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2012年8月29日水曜日

(音) Gotthardのおすすめバラード 「Everything can change」

Gotthard(ゴットハード)はスイスのハードロックバンドです。1992年から活動してます。
日本での知名度は相当低いと思われますが、いい曲を量産しているバンドです。
ハードロックはあまり好きではないのですが、王道的なロックソング「Make My Day」とかは結構好きです。


今日ご紹介する曲「Everything can change」の原曲バージョンは「Homerun」というアルバムに収録されているのですが、こちらの、ピアノのバラードアレンジの方が僕は好きです。

リンクがすぐ切れてしまいそうですので、一応書いておきますとベストアルバム「One Team, One Spirit」に収録されています。

多分多くの人が気に入るんじゃないかなーと思います。久しぶりに聞きたくなったのでここに貼ってみました。

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最近やせてる女性の硬膜外麻酔をする機会があるのですが、硬膜外腔まで本当に浅いです。3cmくらいからLoss of resistanceやればいいかなーと昔教わった記憶がぼんやりあるのですが、3cmまで何も考えずに進めたらdural punctureしてただろう症例が何例かあってヒヤヒヤしました。2.7cmとかでもう硬膜外腔です。やはり靭帯を抜けるときの自分の手先の感覚が一番大事ですね。「この体格だからこのくらいだろう」とか思わない方がいいですね。予想は大事ですが予断は禁物です。
低レベルな話で恐縮ですが、皆さんもお気をつけ下さい。

(雑) 久しぶりにレジデント勉強会に参加してみたり

朝から実験してるといつの間にか日が落ちてしまい、あらら今日も1日実験しかしてなかったよという日が断続的にあると、自分が麻酔科医であることをついつい失念していまいがちに。
実験は気楽なものです。って書くとだいぶ曲解されそうですが、指導してくださる先生がいらっしゃいます。勿論自分でいろんなことについてなんでこうなるんだろうとかああしたらいいんだろうかとか考えますけれど、最終的には指導してくださる先生がいるわけです。大変な実験だとしてもあーあがっかり…なネガティブデータがなんぼ出ても意見を聞くことができるわけです。結果を踏まえてどちらにいったらいいかを指し示してくださるわけです。それを必要としない状況に一刻もはやくなるのが大学院生の目標でしょうか?いや、自分に達成できるかわかりませんし、そもそもそれがゴールなのかもよくわかりません。

その点、今、麻酔科医としての私の力が伸びるか縮むかは自分の学ぶ意志だけに依存しているわけです。非常勤の麻酔科医の私に対して怒髪天で指導してくれるような大人はいません。少なくとも私の周りには。いたらいたで多分嫌ですけど。そういう天変地異的なことが起こらないと今まで得てきた麻酔科医としての知識と技術だけで食べてるだけ、食べていくだけになってしまいます。ありがたくためになるお話をしてくださる方はいらっしゃっても、普通の難度の麻酔を普通にやれている(様に一見見えるようになってしまった今くらいの状態)私には、やはり自分に何が足りないか、いや足りない事だらけだけど何を率先して充足させるべきか…。そういった客観的な問題意識を自発的にもたないといけないわけです。麻酔の実力なんて多分あっという間に後輩の先生たちに抜かされます。あーもう抜かされているかも。

ということでだいぶ前置きが長くなりましたが、今日のレジデント勉強会は来月の学会の予行演習的な内容でした。といっても学会まで時間が少しあるので、誤字脱字や日本語のおかしな所を指摘するようなものではなく、もっと実際臨床的な内容―昇圧剤はこの場面でどれ位いってたのか、とか、ここで輸血はじめてるけどこの時点から大量出血が始まったのか、とか、術後どういう経過で退院できたのか、とか、この病気があると凝固異常を起こすことがよくあるのかとか、こういう報告は過去どれ位あってどういう転機を辿ったのかとか。そういう話です。
そういう話を、時間さえ気にしなくていいのならばいくらでも喋りたい。いくらでも興味深いことがある。あぁあれも知りたい、これも知りたい。今ちょっと調べてみたい。きっとああいう風に書いてあるだろう。いや、ぜんぜん違うことが書かれているかも…。あの先生だったらどうコメントするだろう。うーん。だったらこれをこうすればもっとよかったんじゃないか。いやでも文献にはなかなか書かれないような状態なのかもしれない。あぁでもないこうでもない。そしたら・・・あれをああすると次回もっと良くなるんじゃないか。そんなことが考え始めると止まらなくなる。誰かが遮らなければいくらでも喋りたいことがある―そういう感覚があるうちは、僕も自分のことを麻酔科医と名乗っていていいような気がしました。
「これはこうするのが当然でしょ」と何の臆面もなくいったり実行するような時が来たら、私は麻酔科医として死亡でしょう。

やる気を注入されましたので、自分の発表も頑張りたいと思います。

2012年8月27日月曜日

(麻) 結局自腹でBJA買うことにした

iPadで2012年9月号が読めるのを待っていたのですが…これってもう無料お試し期間終了なんでしょうか?
大学の医局でも紙のBJAを購入してくださっているのですが、オンラインで早く読みたいので結局自腹で購読することにしました。金払ってるんだからちゃんと読むぞ~という自分へのプレッシャーも込めて。
まさか英語のジャーナルを自分で買う日が来るなんて思ってもみませんでした。

2012年8月25日土曜日

(本) Work Shift (リンダ・グラットン著、池村千秋訳) 〜 多分僕は死ぬまでモラトリアムです〜



この本を読んで本当にそう思いました。ほぼ同時に読んだ森博嗣氏の「相田家のグッド・バイ」の影響もあるかもしれませんが。

この1週間、考えることが非常に多く、そしてそれは文字にすると陳腐すぎることばかりでブログに文字を入力する気も殆ど起こらず。まぁ、ブログとはそういうものといえばそういうものでしょう。書きたくない時に無理に書く必要なんか全くですし、誰かのレスポンスを期待するような方は他のSNSを使った情報交換の方が向いていると思います。

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Facebookでも本書を紹介してしまったので、諄(くど)いと思われる方が私のブログを読んでくださっている方の中に何人かいるかも知れませんが、それでも本書を読んだことをここに記録する価値があると思うので書いてみたいと思います。

世の中2030年の原発ゼロに向けての議論が活発なようですが、この本では2025年には世界中の人々がどんな働き方をしているだろうか。それについての悲観的な側面、楽観的な側面双方からシミューレーションされています。単なる想像妄想でのシミューレーションではなく、いろんな統計や著者らがフィールドワークで様々な人から調査したことなどを基にしているようですのでそれなりに信憑性がある話になっています。それは著者自身が研究者であるからでしょう。大した分析や理論的根拠もなく自分の経験談から「これからの世の中はこうなるからこうすべきだ」という仕事論の本は世の中に本当にたくさん出まわっています。私はそういう本を立ち読みするたびに、自分の身の程もわきまえずげんなりして辟易するのです。げんなりする理由は「なぜこの著者は、この私より遥かに賢いはずなのにこんなことしか書けないんだろう」ということです。
しかし、本書はそういう本とは一線を画していると思います。著者自身がお金にまったく困っていないはずなのに、お金に困っていくだろう階層の人の2025年もリアルに分析的に予測しているところは本当に脱帽します。きっと著者のこの女性は、大脳皮質が非常に発達している上に、自分と違う意見が星の数ほど存在することを心から認識し、そしてその相違を心から受け入れている―そういう人なんだろうと僕は思います。

これからは人と人との繋がりが大事で、皆の集合知で様々な困難な問題を解決していく…そうだと思います。大脳をあまり使わなくてもいい仕事はどんどん人間から機械に置換される…そうでしょう。というかもう既に世の中そうなってます。僕が20代を過ごした2000年代を、僕の眼から観察した日本ですらそうでしたから。僕はこの著者が言うところのY世代です。

遊ばなければ高度な専門技能を磨けない。自分のやっていることに胸躍らせ、学習と訓練につきものの苦労を楽しみ、手ごわい課題に挑むことにやりがいを感じてはじめて、私たちは本当に高度な専門技能を習得できる。(p270)

麻酔科医でありながら、自分の仕事のあり方に疑問を持っている人は世の中に少なからずいると想像します。麻酔科医でなくても他の科を専門とする医師でも。
医師として何を極めるのがいいのか、という疑問は多くの若い医師が考えていると思いますが、そういうこと以前に数十年後の自分の生き方を考える。そのために本書は、少なくと2100円の価値はあると思います。私は英語の勉強したくて、ついつい原著も注文してしまいました。早く届かないかなぁ。

2012年8月18日土曜日

(雑) ウルトラミニマウス〜Logicool Cubeきた

Logicool Cubeです。
FacebookでS先生がおすすめされていたので、それ以来気になっていたのですが、今日届きました。持ち運びに超便利で重宝しそうです。


iPhoneの右側の消しゴムみたいなヤツがそれです。マウスです。
左クリックと右クリック、上下画面スクロール、パワーポイントでスライドを進めたり戻したりすることができます。じっくり勉強したり調べ物したりするよりは、カフェなどでのちょっとした調べ物なんかで十分使えそうです。

(音) ローリング・ストーンズ事始め

これまでヘヴィメタルほぼ一辺倒だった(尤もメタルもまだまだ上には上が上がいるのですけど)ので、ロックがとても弱い私。
それを補強すべく、いや別に補強する必要もないだろ…とか思いつつも、時々近所のお店でCDをレンタルするのですが、いつも洋楽コーナーの片隅で気になっていたのがThe Rolling Stones。音楽興味ない人でもバンド名くらいは知っている人が多いはずの超有名バンド。
これまできちんと聴いたことなかったので、暇に任せて聴いてみることにしました。
んでもスタジオ・アルバムだけで20作品以上!いったい、どれ選んだらいいのやら…ということでロックを愛する麻酔科医のオススメに従いまして、下記3作品ゲットしました。
半ば変色した背表紙のCDに手を伸ばすと埃がパラパラ舞ってゲホゲホ咳き込んでしまいました。誰にも借りられずにじっと待ち続けていたんですね…。




















こうしてみるとピンぼけじゃん…。

ということで和洋新旧問わず、あなたのオススメのアルバムがあれば教えてください。

このままだと今年聴いた260余の作品のベストアルバムが「ももいろクローバーZ」の「バトルアンドロマンス」(2011年)になってしまいます!

2012年8月15日水曜日

(雑) どこで勉強すると1番はかどるか??

誠にくだらなく、誰に向けての記載なのかまるで分かりませんが、書いてみたいと思います。
勉強する場としては、ぱっと思いつくだけで下記が選択肢としてあります。

1. 自宅
2. 職場(医局なり控え室の自分の机)
3. 図書館
4. 街の喫茶店やファーストフード店
5. 有料の自習室
6. その他の長時間滞在可能な商業施設
7. 移動の電車の中
8. 新幹線や飛行機の中

1. 自宅
これは一人暮らしか、伴侶がいるか、はたまた子どもがいるか、そして子どもがどれくらいの大きさなのかによって千差万別でしょう。一人暮らしであれば、周りにおいてあるものに時間を奪われなければ好きなだけ集中できると思います。羨ましいです。いや、本当に。嫌味では全くありません。
伴侶がいる人は伴侶の理解度によるでしょう。こちらが集中したくともそうさせてくれないことはままありそうです。況や子どもをや。両親と一緒に暮らしている方も少なからず注意力散漫になるでしょう。ましてや要介護の親御さんであれば家で集中して勉強するのは不可能かもしれません。
 
2. 職場(医局なり控え室の自分の机)
麻酔に入っていない時に、どれくらい集中できるか。周りの同僚先輩後輩とおしゃべりに興ずることなく集中できるか。または周りの人達にどれくらい「今話しかけて来ないでよオーラ」を出せるか、というところでしょうか。本人の努力というより、「どれくらい人にどう思われても気にしないでいられるか」だと思います。後は「あいついつも勉強してるよな」という言葉をどれくらい気にせずいられるか。
麻酔中に本や論文を読む人を見かけることがありますが、私には不可能です。せいぜい薬剤なんかのマニュアルを見る程度です。論文はとてもじゃないけど読めません。患者さんが命がけなのに論文なんか読んでていいのか?!という批判もどこからか聞こえてきそうですが、麻酔中に居眠りするのと論文熟読したり専門医試験の問題集開いたりするのとではどちらがいけないことなんでしょうか。

3. 図書館
街の図書館は意外と混んでいます。中高齢者が熱心に本を見ながらノートを取る姿をよくみかけます。勉強スペースがあっても仕切りがなかったり、席が少なかったりするので気が散って勉強できないかもしれません。また、パソコンのキーボードを打つ音が嫌がられる可能性(もしくは不可)が高く、ネットで何かを調べながら勉強するには不向きでしょう。大学病院勤務なら大学の図書館が使用可能なので、一番落ち着いて勉強できそうです。私はMacBook ProとiPadとWiFiルータとiPod classic等々をリュックいっぱいにして持ち込んで勉強して、図書館から出ようとしたところ、出口ゲートのアラームに引っかかったことがあります。それ以来、軽装で行く事にしています。

4. 街の喫茶店やファーストフード店
これは完全に客層によります。ノイズキャンセルヘッドホンや耳栓や爆音ヘヴィメタルで外界をシャットダウンできる人ならば、壁に向かって座れば1−2時間くらいは勉強可能です。小学生〜高校生が都会のファーストフード店には多くたむろしており視界の端のほうでチラチラと気を散らせてきますので、それが気にならなければ学会準備なんかも結構はかどります。但し、分煙の店で禁煙席に座っても多くの場合服やアタマにタバコの匂いがつきます。そうすると「ちょっとどこ行ってきたの?!」と妻にお咎めを受けることもあるでしょう。

5. 有料の自習室
東京に来てからそういうものがあることを知り、1度だけ使用してみました。東京に限らず大きな都市にはこのような商業施設があり、社会人の資格試験取得者向けに需要があるようです。ですが高いです。私が使用したところでは630yen/hでした。5時間やると3150yenです。105円の文庫本なら30冊買えてしまいます。なんで勉強するのにお金を払わなきゃならないんだ、というのが正直なところですし、1−2時間くらいならスターバックスとかの方が美味しいコーヒーが付く分お得です。ただし静かで清潔ですので、気合を入れてやるにはおすすめなのかもしれません。お金かけた分やるぞ~という貧乏根性があれば頑張れそうです。

6. その他の長時間滞在可能な商業施設
ぱっと思いつくのはカラオケです。ただしカラオケを使用する場合は室内の明るさがどれくらいなのかに注意する必要があります。私は昨年、専門医試験前日に早めに神戸入りしてしまったので、ホテルチェックインまでの時間を使って勉強しようとカラオケに入ったのですが、その部屋があまりに暗くて勉強になりませんでした。すぐ部屋を出ればよかったのでしょうが、数時間熱唱してしまいました。
もう1つ挙げられるのはマンガ喫茶です。ただしこちらも室内の明るさが問題になりますので、そこがクリアできれば、ですが。漫画の魅力に打ち勝つ精神力があればそもそもどこでも勉強できそうですので、そういう方はわざわざマンガ喫茶に行く必要はないかもしれません。また、マンガ喫茶は勉強するためのテーブルというか机というか、スペースが広いところはあまり無いように感じます。マンガ喫茶備え付けのデスクトップパソコンにOfficeが入っていることはありますが、医学用語の変換に時間がかかりすぎるため思わず「Google日本語入力」をダウンロードしたくなります。ということでマンガ喫茶に滞在中、その欲望に抗する気持ちでいっぱいのため、やりたい学習作業は全く捗りません。なのでマンガ喫茶に行く事はだいぶ前にやめました。

7. 移動の電車の中
これはインプットにほぼ限られるでしょう。私は無理ですが、得意な人は得意なようです。英語の論文を公共交通機関で移動中に読むだけでも気持ち悪くなる事が多い私は読書や耳英会話かヘヴィメタルかクラシック鑑賞か睡眠に当ててます。膝の上にノートパソコン置いて一心不乱にキーボードを打つビジネスパーソンを時々見かけますがあれは何をしていらっしゃるんでしょうか?iPadで論文読むという選択肢もありますが、あれはあれで結構重いので、眠い時には重くて落っことしそうになります。
車で移動される方はオーディオブックとかPodcast、iTunes U、各種動画などによる学習になるんでしょうかね。

8. 新幹線や飛行機の中
ネット環境がいまいちなので、ウェブで調べ物をしなくて済む勉強なら捗ります。勿論周りに座っている人が静かでマナーある人ならば、ですが。一度長距離旅行中に新幹線内学習を試みましたが、後ろに座っていた高校生くらいの男の子が「ねぇ、この席に座ってたらまずいんじゃないお母さん。他の席に移ろうよ〜」と1時間以上母君に訴えていたのが気になって全く捗りませんでした。

・・・
ということでいろいろあげてみましたが、大学なりの図書館、もしくは邪魔が入らない医局の机が一番集中できそうです。勉強することが割と習慣化している(尤もそれが仕事とも言えますが)医師は勉強しやすい環境があって、他職種のビジネスパーソンよりも恵まれているのかもしれません。もし皆さんのおすすめ勉強場所があったら是非教えて下さい。お願いします。

あと必要なのは、勿論やる気ですよね…。

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最近、本も気が散って読めないです。三島由紀夫の「金閣寺」にも人生初挑戦してみたのですが100頁ちょっとで頓挫しました。ということで別の本から。

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 おまえの一番大切なことは何かと聞かれると、人によって、誠実であることが重要だとか、愛情が重要だとか、一人一人言い方が違うと言っていいくらいです。たしかにそれはどれもみんな重要でしょう。
 でも、自分にとって真に重要なことは何なんだと突きつけられたなら、僕ならこう答えるでしょう。その時代時代で、みんなが重要だと思っていることを少し自分のほうに引き寄せてみたときに、自分に足りないものがあって行き得なかったり、行こうと思えば行けるのに気持ちがどうしても乗らなかったりする、その理由を考えてみることだ、と。(真贋―吉本隆明、講談社文庫、p209-10)

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今回本書を通読した中では、この言葉だけが、何となく私の心に引っかかりました。また別のときに読めば別の言葉が引っかかるのかもしれません。

自分の心がどちらの方向に向かっているのかを客観的にみるのは、ときにとても難しいです。いや、ほとんど常に難しいです。何故なら自分が自分の心の状態を判定する時に基準となるものは、自分が経験したこと―それは本から得たものや人から聞いたうわさ話、患者さんの過去のカルテから推測できる人生なども含めますが―しかないからです。だから客観的に判定するなんてことはそもそも不可能なのでしょう。

ですが主観的に、その時に自分の心身を支配する感情に、どっぷりと浸かってしまうのが良いのか悪いのか。その判断に迷う時があります。
今がその良いときなのか、悪いときなのか。
それは後方視的にしか分からないような気がしますが、どっぷりと浸かることに抵抗する自分の心を客観的に見ようとする自分が、その自分が自分の中にいることに気づいていられるのは良いことなのかもしれません。

2012年8月11日土曜日

(麻) anesthetic management for pneumonectomy - 肺全摘術の麻酔管理メモ

肺全摘術の麻酔についてです。
意外と情報が得られなかったので、次に担当するときに右往左往しないよう、そして今回の管理よりも向上できるよう、ここにメモ書きを残しておきます。

引用文献はCurrent Opinion in Anaesthesiology 2009, 22:31-37の「Update on anesthetic management for pneumonectomy」です。今の状況にあわない箇所もあるかもしれません。もし記載に大きな間違いがあったり、こうした方がもっと良いです、というのがあれば是非と教えて下さい。よろしくお願いいたします。

***
・30日以内死亡率5−13%(術後ALIは4%)
@術前検査:大きく分けて以下の3つが大事
1. lung mechanical function: FEV1 (ppo>40%)
2. cardiopulmonary reserve: VO2 max (>15ml/kg/min)、階段2階以上、6分間歩行SpO2<4%
3. pulmonary parenchymal function: DLCO (ppo>40%)、PaO2>60, PaCO2<45
 *ppoFEV1%が…
  注:この値は術前FEV1% × (1-%functional lung tissue removed/100) から求める
  ・>40%なら患者の諸々の状態良ければ手術室抜管、
  ・30-40%なら抜管考慮(運動耐容能、DLCO、V/Q scan、併存合併症などを考慮して)
  ・<30%ならゆっくり時間かけて抜管

@手術:後側方切開が標準。血管処置後に主気管支を切離。分泌物が貯留しないようになるべく中枢で切離する。air leak test後閉胸。ドレーンの陰圧を通常の葉切除術と同様に設定して行うと、縦隔が偏移して循環虚脱が起きる可能性がある。

@麻酔
・禁忌なければ硬膜外併用。
・輸血を考慮し大口径末梢ライン。もしくはCVC。
・動脈圧ライン
・肺全摘術後は右心室の後負荷が上昇(PAP↑、PVR↑)し、右室機能低下を起こすので注意
・分離肺換気:二腔換気用チューブ(DLT)でもブロッカーでも可能。左肺全摘なら右用DLTを使う。もしくは左用DLTないし左主気管支に気管支ブロッカーを入れて気管支切離直前に適切な位置に引くことでも管理可能。術前に相談しておく。
・輸液管理:24時間以内に3L以上の輸液投与で急性肺傷害の独立危険因子(Anesth Analg 2003; 97:1558-1565)。腎機能維持を考慮しつつ制限的輸液戦略がよいようである。
  ・そのため、血行動態維持、酸素供給維持のために昇圧薬併用を考慮
 1. 輸液バランス20ml/kgを超えない
 2. 初めの24時間で3Lを超える晶質液投与をしない
 3. いわゆるthird space lossの補充は術中に行わない
 4. 尿量0.5ml/kg/hは必要ない
    5. 術後に組織血液灌流をを上げたいならば、輸液を負荷するよりも侵襲的モニター(注:PACとか?)を参考しつつ、昇圧薬を使用するのが好ましい。
・片肺換気中の呼吸器設定
      一回換気量5-6ml/kg, PEEP5cmH2O, 最高気道内圧<35cmH2O, プラトー圧<25cmH2O

*稀だが閉胸後(直後、<24h)の心ヘルニアに注意。死亡率>50%。心膜が開いていると起こる可能性あり…CVP上昇、頻脈、低血圧、で気づく。発症したら緊急手術が必要。鑑別診断は血胸、肺塞栓、不適切な胸腔ドレーンによる縦隔偏位

2012年8月7日火曜日

(麻) 久しぶりに経食道心エコーの本の紹介


最近、TEEはご無沙汰なので、ちょっと復習しようと思って買いました。8月号のBritish Journal of Anaesthesiaで紹介されていました。Amazonで5000円ちょっと。200ページちょっとで小さめサイズ。それほど重くないです。

Perioperative Two-Dimensional Transesophageal Echocardiography: A Practical Handbook

Amazonで中身見られますので、興味が有る方は見ていただきたいのですが、カラフルな図が沢山掲載されており、診断やJB-POTで覚えるべき公式やら数値もふんだんにつめ込まれております。これが日本語だったらさぞかし売れるだろうな…という本です。あるいは既にどなたか翻訳中でしょうか?
おすすめです。














2012年8月6日月曜日

(麻) 当科のホームページがリニューアルされました

いろいろあってブログの更新が滞っていました。もう8月ですか。この1ヶ月、毎日のように5:00 ± 0:10に起床してしまいます。早起きで勤勉な人間だからではなく、毎晩熱帯夜だからです。

***
当科のホームページです。最近、Y先生が新しくしてくださいました。

http://www.tmd.ac.jp/med/mane/mane-J.html

リンク先にもありますが、来月9月1日に医局説明会を行いますので、興味のある方は是非リンク先の医局長のメールアドレスまでご連絡下さい。初期臨床研修修了後の麻酔研修の相談は勿論、それ以上に経験を積まれた先生方もぜひお越しください。

なんていう宣伝はさておき、食べて飲んで話をするだけで楽しい筈ですので、それだけでよいですね。

***
最近読んでいる本から。

構造と診断 ゼロからの診断学(医学書院)

愚鈍、バカ、アホ。どんな言葉を使ってもよいけれど、ここでぼくの言う愚鈍という言葉はしたがって、知識の多寡をもって判断される基準ではない。百科事典的な博覧強記を誇っていてもバカ、ということはあるものなのだ。問題なのは知識の多寡ではない。自分が何を知っていて、そして何を知らないか。その分水嶺を見据えることができるか、が、その基準である。自分が知らないこと。それを教えてくれるのは他者だけである。他者の言葉や振る舞いだけが、自分の知らない地平を教えてくれる。だから、他人の言葉に一切耳を貸さない頑迷な性格の持ち主は自然「バカ」ということになる。性格と知性は案外、相関しているのである。換言すれば、バカとは他人の言葉に耳を貸そうとしない者のこと、と言い切ってもそんなに間違ってはいないだろう。(p28)

というような感じで、すいすい読めます。

***
塩野七生『ローマ人の物語』スペシャル・ガイドブック (新潮文庫)

いつも本屋に行くたびに見かけていたんですが、「ローマ人の物語」シリーズってず〜っと小説だと思っていました。全43巻も読めないよ…と思っていたので、本書を当直明けの駅の本屋で購入。写真がいっぱいで楽しい。読むというより眺めてるだけで大満足の1冊。
そして遂に全43巻のうち、第29−31巻に手を出しました。マルクス・アウレリウスが登場する箇所です。ということで29巻から読み始めましたが、全く問題ありませんでした。なんだ、もっと早く気付いてればなぁ。