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2011年7月21日木曜日

(本) 現代版 魔女の鉄槌 - 苫米地英人

私は「これがお勧めですよ」と大っぴらに胸をはって本をお薦めできるほど、本の選別眼が高くないと思っている(何より「良書は人によって異なる」ということを自分の少ない経験から嫌というほど感じているし、良書を良書だと盲目的に語るには、本の絶対量が足りないと感じている)し、メディアから得る情報を正しく選別できるほど、情報リテラシー(情報を、自己の目的に適合するように使用できる能力)が高いわけでもないし、想像力や推察力が豊かでもない。だから他人から発信された情報を受け止めるとき、自分の生活に関係しそうなものについては「本当かそれは?」と結構うんうんうなって疑うけれども、自分にとってどうでもよいと「その時点において」思えるようなものは、「ふぅん、そうなんだ」と一応素直に胸にしまっておく。
つまり、この著者が言うように「自分の聴きたい物語」や「自分が聴いて心地よい物語」しか取り入れていないのである。培養している癌細胞が、観察者が発現させたい外来DNAをtransfectionさせられてしまうように、取り込みやすいものを優先的に取り込む一方、「何言ってんだこいつ」というような情報は、当然ながらなかなか浸み込んでこないのである。
その選別の基準は「すべて自分が今までどのように洗脳されて生きてきたか」により、「他人に刷り込まれたようにしか情報に反応できない不自由な人生を送っている」、と著者はまず前書きで書いている。

私のこのブログを連続してご覧になっている方がいるとしたら、そこにプラスかマイナスかは不明だけど、何らかの役に立つ情報が含まれているのかもしれない。それは「へぇ、そんな面白いことがあるんだ」と溜飲を下げる対象として、かもしれないし、または「こいつはまたこんなこと書いてるぜ、書けば書くほど底の浅さが露呈されますな」と嘲笑の対象としての役立ち方をしているのかもしれない。
わざわざこのように書くのは、「自分が無意識に是として取り込んでいる情報」をどうして「是」としているか、をちょっと自分の脳みそから離れたところに意識を置くつもりで立ち止まって考えたほうがいいですよ、ということを、書いてみたかったからである。
本書で書かれている内容は、多くの日本国民にはそれなりに大きな衝撃をもって受け止められるだろうとは思うけれど、そもそも単行本で1785円もするのか…という時点で、多くの人は買ってまで読むことを躊躇するに違いない。ただ、メディアが時々発する「お隣の大国が情報操作をしてるよ」という情報を半ば盲信的に受け止めて嘲笑の対象とする一方で、「日本のメディアはもう少し健全だろう」と、彼の国の発する情報の1/10程度の疑いも持たないような人は、読むと有意義な可能性がある。もっとも、メディア情報よりも本書の方が何万倍も正しいことを言っている、と盲信することも危険だろうけど、「多く接してしまう情報や意見に、無意識的に刷り込まれている可能性」について考えるきっかけにはなると思う。
多くの情報をネット環境さえあれば無料で手に入れられるのは、本当に便利。だが、今回「麻酔科専門医認定試験の試験対策をどのくらいネットでできるか」をこの数週間試みてみたけれど、わかったことは
「情報の取捨選択において効率が悪すぎて話にならない」
ということだった。それはGoogle  ScholarやPubMedや医中誌を使ったうえででも、である(まぁ当たり前なんだけど)。
私はおそらく非麻酔科医の方々よりは「麻酔」に関する情報リテラシーが幾許か高いとは思うけれど、そのような状態でも「この麻酔に関する情報がどれくらい信用に足るものか」を逐一吟味するのは非常に骨が折れるのである。それは即ち私の現時点での脳力の限界を示すことにしかすぎないのであるけれど、より素人的な知識しかない
・原発是か非か
・首相の辞任を迫る理論的な根拠は何なのか
・セシウム牛肉は何が問題なのか
・どうして節電しなければならないのか
などなどについてメディアから発せられる情報に対する解釈を誤っている可能性は相当高いであろう。
メディアが提示する「これは本当に問題です。一刻も早い解決を望みます」が、本当に問題なのかってことから始めるのが筋なのだろうけど、なぁ。ということをつらつらと考え、気分が落ち込んだ一冊だった。