましたかな?取り敢えず知っているものを並べてみよ)
…体性痛、内臓痛、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛……があります。………後はわかりません…
B:この癌の痛みの原因を教えて下さい。
―(え?何で痛いかって?神経を刺激してるからじゃないか。)えーと、腹腔神経叢に癌が浸潤しているのと…局所の圧迫なんかによる痛みが…考えられます。…脊椎浸潤等による骨の痛みもあるのかもしれません…(あぁ沈黙が痛い。痛い。もう帰りたい)
B:この方の痛みの治療をNSAIDsのロキソプロフェンで行うことになりました。NSAIDsの作用機序を答えてください。
―(作用機序!?あぁ、そんな基本的なことを聴かないで下さい)あ、・・・・・あの、こ、こ、COXじゃなかったシクロオキシゲナーゼを阻害してプロスタグランジンの産生を抑制して…炎症を抑えたり………します。

このあたりで、B先生の隣に座っていたA先生が自分の名札をいじくりはじめる。…あぁ採点する価値もないってこと?あぁ、もうだ、だめ?だ?

B:はい、ではチンツウノゴゲンソクヲオシエテクダサイ
―(え?あぁ名札に気を取られてよく聞き取れなかったぞ、ぁあでも聞き返すと減点されるかもしれない)は、はい。決まった時間で、鎮痛薬ラダーにそって、患者さんごとに、その上で患者さんごとにきめ細かい対応を、(…あれ、4つしかない…)、あれ4つしかありませんね。
(B苦笑):あと1つは何ですか?
―あと、1つは(あれ、おかしいな…ブログに書いたぞ…何で思い出せないんだろう……)、……すいません、わかりません。
B:ではそのWHOのチンツウノ3段階ラダーを教えてください。
―はい、(これは答えられた)
B:はい、ではこの方にモルヒネを始めたとします。初期に起こりうる副作用3つを上げて対策を教えてください
―吐き気が出ます。メトクロプラミド等で対応します。2つ目は便秘でこちらには酸化マグネシウムやセンナ等で対応します。3つ目は・・・(あぁ、またワカンナイや…もう本当に帰りたい……)・・・ねむけでしょうか・・・・・・?
B(やや笑いながら):じゃあそれにはどう対応しますか?
―え、え、えとメチルフェニデートを投与すると思いますが……(お願いですから相槌なり何なりうっていただけませんか?)…教科書にはそう書いていますが、実際にそうやっているのを見たことはありません(あぁ、これ絶対余計なこと言った)
B:緩和ケアはやったことおありですか?
―(これまでのグダグダ具合から、聴かなくてもお分かりでしょうに!)は、はい。3年ほど前にペインの研修は少しやりましたが…(だって末期がんの方でモルヒネで眠気が…っていうシチュエーションに遭遇したことはありませんのよ)
B:では接遇問題です。サトウタロウさん(だったっけ?)のお兄さんが、患者さんが入院になった経緯と治療方針について聴きたいということで部屋で待っています。では部屋に入るところから始めてください。
―(え、もう始めんの?患者さんの名前なんだっけ?もう忘れちゃったよ。)

…と思うと同時に、「これまでの質問に1つも自信を持って答えられなかった人間からどんな説明をこの方々はお聞きになりたいというのか???」と「???」がいっぱい出てきて、自分が何だか出来の悪いコメディの中に迷い込んだみたいで、腹の中で思いっきり笑ってしまったのですが、もう眼の前にサトウナントカさんのお兄様がいるわけで、今笑ってしまったら「絶対落ちる」と思いつつ椅子から立ち上がり、何とか平静を装って自己紹介とお辞儀)、

―「失礼ですが患者さんとの関係は…?」
A:兄です
―では失礼して座らせて頂きます。「こ、今回の…今回の入院は…ごにょごにょごにょ、たどたどたど、、、」と説明。自分の椅子と、神様のように感じられる試験官先生方との机+椅子まで微妙に遠く、この空虚な2m超の空間が病状説明にとても不似合いで、もうなんというか完全にしどろもどろで…。それでも最後の最後には「何か質問ございますか」と付け加える。
A:あのぅ、麻薬なんてやったら、寿命が縮まるって聴いたことあるんですけど?
―(…はぁ、もう。帰りたい。帰りたい。かえろ~かな~かえるのよそぉかな~、あぁさぶちゃん)
いえ、そんなことはございません(ございませんってなんだよ)、ぺらぺら……。
(こりゃ完全に駄目だ…あぁでも、これは前情報通りの感情だ…こんな感情も再現されるなんて、なんて滑稽なんだろう)
A:はい、では以上です。お疲れ様でした。
―(もうやけくそだ。最後ぐらい元気に出ていこっと)どうもありがとうございました!!!

あーあ、あの部屋は試験官の先生以外に魔物(それも凄く邪悪な魔物じゃなくてちょっと小賢しい感じの)が住んでたな。まぁ終わったんだからもういいや。何故かScorpionsの「In Trance」のギターソロが頭の中でリフレインしつつ部屋を出て、1人反省会をする余裕も勿論ないままに実技試験の部屋へ入るよう誘導される。あいうぇいかっぴんざもーにん…あぁクラウスマイネ…私が生まれる前に出たアルバムとそのタイトルトラック。あぁ、今はどうでもいいことなのに。

…。
実技試験の部屋に入ると、試験官の先生のうち1人は、講演や雑誌でお名前を存じ上げている先生だったので(といっても、勿論、先方は私なんぞをご存じない)、なぜかちょっと気が楽になる。

C先生(以下C):口頭試験はできましたか?はい。じゃーまずそこに座って下さい。
まず最初の設問ですが…、

ショウカタイガンノシュジュツヲザイデオコナウノデスガコノマスイカンリノケツアツカンリノチュウイテンヲフタツオシエテクダサイ。

は?
なんですって?

これはさっきの部屋の悪夢の続きか???
しかし、いきなり聞き返して退場させられたりして…いきなり減点されたりして…。
あぁ、ちょっとまって下さい。日本語変換しますので…。

松果体癌の手術を座位で 行うのですが、この麻酔管理の血圧管理の注意点を2つ教えてください…
??
…あ、問題の意味がわかった!

でも、何答えりゃいいんだ??

―座位ですので、動脈圧ラインの基準を心臓の高さにします。それと脳の灌流圧がモニタの値より座位の分、低くなることが予想されますので、血圧低下に十分注意して管理いたします。(うーん、これしか思いつかないや…)

C:はい、では動脈圧ラインで管理するということですね。そうこうしている手術が始まって、しばらくしたら、突然ETCO2とSpO2が下がりました!(お、きたな静脈空気塞栓!!!!!)何しますか?
―血圧心電図バイタルを確認し、純酸素にしつつ術者に空気塞栓の可能性を告げて手を一度ストップしてもらいます。術野が乾いていたら生食等満たしてもらいます。そしてヘッドダウンにして、肺動脈に空気がこれ以上行かないように…3点品固定されてるでしょうから難しいかも知れませんが、可能ならば左側臥位にする、もしくは、ベッドをローテーションします。エアを見るために挿入できればTEEを入れ(脳外科手術の途中で入れたことなんて一度もねーぜ)、後は空気を吸引するために内頸・・・・いや術野と重なって覆布があって難しいでしょうから…大腿静脈からCVCを挿入してエア抜きを試みます。また循環破綻していたらカテコールアミンの投与経路とします。
C:はい、じゃぁこの中から(と、TEEの画像が6枚示されたA4の紙を出される)、空気塞栓を診断するためのviewを2つ選んで下さい!!
―はい、えーと、fと(普通のbicaval view)……あとaです(four chamber view)。(その他は左室60°、90°、135°経胃左室短軸像だった気がする)

C:はい、じゃぁCVC入れよう。研修医に教えるつもりでやってみて下さい。
と右首の模型に対してエコーガイド下で入れる。D先生(以下D)にエコー持っててもらえるなんて!
―まず軽度ヘッドダウンにして首を左に軽く回旋します。(エコーで血管を描出する)ここにある血管に…
C:血管の名前を教えてください
―はい、内頸静脈と総頸動脈です(どっかで読んだな。ここでは「内頸静脈」、と「総頸動脈」ときちんと血管の名称を言えることがポイントだったな…ようやく調子が出てきたぞ)。

その後はCVCを交差法で穿刺して、ガイドワイヤーを挿入して、そのワイヤーが血管内に入っていることをエコーで確認するところまでで終了。

D:はい、では次の設問に行きます。Th4の脊髄損傷の人が仙骨部褥瘡の手術を腹臥位で行う予定になりました。胸腰椎の後方固定術をしています。首も伸展できません。さぁ、経鼻ファイバー挿管を「研修医に教えるつもりで」やってみてください。
―(また経鼻ファイバーか…)まずフェンタニルで鎮静、患者さんの状態をみつつミダゾラムかプロポフォールをごく少量ずつ使用します。舌根沈下しないよう細心の注意を払いながら(って患者さんが起きているのに研修医に説明しながらやらないよ、しかもなんだ、この異様な威圧感の研修医は)。鼻の麻酔はリドカイン+アドレナリンで、消毒はポピドンヨードでします。あと、口に中をリドカインスプレーで消毒、なるべく奥のほうまで…。輪状甲状間膜が触れれば、そこから23G針で局所麻酔薬を気管内に投与します。その後、鼻から細めのチューブを…男性なら内径6.5mm程度でしょうか……をじんわりと進めていきます。無理やり突っ込むと粘膜下に迷入したりしますので…(と言っているそばからチューブが進まなくなる)。

「これはちょっと狭いので左側の鼻から・・・」とやろうとするとDが手を出してきて「この模型、ちょっと抵抗あるんですよね」とゴリゴリすすめる。(げげ!!鼻血がでるよ~~)

D:はい、そのあとはどうするの?
―え、ええと12,3cm進めたらチューブの中にファイバーを通して…声門見えてきたらサイドポートから局麻を再度噴霧します。そして吸気に合わせて声門を通過して気管分岐部まで速やかに入れて…チューブを進めます。この時声門周囲で引っかかって抵抗があることがあるので無理せず…

D:ひっかかったらどうするの
―(あ、やっぱり突っ込まれた。余計なこと言わなきゃよかった)じんわりとねじりながら挿入します。もし開口十分ならば口からエアウェイスコープを入れて、声門を観察してどこで引っかかってるのか見ます。無理な力が声門にかかっていないことを確認しつつ挿入します。気管分岐部の上3-4cm程度のあたりまでチューブを挿入できたらプロポフォール100mg程度を急速静注して眠って頂きます。(そのあとはアンビューで換気確認して終了…と思ったら胸が上がらない)

D:カフ入ってないよ
―(あぁ、そうか)はい、すいません(と、5ml入れる)
D:片肺しか上がってないよ
―え、…あ、そうですね…ではもう一度ファイバーで気管チューブの深さを調節します
D:あぁ、もういいです。次の問題に行きます。
はい、ではそれで体位変換です。腹臥位にするときの注意点を教えて下さい。
―(あぁ、もしかしてこれが過去問にあった「体位変換」ってやつなのかな…注意点って言ったってなぁ…と)眼球障害やライン類の混線誤抜去、気管チューブ誤抜去、頚椎と体のアラインメントを注意すること、純酸素で換気しておくこと、褥瘡にならないように、等々を説明。ここは無難にクリアしたと思われる。

D:はい、そして手術がこのように進行して(と紙にプリントされた麻酔チャートを見せられる)…セボとレミフェンタニル0.05γでずっと落ち着いてますね。ここで血圧がガーンと上がって徐脈になっています。これはなーんでだ?
―脊髄損傷に伴う交感神経の異常反応です。
D:それをなんていうの?
―うーんと、うーん・・・・・・(ヒントください?ダメですよね?)・・・異常なんとか・・・異常・・・うーん、思い出せません。
D:先生のいわんとすることはよくわかるんだけどね、単語があるでしょ。
―……思い出せません。
D:はい、「autonomic hyperreflexia」でした。では次の設問です。
―(「え、まだやるんですか?!」と喉から出かかりましたがぐっとこらえて)はい。
D:麻酔が終わってよっこいしょ、と仰臥位にして麻酔を覚ます段階でこうなりました、と除細動器モニターにピ~~と1本の横線。
C:はい、診断名は?
―エーシストール、心「静」止です。
C:じゃぁ研修医に教えるつもりで対応してください。
―挿管されてるんですよね?(C頷く)まず100%酸素にして8-10回/minの呼吸状態にするよう指示します。そして心マを開始します。人を集めます。救急カートも。
(以下実際に心マしながら)毎分100回かそれ以上で、剣状突起から2横指上を垂直に5cm押します。押したらしっかり戻すことが重要です。…疲れるとマッサージが浅くなるので2分で交代します(あぁ、それはどうでもいいや、…いつまで心マしてればいいんだ、と試験官をチラ見すると黙っている。あぁ指示を出すのね…)。…静脈路があるので、アドレナリンを1mg静注するよう指示します。(ああ、20mlの生食で後押し、って言うの忘れた)で2分は心マを続けます。
D:はい、そしたらこうなりました。
―VFです。直ちに除細動します。
D:じゃぁ研修医が心マ引き継ぎますから除細動器の操作して下さい。
―2相性ですよね?(と確認してから)200Jにセットします。パッドを胸に当てて「充電してください」と指示して皆離れてくださいと言って放電します(実際にやる。熱量は大分低い状態にして)。ちらっと心電図波形確認して、また心マ再開してもらいます。
D:はい、ではこれで終了です。

***
ということで、文字に起こすと非常に長くなりましたが。

実技試験をまとめると以下のようになりました。
・坐位の血圧モニタリングの注意点(口頭で)
・坐位の空気塞栓時の対応(口頭で)
・TEEの適切なview選択問題(紙を見て6画像から2つ選ぶ)
・CVC(実技。右内頸静脈からエコー下で。但しエコーなしでもいいみたいでした)
・awake経鼻ファイバー挿管(実技)
・腹臥位への体位変換時の注意点(口頭で)
・脊髄損傷のautonomic hyperreflexia(口頭で)
・挿管された状態でのACLS(実技。ガイドライン2005か2010にするかは問われなかった)

***
ちなみに実技試験は、下のようなパタンもあったようです(教えてくださった方に感謝します)。

1.硬膜外麻酔
腹腔鏡下肝切除。気腹後に血圧上昇の原因。
実際の手技。

2.内頸静脈からのCVC留置
大動脈弁閉鎖不全兼狭窄症。この疾患になりやすい原因は?
心停止させる手順は?

3.体位変換後の心停止でACLS
基本的なACLS。しかししつこく、研修医と看護師が暇そうにしてるよ〜、とつっこまれました。

***

以下、試験全体について、イチ受験生としての意見を書いてみます。

・口頭試験
何を答えても、試験官のリアクションらしいリアクションはなく、また、誘導らしい誘導も皆無でした。「合格させてあげよう」という意思は全く感じられませんでした。
設問が2つしかないため、自分が苦手なものにあたってしまうと容赦なく落とされる印象をもちました。筆記試験対策は皆さん一生懸命されると思いますが、筆記試験よりも口頭試験の合格率が低い、という事実を受け止めて対策をする必要があると感じました。

・実技試験
「硬膜外麻酔をして下さい」とか「CVCを入れましょう」とか、実技実技、と細切れにされた設問形式の試験を想像していたので、ある程度の臨床ストーリーにのっかった問題形式に少なからず戸惑ったのですが、内容自体は至極普通だったと思います。質問量が多かったような気がしますが、それは逆に色々聞かれれば満点は取れないけれど、合格点には近づく可能性が高くなりそうです。
毎日研修医に説明しながら麻酔をされているドクタであれば、過去問の出題さえ抑えておけば問題ないと思います。

・筆記試験
矢張り過去問をしっかりとマスタしておくことが何よりも重要だったと思います。計算問題も捨てない方がいいでしょう。同じ問題が出たらラッキーと思えるくらいには解いたほうがよい。今年は過去問にある計算問題で、数字だけを変えた問題が複数出題されていました。また、B問題では50問中8問程度が計算して回答を出す出題となっていました。計算問題を全部ドブに捨てれば最高でも42/50問しか得点できません。計算問題以外の設問でしっかり得点できればよいですが、ちょっと捻られた問題ばかりで、受験中にどんどん絶望的な気分になってきます。そうなると、本来取れる筈だった問題ですら誤回答を選択してしまう可能性が出てきます。「過去問を何回解いても同じ問題間違えるよ」と思ってげんなりするかも知れませんが、本番では、その「何回も間違えた問題」が出る可能性が十分あります。だから過去問の答えを覚えておいて、本番では「あぁ、これは何回か間違えたな…。でも数字が変わってるぞ。ということは…」というくらいにするためには、直前の勉強だけでは(私の記憶力では)正解にたどり着けなかったと思います。

聴くところによると、1年前から試験勉強していた方もいたようです。ですが、本当にそれくらいやった方が賢明かもしれません。自分の精神的安定のために、かもしれませんが。試験前に大動脈解離とか臓器移植の麻酔を緊急でかけるようなことも、まま、あるでしょうから、試験直前の追い込みを過度に期待しないほうが賢明です。働きながら勉強しなくてはならない、ということを忘れない方がよいと考えます。
ネット上には麻酔科専門医試験が割と簡単に通る試験であるかのような文章も見られますが、それは優秀な頭脳の持ち主のコメントだと疑った方が良いです。また、合格した専門医の方々の話も聴くでしょうけれど(例:試験前1週間しか勉強しなかったよ)、それも信用しない方が良いです。いかに少ない勉強時間で合格するか、という話は、自慢話としては非常によいのですが、「何を勉強すればいいですか」と人に聞くようなレベルの人(つまり私ですが)には、得るものがありません。
少なくとも私は凡庸な脳しか持ち合わせていないので、かけた時間がそのまま試験の点数に反映されたのではないか…という感触を持っています。医師国家試験以降、一回も受験勉強していない方は、特に気をつけた方がよい試験だと思います。

という、私のような若干悲観的なコメントと、上記の賢い先生方の意見を、それぞれ自分のレベルに合わせて取り込んだ上で、受験するのがよいのではないでしょうか、と思います。

備考ですが、試験を受けるときの服装は、スーツ(ネクタイとジャケットも着用)の人が多かったです。私は心マをする時に邪魔だと思い、友人の助言に従って、スラックス+ワイシャツという、ノーネクタイ、ノージャケットのスタイルで行きました。それで試験官の心象が悪くなったようには思えませんでした。ただ受験前に待機する私語厳禁の軟禁部屋は少し寒いかも知れませんので、人によってはその対応をしたほうが良いと思いました。私は待機者の中では2グループ目に呼ばれたので、待ち時間はそれほどではありませんでしたが、もっと長く待つ場合もあるので、冷え性な方、沈黙に耐えられない方はその対策をした方が良いでしょう。

これで今回の試験について書きたいことは概ね書いたので、暫く(金輪際?)この話題には触れないことにしようと思います。

2011年10月15日土曜日

(音) 台湾の美声シンガーChyi YuとStratovariusのForever

たまには非メタルの曲について。

何故か今日、ふと思い出したのが、Chyi Yu(中国語で齊豫、Chyiが名字)という台湾の女性アーティスト。
このアーティストはStratovarius(ストラトヴァリウス)の有名バラード「Forever」(6th「Episode」収録)のカバーをしていることで知りました。以前はAmazonで、このカバー曲を買うことができなかったように記憶しているのですが、iTunes storeで購入できることに今日初めて気づき、嬉しくなりました。
Chyi Yuの曲は、YouTubeでForever以外のものも聴くことができるのですが、牧歌的で透き通ったものが多く、非常に好みです。今後聴いてみようと思います。

今回初めて知ったこと
・Chyi Yuのカヴァーバージョンは、韓国ドラマ「初恋」(ペ・ヨンジュン主演、1997年制作)の劇中に使用されていた 
→ 確かめる予定はありません
・Stratovariusの原曲バージョンは、90年代にTV東京で深夜に放送されていた「ギルガメッシュないと」のエンディング曲として使用されていた
→ こちらは番組が終了しているので確かめようがありません

2011年10月14日金曜日

(旅) Hot day in Dulles ~ダレスの熱い日~

家を出てから早19時間。

人生で25回目の飛行機搭乗だったのですが、離陸が60分程遅延。
…これは想像の範囲。

12時間飛行の後。
入国審査場で指紋を取られたのが、乗継便のboarding cut off timeの5分前。
Departure gateまで全力で走りましたとも。
……これも想像の範囲。

乗継便の出発ゲートに着いたら、まぁ人っ子1人いませんでした。
受付に独りいた、アラフィー(around 50)のダンディーなおじ様に伺ったら、「もう行っちゃったよ(in English)」
………これも想像の範囲。

サービスデスクに取って返し、救済のための新しいチケットを手に入れる。
幸い120分後の便に乗れると。
…………これはラッキー(最初、「今日の便はもう空席がないよ(in English)」と言われたので)。

安堵したところで$1.68のDiet Coke(small size)を汗だくのまま購入。
こんなとこまで来て、「sugar 0」にしなくても、よかったんじゃなかろうか。

2011年10月12日水曜日

(雑) 予演会終了

久しぶりに大学病院。
と言っても隣の建物ですが。
受診でも麻酔でもなく発表の予演会です。

緊張と睡眠不足で失神しそうになりましたが、何とかプレゼン(というよりもその後の猛攻・・・ではなく愛に溢れたありがたい指導)を終えることが出来ました。

終わりは始まり…ということで、本番に向けて詰めるべき箇所がボロボロボロボロ出てきました。会場に向かう飛行機内でやるべきことが沢山です。

2011年10月11日火曜日

(本) 暴力に逆らって書く - 大江健三郎 (朝日文庫、2006年)

言葉そのものの伝える力や、言葉の裏にある様々な心の葛藤が垣間見れるような文章が多い作品でした。特にスーザン・ソンタグとの、コソボ紛争を中心とした戦争についての往復書簡は考えさせられることが多い。
一見謙虚過ぎるスーザン・ソンタグの下のような言葉からは、自分が深くコミットしていない問題に対しては、注意深い発言をしたいものとの意を新たにしました。安直ですが。
言葉・文字で生きている人びとの、言葉を紡ぐときの思慮の深さに心からの敬意を払いたいと思った1冊。文字の力を信じている人程、文字にならない深い葛藤があるのは間違いない。

***
自分がそれまで知らなかったり、この目で見たことがなかったりする事柄については、けっしてどんな立場もとってはならないと。(中略)善意があっても思慮深くとも、直接の体験の具体性にとって代わることはけっしてできません。(中略)その地の人びとの歴史や地理もまったく見当もつかない人びとが、バルカン半島において十年も続いた恐ろしい事態をめぐり立場をとる。その多くがあまりにも私の予想通りの立場だったことに自分でもショックを受けたのです。どんな戦争地帯にも一度も近づいたことがなく、戦闘に与したり、爆撃のもとで生活したりするとはどんなことかこれっぽっちの考えもない。それがみえみえのアメリカやヨーロッパの知識人たちが尊大にもあの戦争について語るのを目にして、怒りを禁じえません。(中略)でも、独善的にならずに正しくあるにはどうすべきか。どうすれば「私」を放棄できるか。何であれ、自分はこのことなら知っているとの判断は、この「私」をとおして得るものではあるのですが。(スーザン・ソンタグp158-9)

2011年10月10日月曜日

(雑) 今そこにある壁

目の前に、自力では容易に登れそうにない壁があるとき、その壁に対してとれる行動は沢山あります。
何とかえっちらおっちら頑張って頑張って壁を登るのか、叩き壊す手段を考えるのか、そこまで頑張らずとも時間をかけてちょっとずつ削って壁が倒壊するのを待つのか。引き返すのか、大きな回り道をして壁の向こう側に行くのか、その場に居続けて誰かが壁を壊してくれるのを待つか、そこまで依存せずに誰かと手を取り合って一緒に壊すか。それとも壁があることに気付かないふりをするか。壁のこちら側で生活するのを是とするか。もっと登りやすそうな壁を探すか。

そもそも、壁の向こう側に行きたいと思わなければ、目の前の壁を疎ましく思うこともありません。壁の向こう側に行きたい=欲がある状態といえます。

だからこそ悩みます。しかし、壁が「かつて何処かで見たことのあるような壁」だったら、それを登った時の記憶を手繰り寄せればよいでしょう。ですが、これまで乗り越えたことのない、見たこともないような壁であれば、最適な壁の乗り越え方、なんて分かる筈もありません。最適な方法どころか本当に登ったほうがいいのかどうかもわかりません。「登り方マニュアル」をどこかで探しだしたとしても、そこには著者の想像力に基づいた、最大公約数のことしか書かれていないでしょう。人生は人それぞれ違うし、本を書けるほどの知の持ち主でも、想像力には限りがあります。ある人にとっては「誰かが壁を壊してくれるのを待つ」が正解かもしれないし、またある人にとっては「頑張って壁を登ってしまう」のが最適な答えになるかもしれません。

時間が無限にあったら様々な方法を「あーでもない、こーでもない」と試行錯誤するのもよいでしょう。しかし、人生は有限なので、そう悠長なことも言ってられません。

問題は、自分が登ろうとしていた壁の高さを見誤っていたかもしれない、と確信に近い絶望にぶち当たってしまった場合です。遠くからは2m位にしか見えなかった壁が、目の前に立ったらてっぺんが見えないほどの高い壁だった。そんな場合です。そんな時には、誰かの力を借りたとしても登れるでしょうか。「ロケッティア」のクリフ・シーコードやヘリコプターなどの乗り物を使えば可能かもしれませんが、人力のみでは無理でしょう。

しかし世の中の多くのことは、リスクに応じたリターンがくることになっているようにも思います。ローリスクローリターン、ハイリスクハイリターン。宝くじのようにローリスクハイリターンを望むのは、娯楽としてはよいかもしれませんが、人生の本筋でそれをやるのは、私にはちょっと難があります。
メディアや映画、小説では「彼は大変だけどやめないで頑張って頑張って死に物狂いだった。その先に今の成功があった」というのは多いですが、実際には少ない。だからこそ、誰の耳にも心地よい「感動的なよいお話」になるわけですが。あぁ、でもリターンを考えてばかりの人生も嫌だ。

一向に要領をえない文章で大変恐縮ですが、書きながら思考がまとまってくるのを我慢強く待ってみました。

易きに流れるのを嫌悪していたのは誰だったか。
自分の関心の輪に集中せよ、をスローガンにしていたのは誰だったか。
最後の血の一滴まで絞り出す事を信念にしていたのは誰だったのか。
そして今の自分がそれらから遠く遠く遠く離れている事を、誰よりも認識しているのは、他ならぬ私自身だ。

道は自ずから決まっているようです。

2011年10月9日日曜日

(走) Training in Rena (其の百二十七)

10/9 10.0km, 62min 発表原稿を見てスピーチ練習しつつ
total distance: 895.4km (July 34.0km, August 17.0km, September 45.2km, October 10.0km)
total time: 5678min = 94h38m (since 7th, Feb, 2010 走り始めて10/9で610日目)

2011年10月8日土曜日

(雑) ヒトリカイリ

専門医認定試験が終わって数日たちました。すっかり寒くなりましたが、それとともにいつの間にか夏休みも遠い過去です。主に試験勉強で終了してしまいましたが。

大学院生+アルバイト麻酔科医の生活なので、働かないと死にます。そのため、夏休みの期間も仕事はあったわけですが、そこで何故か大動脈解離→全弓部置換術(TAR)の麻酔を明け方まで担当する…という貴重な体験をさせていただきました。1人でTARの麻酔を担当したのは初めてでした(非医療者の方に誤解されるとよろしくない、と思って書きますが、麻酔管理は別段問題なく終了しました)。問題集2冊持って行ったのに…。

でも、その緊急手術のお蔭で…という文脈は緊急手術の事態になった患者さんに大変失礼な言い方かもしれませんが…人工心肺からのウィーニング、ウィーニング後の輸血ポンピング、電解質補正、TEEでの心機能チェック。それらが1人でも何とかなるものなんだ(寧ろ大学で若い先生と一緒にやっていた時よりも、更に真剣に麻酔をやっている自分を発見しました。患者さんにとって自分という麻酔科医が最初で最後の安全弁であり、そして、自分自身にとっても、何かひとつ間違いを犯したとしても誰も補ってくれないという恐怖心がありますので、真剣なのは当たり前といえば当たり前なのですが)、ということが解った一夜でした。もっとも、安全に麻酔し得た最大の要因は、私の麻酔管理の巧拙よりも、注文した血液製剤がきちんときてくれたことと、患者さんの心肺腎機能が高齢の割に丈夫だったということの2点に尽きますが。
困ったことは以下の5点でしょうか。
心外で使う薬剤(ミルリノン、カルペリチド、ニコランジルなど)の場所がよう分からん、メーカの違うTEEだとボタン操作がよう分からん、腹減ったけど外に出られない、トイレに行きたいけどいつ行ったらいいんだろ、精根尽きたため当直翌日は活動性が極めて低下。

専門医試験が終わったからといって、麻酔管理が格段に巧くなる訳ではなく、「あぁ、なんでA-line入らないんだろ」とほんのり絶望する日々が続きます。

兎も角も、「~~先生流」とか「○○先生はここが巧いから真似しよう」とか「△△先生はこうやっていたけど、あれは何でなんだろう」といった上司同期後輩先生方の様々な様々な様々な実践を模倣し文献的根拠を渉猟する。そうして繰り返し積み上げた数年のものが全部、意識的無意識的に渾然一体となって今の麻酔科医としての私を形成しているのは間違いない。一人で麻酔していると、浅薄ながらも存在する麻酔科医としての積み重ねを忘れがちになりますが、ほかの麻酔科医から見たらどうなのか、外科医から見たらどうなのか、非医療者から見たらどうなのか、非日本人から見たらどうなのか、それを折に触れて点検する必要があると思いました。

「1人でやる方が気楽でいいじゃん」と思ったことは過去に幾度もありますが、私の場合、その感情は「何かあったら誰かに援護してもらえるだろう」という甘い空想に支えられていたのだと思います。「誰か」は助けてくれるのかも知れませんが、自分でしたことは自分で責任をもつ必要があるし「~~先生はこうやっていた」というセリフは、上手くいっているときはそれで良いんでしょうが、上手くいかなかったときに、第三者からの視線や批判に耐えうるのか、それを意識しなければいけない。「誰か」は助けてくれるのかも知れませんが、「誰か」は容赦無く攻撃してくる。その可能性を忘れてはいけない。

勿論、私の想像力には限界があるので、実践の段階においては、あくまでその想像力に限定された低い次元の改善になってしまうでしょう。ですが、問題意識がなくなった瞬間に、麻酔科医としての自分の成長はなくなる、ということを覚えていようと思いました。