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2011年6月11日土曜日

(雑) Anesthesia all night Long Pt. 2


麻酔科医は外科医を「外科のセンセ~」と呼ばずに固有名詞で呼ぶことが多い。
ところがあちら様は、手術中に患者さんの頭側に突っ立っている私のことを「麻酔のセンセ~」と呼ぶことが多い。
「ちゃんと固有名詞で呼ばれるような存在感のある仕事をせんかい!」というお叱りもどこからか聞こえてくるような気もするが、麻酔科医が存在感があるとすれば、
・五月蝿く節度がない(例:外科医に「まだ終わんないんすか」と、自分の臨床経験の未熟さを棚にあげて、平気で聞いてしまう)
・大量のポンピングが必要
・挿管や動脈圧ライン確保、硬膜外麻酔等の手技にとんでもなく時間がかかる(mean-2SD程度に)
のどれかである可能性が高い。
それはNo thank youである。

私はごくごく平凡な麻酔科医でありたいので、患者さんの状態が緊急手術という割には落ち着いていれば空気のようにしていたいのである。それでも時々空気は「 尿は出てるんですが、カリウムがちょっとずつ上がってますね」と外科医にそっと伝えたり、外回り看護師さんがいない時には「いくつの手袋ですか」とかそっと術者たちに向かって申し上げ、清潔野に代替の手袋を出して差し上げるのである。
麻酔科医はこのように匿名性があり、代替可能というのが、1つの特徴であるように思う。
つまり、当座、私が目指すところの1つの地点としては、麻酔担当が私であった筈なのに、術者が手術に熱中していて、ひと段落してふっと顔を上げた時に麻酔器の横にたたずんでいるのが、部長や教授、その道20-30年の神業的なフリー麻酔科医の先生になっていて「あれ、いつの間に交代したんすか」となることである。
だから「俺にも名前があるんだから、『麻酔のセンセ~』じゃなくて、名前で呼んでくれ~」と心の叫びを上げる必要もそんな気もなく、空気のような存在で、何事もなかったかのように、徹夜の緊急手術に居合わせ、立ち去りたいものである。

御祓いに行こうかな。