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2012年12月30日日曜日

(雑) まぁ・・・

私にとっては「未来」に票を投じた人が300万人以上いたことが一番の驚きでした。こうなることは120%わかっていたと思いますが…。

2012年12月27日木曜日

(本) 森の生活(Walden; or, life in the Woods) - ヘンリー・D・ソロー(Henry David Thoreau)

先日読んだ「知の逆転」の中の1人が、本書をおすすめしていました。そこで、書棚で積読状態になっていたものを引っ張りだして再び読んでみました。


 It's not all books that are as dull as their readers. There are probably words addressed to our condition exactly, which, if we could really hear and understand, would be more salutary than the morning or the spring to our lives, and possibly put a new aspect on the face of things for us. How many a man has dated a new era in his life from the reading of a book. The book exists for us perchance which will explain our miracles and reveal new ones. The at present unutterable things we may find somewhere uttered. These same questions that disturb and puzzle and confound us have in their turn occurred to all the wise men; not one has been omitted; and each has answered them, according to his ability, by his words and his life. Moreover, with wisdom we shall learn liberality.(p.70)

というところを佐渡谷重信氏の訳に助けていただくと、

 すべての書物が、その読者と同様につまらないというのではない。なかには、われわれの状況を適切に語りかけてくれる言葉もおそらくあるだろう。そうしたものに本当に耳を傾け、理解することができれば、われわれの生活にとって、朝や春よりも遥かに有益であり、もしかしたら、万物の様相を一新させるものかもしれないだろう。如何に多くの人々が読書することで自分の人生に新時代を築き上げてきたことか!書物が存在するのは、恐らく、われわれが奇蹟としていることを説明し、新しい奇蹟を啓示してくれるからだ。現在、言葉で表現できないようなことが、どこか別の場所で語られたことに気づくかもしれない。われわれを混乱させ、悩ませ、困惑させるのと同じ問題が、すべての賢人たちにも、それぞれ順番に発生していたのだ。一つとして疎かにさせることはなかった。一つ一つの問題に対して、自分の能力に応じ、自分の言葉で、自分の生命を傾けて答えてきたのである。さらに英知によって、寛大さを学ぶだろう。(p.164)

うーん、死ぬまでに本書を十分咀嚼できるでしょうか…まぁ一歩ずつ進んでいこうかな。

2012年12月26日水曜日

(音) 真似から始めたっていいんです、続けていれば ~ 10月の音楽まとめ(LOUDPARK 12含む)

2ヶ月前に書きかけて放置していたものに加筆しておこうと思います。

***
ASAでワシントンD.C.に行ったその日。10月の中旬です。
ホテルで一息つく暇なくN先生と小走りで向かったのが「The Kennedy Center」というコンサートホール。ホール最寄りの地下鉄から歩いていったのですが、周りは暗くて案内もなくて道に迷いそうな状態。おまけに東京より大分寒い日でした。


当日のプログラムは以下です。

Wagner:Wesendonck Lieder (ヴェーゼンドンク歌曲集)
Bruckner:Symphony No. 7 in E major, WAB 107 - National Symphony Orchestra (conductor: Christoph Eschenbach)

ブルックナーの交響曲は殆ど聞いたことがなかったので、事前に音源を貸していただいて予習してから行きました。「交響曲第7番」を以下の4バージョン聴いてみました。

・朝比奈隆: 東京都交響楽団のもの、大阪フィルハーモニー交響楽団のもの
・マタチッチ: チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
・カラヤン: ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

この中では朝比奈隆氏の東京都交響楽団のものが1番魅力的に聴こえたので、10月の前半はそればかり聴いてました。クラシックは色々な演奏家のものを聴き比べることを楽しむらしいのですが、それがほんの少しだけわかった気がしました。恐らくそう書くほどにはわかっていないと思いますが。

当直明けのワシントンD.C.でしたが、曲の大枠のメロディを事前に知っておいたおかげで、安心して音楽に身を委ねることができました。第2楽章がやはり自分のお気に入り。ワグナーは途中少し意識を失ってしまいましたが(これは予め予習してなかったためか、集中力がなかったか、だと思います)。

***
別の日にはジョージタウンにあるBlues Alleyという伝統ある(らしいです)お店で、Jazzの生演奏を体験しました。



体験したのはRoy Hargrove氏のトランペットの演奏。CDでJazzを聴くと途中で拍手が入ってくるのが不思議だったのですが、バンドの目の前で音楽を聴いてみてその理由がわかりました。improvisation(という言葉を友人に教えていただきました)が素晴らしいと自然と拍手したくなります。どこからどこまでが即興なのか私には全然わかりませんでした。

帰国してからRoy Hargrove氏のCDを手に入れました。「Earfood」です。その中に収録の「Divine」の動画です。

とワシントンで2つの生演奏を体験しました。芸術音楽もジャズも素人同然ですが、素人なりに楽しめた気がしました。


***
そしてLOUD PARK12です。


ラウドパークは今年で開催7回目、日本唯一と言われているヘヴィメタルフェスティバルです。これまで、開催日が自分の他の予定とバッティングして行けなかったのですが、今年遂に!参加できました。朝10時半から夜21時半まで、計17バンド出演してました。

・・・とはいうものの日当直明けに研究室で実験してから向かったので、前半出演のNaglfarやHibriaやDragonforceなんかの演奏時間には間に合わず、カナダのモントリオール出身extreme death metalバンドのCryptopsy(クリプトプシー)の演奏途中から、という中途半端な参加でした。

Dragonforceは新譜も聞いてないし、かなり前に興味を失っていたのですが、大分人気があるバンドなので、どんなものなのか見てみたかった気もします。この曲「Through the Fire and Flames」なんか5000万回以上再生されていますよ。信じがたい。


会場のさいたまスーパーアリーナにはUltimate stage、Big Rock stage、Extreme stageと3つのステージがあったのですが、お目当てのCryptopsyはデスメタルですのでExtreme stageでのプレイ。ですがそのExtreme stageが何処にあるのか全くわかりません。会場入ってすぐのInformationコーナーにいる若いおにーちゃんに尋ねました。親切に教えてくれましたが、周りの騒音とあいまって、どこに行ったらいいのかよくわかりません。まぁいいやと、おにーちゃんが指差した方向に向かってふらふら歩いていくと辿り着けました。

着いてみるとステージ前方はひとひとひと。人だかりでCryptospyに近づけません。こんなに多かったのかCryptopsyファン。前方の人たちは一心不乱にへどばんしてるようでした。前には到底行けそうにない。仕方ないのでビール飲みながら会場の後ろの方で床に転がって楽しむことにしました。

周りを見ると私より断然くつろいでいる人たちが大勢居ました。
・床に寝転がって前後不覚で寝ている人
・壁にもたれて体育座りになって微動だにしない人(朝から来て騒ぎすぎて生命力が枯渇した?
・スマホに夢中になってる人(しかもイヤホンして完全に自分の世界に入っています)
・酒のんで大声で喋りまくってる人(バンドの演奏の音で殆どかき消されてますが)
・恋人とハグしている外人さん

夢中になってへどばんする必要はないようです。LOUD PARKはいろんな楽しみ方が許される自由な場所だと知りました。

んでせっかく来たのでCrptopsyの演奏に注意を戻してみたのですが、ほろ酔いも手伝い、この曲わかんないなー、これもわからんなーと何曲かぼぉ〜っと過ごしてるうちに「Cold Hate, Warm Blood」が始まったではないですか。
生で聴いても、ヴォーカルは何を言っているのか全くわからず、Flo Mournier(フロ・モーニエ)のドラムはスタジオアルバムよりも鬼気迫る超高速ドラミング(ちょっと音質悪いですが下のような感じ)でした。



そして最後にはPhobophile。もうこの二曲だけで来た甲斐がありました。

なんだかこのstageの音響イマイチだなぁ…と思いつつも、Dir en grey(ディルアングレイ)の演奏を一度生で見てみたかったので、Extreme stageに居続けることに。

・激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇
・Lotus
・Different Sense

とメジャーな3曲が立て続けに演奏されるという大サービスっぷりで始まりました。それだけでもうお腹いっぱい、かつ、スタジオ盤では気に入っていた「Different Sense」の1:50−2:25のギターソロで思ったほど感動できなかったので(調子悪かったんでしょうか…)、浮気して、同時間帯にUltimate stageで演奏しているはずのIn Flamesを見に行く事にしました。

Dir en Grey。15年前は初期の黒夢のコピーバンドみたいな音楽やっていたのに・・・色々な音楽を消化して今のスタイルになるまで、どれ位の道のりだったのでしょう。時が経つのは本当に早い。もっともっと大きなメタルバンドになってLOUD PARKのおおとりなんかやってもらいたいです。

で、途中からUltimate stageのIn Flames。椅子に座って参加。Ultimate stageとBig Rock stageは横並びになっていて、同じ空間にありました。なんだ、Extreme stageだけ隔離されてたんじゃん。


In Flames。
遥か彼方のステージにバンドが見えます。スクリーンに映し出されるAnders Fridenの圧倒的な存在感。うむ、かっこよし。そしてとっても音がいい。遠くから聴いてるせい?
すぐに思い出せない曲も色々ありましたが、「Bullet Ride」と「Embody the Invisible」が途中で立て続けに演奏された時には、流石にうるうるしてしまいました。この2曲は日本のファン向け?でしょうか。彼らの故郷である欧州でもプレイされてるんでしょうか。そういえばセットリストの最後の方に「Take This Life」演奏してました。この動画も1000万回以上視聴されてるんですか。確かにライブだと映えましたね。



そしてその後はHelloweenです。アルバム「The Dark Ride」発表後の来日の際に、一度だけ渋谷でのライブに行ったことがありましたが、あれから既に10年以上経っています。あの頃はまだローランド・グラポウとウリ・カッシュがバンドにいたのですが。

今回のライブ自体は記憶の中の渋谷でのものより、何十倍も楽しめました。

セットリスト
・Are you Metal ?
・Eagle Fly Free
・Where the Sinners Go
・Power
・If I could Fly
・来年出るアルバムの新曲
・Drums solo
・I'm Alive
・Steel Tormentor
・Future World
・I Want Out
-encore-
・Dr. Stein

新曲以外全て分かったので楽しめましたが、何なんでしょう、このセットリストは。今思い出しても腹立たしいです。
バンド黎明期からのファンなら喜ぶのでしょうけど、ドラムソロを除く11曲の内、5曲がむかーしむかしのキーパーアルバム2部作からです。アンディ・デリス加入後のアルバムにいくらでもいくらでもいくらでもいい曲があるのに、何故マイケル・キスクが歌ってた頃の曲をこんなにやらなくちゃいけないんでしょう。しかも選曲だって…Where the Sinners GoやるならWho is Mr. Madman?でしょ、Future WorldやるならMarch of Timeでしょ、Steel TormentorやるならKings will be Kingsでしょ、Dr. SteinよりMr. Tortureでしょ。
他にも物申したいことはいくらでもあるけれど、Helloween自体、LOUDPARK出演が初めて?だという話ですし、ファンなら誰もが知ってる有名曲ばっかりに徹したのはある意味正解ですね。いくらいい曲だとしても13分超の「The King For A 1000 Yearsとか演ったら絶対興ざめになるだろうし。


まぁ文句ばかり書いてしまいましたが、アンディ・デリスがマイケル時代の曲をうまく歌えようと歌えまいと、楽しい事この上ないライブなのは流石でした。来年は新譜が発表されるということでGamma Rayと一緒に来日するらしいですが…多分見に行かないでしょう。

そしてこの日のオオトリはSlayerでしたが、門限に間に合わなくなるために聴かずに帰りました。また会おう、Slayer。

2012年12月24日月曜日

(音) 今年の曲〜デスメタルとブラックメタル編

クリスマスイブにデスメタル。別に嫌がらせでもなんでもありませんのでお許し下さい。

例によって
曲名/ バンド名/ 収録アルバム名/ 発表年です。YouTubeのリンク切れはご容赦ください。

***
Forget Not / Ne Obliviscaris / Portal of I/ 2012
2012年に発表された中で、1番のメタル曲はこれ。これがこのバンドのデビュー作ということですが、2作目はどうなるんでしょう。もうこれ以上のものはできないんじゃないでしょうか。聴き始めた当初はアルバム自体がとても良いように感じましたが、何度も何度も聴いたところ、この曲が最終選考に残りました。
ということでアルバムのハイライトはこの曲です。12分ありますが、6分過ぎまでバイオリンフィーチャなインストです。6分19秒からようやく歌が入ります。前半は非メタルの方でも十分いけると思います。

Revelation / Brail Drill / Apocalyptic Feasting/ 2008
このアルバムはどの曲も頭がおかしいです。デスメタルですので、あまり真に受けないようにしてくださいね。こういうの、絶対嫌悪されるんだろうなぁ、と思いつつも紹介してしまう私。

Damned Draft Dodgers / Cryptopsy / Cryptopsy/ 2012
これもデスメタルです。待ちに待った新譜から。その割にはB級ホラーのBGMにでも使われそうなフレーズが途中に降臨する(2:41-2:48の部分)この曲くらいしか楽しめずちょっとがっかり…。性懲りもなくまた次作に期待します。2ndアルバム「None So Vile」を超える名盤を生み出すのは、きっとCryptopsyではなく、後続のデスメタルバンドなんでしょうね。

The Transfiguration Fear / Sigh / In Somniphobia/ 2012
ブラックメタルです。アヴァンギャルドというジャンルにも分けられるようですがよくわかりません。少なくとも上で紹介した2曲よりは圧倒的に聴きやすいはずです。2:08−3:37あたりの間奏なんてなかなか思いつけない気がします。
新譜の中ではこの曲が一番わかり易くて好きです。日本のバンドなんですが、非メタルな人たちには知名度ゼロでしょうね。このセンス。我が国の至宝かと思いますが。


Pure / Mors Principium Est / The Unborn/ 2005
もう7年も前に発表されていたんですか。完全にスルーしてましたが、今年初めてレンタルして聴きました。まさにメロディックデスメタルな1曲。期待を裏切らない安心感がいいですね。
このバンド。もう解散していたのかと思っていましたが、今年新譜を発表していたんですね。後でチェックします。
このジャンルの音楽は閉塞感が漂ってましたが、今後どうなるんでしょうか。心配ですが同時に楽しみでもあります。

2012年12月23日日曜日

(音) 今年の曲〜アート・ロック、ゴシック・メタル編

前日に引き続きのまとめです。YouTubeの動画はリンク切れになる可能性があるので、ご容赦ください。

曲名/ バンド名/ 収録アルバム名/ 発表年 の順です。

Andante (most dear lady)/ New Trolls/ Concerto Grosso: Live/ 2002
この曲はもう出会って6−7年になるのですが、今日たまたまYouTubeでアップされているのを発見したので、ここに紹介したいと思います。私にとって特別な思い入れがある曲です。


***
あとは今年出会った曲からのチョイスです。

Precious / Paatos / Breathing /2011
1st albumの「Hypnotique」とどちらにしようか迷いましたが、こちらに。


やっぱりHypnotiqueも紹介したいと思います。動画は動きませんが。
Hypnotique / Paatos / Timeloss /2002



WhiteOmega / Moonspell / Omega White/ 2012
「Omega White」は今年1番聞いたアルバムの1つですね。


Forsaker / Katatonia / Night Is The New Day/ 2009
ジャケットほど暗くないですよ。


Planet Hell / Nightwish / Once/ 2004
今頃になってTarja時代のこの曲が好きになりました。映画音楽のようなイントロも好きですが、chorus(サビ)がいいです。今年になってAnette Olzonも脱退しちゃいましたし、今後のバンドの動向が心配です。





2012年12月22日土曜日

(音) 今年の曲〜ロック編


ロックはあまり多く聴きませんでしたが、いくつかいいものに出会ったので、ここに紹介したいと思います。
曲名/バンド名/アルバム名 の順です。

Endless Symphony / Ten / Stormwarning: オーソドックスな作りですけど、この哀愁はたまらないです。


こっちはバラードです。
Jenny's Eyes/ Last Autumn's Dream / A Touch of Heaven


これもバラードですね。スペイン語がいいです。
Asilos Magdalena/ The Mars Volta/ Amputechture

ギタリストのSteve Harrisは昨年10月に脳腫瘍で他界してしまいましたが、この曲をはじめ、本作は良質なメロディの宝庫です。
Live For Me / Shy / Shy

この曲はQueenみたいなコーラスがいいです。来月の来日が楽しみなバンド。
Knights Of Cydonia / Muse / Black Holes And Revelations



2012年12月21日金曜日

(本) 今年の本15冊+あるふぁ

今年もあと10日ですね。ということで今年、特にお世話になった本を本棚から取り出してみました。目を通した300冊ちょっとの中からの選出です。


http://fragilemetalheart.blogspot.jp/2012/06/2012.html
に上半期の本を選出していましたが、3冊が既出、残り12冊とは7月以降に出会った本でした。否、サロメは上半期に出会ったけど、その後順位アップしたんですね。

7月以降の方が実りが多かったのでしょうか。いや、11月になってからは「TIME」を読み始めたり、通学時間はPodcastで英語リスニングに当てることが圧倒的に増えたので、10月くらいまでの結果ですね。思い返すと殆どの本は電車での移動中に読んでました。「モモ」は夏休みの最後に、靖國神社の境内のベンチで読みました。


***
先日ジャケ買いしたこの本が思考の幅を広げてくれました。正月に読もうと思っていたのですが、あっという間に読めてしまいました。こんな贅沢なキャスティングのインタビュー集を日本語で読めるなんて、本当にありがたいことです。


残る課題としては、積読になってる本が数10冊ありますので、一仕事、目処が付いた年末年始に消化できれば。

そして来年の目標は、選出本の中に洋書が入ってくればいいな…と。今年は日本語で読んで面白かった本の英語版を読むのが精一杯でした。

2012年12月13日木曜日

(麻) 麻酔導入前の脈圧が大きい患者ではSVVの信頼性が低下する

ちょっと前に読んだ論文のメモです。実験の合間の1人抄読会です。放置していたので加筆して残しておきます。

韓国のDr. Kimらの報告。
Effect of pulse pressure on the predictability of stroke volume variation for fluid responsiveness in patients with coronary disease
J Crit Care. 2012 Oct 30. pii: S0883-9441(12)00321-8. doi:10.1016/j.jcrc.2012.09.011. [Epub ahead of print] PMID: 23122680

冠動脈手術を受ける患者さんたち(心収縮能自体は良好)を、麻酔導入前のpulse pressure(PP: 脈圧)の大小によって2群に分類。そして麻酔導入後に、輸液反応性を検証したときに、脈圧の大小がSVVの信頼性を変化させるか、を検証しています。

本論文では 脈圧≧60mmHgをwide PPと定義しています。輸液負荷はvoluven(中分子の人工膠質液) 500mlを15-20分で施行し、SVVはFloTrac/Vigileoで測定。「輸液反応性あり」の定義はPACで得られたΔSVI≧12%の上昇としています。

結果としてwide PPの患者で輸液反応性有りは、SVVのAUC=0.609 (normal PP では0.808)と低い値を示しています。

PP(脈圧)の上昇と関連する状態にはどんなものがあるかというと・・・高齢、LVEF高値、女性、MIの既往、DM、高血圧、Ca拮抗薬の使用などがあるようです(本論文のdiscussionより)。
本論文ではwide PP群でhigh EF、女性の比率、DM、Ca拮抗薬内服患者が有意に多く、それが結果に影響している可能性はありますが、それらの交絡因子を除いて解析しても同様の結果となった・・・と著者らは書いています。

また、研究の限界として
・輸液負荷前にノルエピネフリン投与されていた患者がいた
・FloTrac以外のデバイスで得られる(例えばPiCCOplus)SVVには拡大適応できない
・動脈エラスタンスをより良く把握するためにはPPVも測定すべきだった
を挙げています。

結果の解釈が難しい論文です。
術前にwide PPな患者さんたちは一般的に動脈壁コンプライアンスが低いですし、そのような患者さんたちのほうが麻酔中の血圧のup downが激しく、麻酔管理上、重症であることが多いです。そういった患者さんたちのSVVの信頼性が低いかもしれない・・・とすると輸液投与量の判断が難しくなりますね。

本論文では麻酔導入前のPPを測定してますが、麻酔覚醒後ってどうなんでしょう。
もしかすると、所謂high risk patientといわれる方々では、麻酔中にSVVなどの動的パラメータを低く保って管理しても(これ以上輸液してもSVやCOは上昇しないだろうという状態を目標とした輸液管理)、それが麻酔覚醒後の状態に対してもよいことなのか-つまり術中の輸液最適化が麻酔覚醒後の輸液最適化と本当に相関があるのか、という疑問が生じます。そのへんがよくわかっていないということが、もしかすると昨今のモニターによるGDTによって術後の予後が良い、いやこれまでの管理と変わらない、という分岐点になっているのかもしれません。

2012年12月8日土曜日

(麻) 産褥期麻酔プチメモ

産科麻酔学会にはいけませんが、実地で学習しましたので、復習。

***
・妊婦のショックインデックス(SI):
1で1.5L、1.5で2.5Lの出血が推測される

・子宮摘出術:産褥出血における最終的な治療法。最も一般的な適応は癒着胎盤と弛緩出血

・産褥出血は急性凝固障害をきたすことが多い。ごく早期にFFP等の投与を行うこと

・循環血液量が減少している産褥出血に対してオキシトシンの静脈内ボーラス投与は危険。全身投与するときは希釈して持続投与にする

理由:オキシトシン受容体は子宮筋だけでなく、心筋、血管、乳腺、CNS系にも存在する。血管平滑筋を直接弛緩し、房室伝導と心筋の再分極過程に作用するため、低血圧と頻脈をきたす。

おまけ
・マレイン酸メチルエルゴメトリンの副作用:嘔気嘔吐、血管収縮、重症高血圧、肺高血圧、肺水腫、痙攣

・プロスタグランジンF2αの副作用:下痢、嘔吐、悪寒発熱、気管支攣縮

参考:周産期麻酔/克誠堂出版 2012年p336-346