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2013年5月27日月曜日

(麻) Clinical Anesthesia 7th edition (Paul Barash, et al. LWW, 2013年)

学会会場でいろんな新刊が並べられていたので、色々買おうとも思ったのですが、ぱらぱらめくって面白そうだったこれを購入しました。会場で買わずに、結局、Amazonで注文しました。私はamzon studentに登録しているので(大学院生なので可能なのです)、10%のポイント還元されるのです。2600ポイントも還元されたので、他の本を買おうと思います。

注文したら、昨日の夜、早速届きました。今年改訂された版です。

Clinical Anesthesia, 7e: Print + Ebook with Multimedia

他にもどなたか注文されたのか、今日現在、品切れになってますが・・・。

 
最新の知識も大事ですが、成書になっている知識も大事です。何が書いてあるのか楽しみにしつつ、ちょっとずつ読んでいこうと思います。それにしても分厚い。

2013年5月15日水曜日

(本) ショーペンハウアーに色々と教わった1日 ー 読書について、ショーペンハウアー著(鈴木芳子訳、光文社古典新訳文庫、2013年)

既に岩波文庫の斎藤忍随氏の翻訳版を何回も読んでいたのですが、いつの間にか新しい翻訳が出版されていたので購入しました。150年以上読まれているような著作は、どなたが翻訳したものでもその価値が褪せません。


本を読めば読むほど馬鹿になる…それは認識していましたが、私のような凡人には、考える拠り所が必要です。その拠り所は別に本でなくても良いのですが、私には本が必要です。

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だから資料の寄せ集めで出来上がった本はできるだけ読まないようにすべきだ。とはいえ完全に避けるのはむずかしい。数世紀にわたって蓄積された知識をわずかなスペースにおさめた資料編纂的書物も、やはり資料の寄せ集めで出来上がった本だからだ。 p36

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麻酔に関する話しか私には言及できませんが。私は、「ひと様が研究して集めたデータで出来た論文」を寄せ集めて書かれた論文なり雑誌なりを目にする機会が多いです。私が先日「臨床麻酔」誌に投稿した論文なんてまさにその例の1つです。

数年前にI先生からいただいた言葉がこだまします。

自分のデータをもつことが、何よりも大切だ、と。

自分で基礎研究に従事するようになって、初めてその言葉が身にしみてきました。
これだけ、他から影響を受けないだろう実験系においても、色々と訳の分からない結果が出る。ということは、ひと様を対象とした研究では、一体どれだけの因子が結果に影響を及ぼしているのだろう、と。

各種ガイドラインは、前向きRCTを中心として作られていますが、それだって信じられません。何故かというと、自分が経験していないからです。「自分が経験したことしか信じられない」とまでは、今の私には断言出来ませんが、それでも論文のabstructだけ読んで何かを学んだ気になんてなれません。
幾つもの追試追試追試で再現性が得られたものが教科書になる…ということを考えるけれども、最新版の「Miller's Anesthesia」にさえ、「出血して失われた血管内容量を補填するためには、晶質液では3倍量が必要だ」とか書いているわけです(近年、それに対して否定的な論文が多いのは皆さんご存知のとおりです)。そしてそれを金科玉条の如く、専門医や指導医がレジデントに教えているところに出くわすことがあります(3倍輸液するのがいいとか悪いとか、そういう次元の話ではなく、論文や教科書にこう書いてあるからそれが正しい、という、そのスタンスが問題だということです)。

麻酔をして、医療事故に遭遇した時。色々なガイドラインから大きく逸脱していないこと、周りで「それって常識だよね」というpracticeから大きく逸脱していないこと。これらは裁判で敗訴しないためには必要でしょうが、ホントにそのpracticeが目の前の患者さんのためになっているのか。それをよくよく考える必要があるな、と、この本を読みながらつらつらと考えました。

目的地に到達していないだろうという自分の切望だけが、自分を前に進めている気がします。そしてそれを実感できる日々は、仕事人としての自分の人生にとっては、とても幸せなことのような気がします。

自分の働きを、周りの人は評価するでしょう。良くも悪くも評価しているでしょう。でも、その働きぶりが、本当にいいものなのか好ましくないものなのか。それをほんとうの意味で評価できるのは自分だけです。

2013年5月6日月曜日

(詩) 空想と願望 - 新編みなかみ紀行(若山牧水著、池内紀編、岩波文庫、2002年)

若山牧水の詩の話とか、日常会話に出てきませんし、「何の役に立つの?」って真顔で言われたりした日には「まぁいいから1回読んでみてよ」としか言えませし、役に立つかどうかをすぐ判断できるものしか求めないような世界に、私は住んでいたくありません。


短歌を詠んで、酒を呑む。旅に出る。天気が悪かったりして旅の足止めを食らうとまあ仕方ない、と取り敢えず酒を呑む。いい気分になって短歌をよむ。足止めを食らったはずなのに、旅を再開するでもなく、そこで数日酒を呑んで短歌を詠みながらだらだら過ごす。あぁそろそろ行くかとのろのろと歩き出し、途中途中で呑む、短歌をよむ。


そんな調子の紀行文が何篇も収められている本なので、まぁ何かの役に立つ本をご所望の人には全くすすめられませんが、p152-160に収められている「空想と願望」は私が大好きな詩の1つです。

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誰一人知人に会はないで
ふところの心配なしに、
東京中の街から街を歩き、
うまいといふものを飲み、且つ食つて廻り度(た)い。

・・・中略・・・

いつでも、
ほほゑみを、
眼に、
こころに、
やどしてゐたい。

自分のうしろ姿が、
いつでも見えてるやうに、
生き度い。

・・・中略・・・

麦酒(ビール)が
いつも、
冷えてると、
いい。

***

ただの酔っ払いのようですが、人生にまっすぐな姿勢が感じられます。こんな酔っぱらいになりたいものです。

2013年5月2日木曜日

(麻) イソフルランがヒト神経前駆細胞に与える保護作用と傷害作用2つのはたらき - 麻酔科医31回目の抄読会が終了しました。

今回担当した論文はこれです。

Dual Effects of Isoflurane on Proliferation, Differentiation, and Survival in Human Neuroprogenitor Cells. Anesthesiology 2013; 118:537-49
不死化したヒト神経前駆細胞を使って、イソフルランの濃度および投与時間によって細胞保護作用と細胞傷害作用に変化が見られるか…を、(恐らく)中国人の研究者たちがアメリカのフィラデルフィアにあるペンシルバニア大学のラボに留学して得た成果として報告しています。
詳細は読んでいただきたいのですが、彼らは、低濃度(0.5MAC)・短時間のイソフルラン曝露ならば神経細胞増殖にプラスにはたらき(ただしこの条件のイソフルランが、正常な神経細胞の分化にプラスになっているかについてのデータは示されていないので、恐らくプラスになっていないと私は推測します)、高濃度・長時間(2MAC, 24時間)は細胞傷害を起こす、と報告しています。そしてその機序としては神経細胞にある小胞体のイノシトール3リン酸受容体やリアノジン受容体から、細胞質への過剰なカルシウム放出によるものであろう、と言っています。

イソフルランが論文に出てくるとはいえ、in vitroの実験をしてなかったらもっともっと理解するのに骨が折れただろう論文でした。まして抄読会で、in vitroの実験をしていない方々に、可能な限り正確な情報を伝えるなんて大変です。いや、大変でした。だって私は大学院に入るまで、培地のことを"地"っていうからには固体のものだと思ってましたし、「フラスコ」は中学校の実験で使うような丸いものだと思ってましたし、96well plateって言われてもどんな形をしてどんな大きさのものか全く想像つきませんでしたから。LDHアッセイもMTTアッセイにしても同じです。たった20分弱でそれら全てに簡潔に言及して聴衆にイメージをふくらませていただき、しかも実験結果のFigure7枚も伝えるなんて、大変な仕事です。なんとか発表できるような形にスライドを完成させたのは発表の前日です。

ということで、今回、喋りの練習をロクにしないで本番に突入してしまいました。仕方ありません、準備不足です。


結果として、発表の時間を幸いにも16分位いただけたので、何とか収集ついたのではないかと思います。質問がいくつか出たので、ある程度は伝わった、と思います。寝ている研修医さんはどうしようもありません。彼らを起きたままにするのは至難の業ですし、寝ている研修医さんは、話し手が誰であっても大抵寝ています。というかパワーポイント始めるために部屋の明かりを消した数秒後から寝てますし。スティーブ・ジョブズが喋ってれば寝ないのかもしれませんが、in vitroの研究の話をして、聴衆みんなが目をキラキラさせて聴いたりしたら、それはすごいことですね。
抄読会(ジャーナルクラブ)を臨床のおまけだと思ってはいけません。発表の場はいつでも戦場です。準備不足だと討ち死にを覚悟しなければなりません。

…幸か不幸か、準備不足の割には自己満足のいくプレゼンが出来たので、大学の近所に新しくできた「御茶ノ水ソラシティ」に新しい店舗を出店したカレー屋「エチオピア」の野菜カリーを食べました。




なんと朝7時から開店しているらしいので、今度は朝カレーを試しに行きたいと思います。